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魔法と魔法のマジョレット  作者: ぷらすとぷらす
第7話 夢と兄姉(けいし)と愛情と
20/100

謝ることと夢の中

「ねえアニーちゃん、おなか膨れてきちゃったね」

 眠りかけた頭を上げ前を見ると、向かいの椅子に杖のケースがあった。


「あれ?なんか長いよ。それに重いし形も――」

「ポビーもロップールも力を貸して!早く!魔法でおなか減らすの!」


「おなかよ減って!今すぐに!」

「どうしたの?杖なんか出して」

「杖!杖が気になったの!長さとか重さとか形とか!」

 口ごもるぼくを庇うかのごとく、おとねちゃんは早口でお母さんと話す。

「アニーちゃんとおとねちゃんの杖は新しいものだからね」

 お母さんは飲み物をぼくたちとパートナーの前に配っていく。


「魔法を本格的に学ぶのは見習い、中学に入ってからよ」

「そうなの?だったらわたしたちの杖はなんなの?」

「みんなが魔法を使うための練習。おとねちゃんたちに使ってもらっているの」

 ぼくたちの動きを資料として集めていると、お母さんは教えてくれた。

「魔法の杖も知識も技術もすぐ新しくなるからね。お勉強が大切なの」

 そう考えると、お兄ちゃんの記憶が消えたことはよかったと思える。

(変に知識があると、新しいことを覚えるときに迷っちゃいそう)

 お母さんの言葉で少しだけ前向きになれたところで、ご飯がやってきた。

 春の彩りパスタとお子様ランチふたつがテーブルに置かれる。


「お腹いっぱいだったのね」

「ごめんなさい」

「遅くなっちゃったお母さんもごめんなさい」

 お互いの失敗を素直に認め合い、ぼくたちは笑みを交わす。

「謝ることは大切よ。その上でごめんねをありがとうに変えられると素敵よね」

 ありがとうの言葉は相手も自分も前向きになれるとお母さんは言う。


「このお子様ランチふたつ、ドギーパックにできますか?」

「かしこまりました。すぐお包みしますね」

 プリンは食べると言うおとねちゃんに、店員さんは食器にプリンを移す。

「ドギーバッグはね、お持ち帰りのことよ」

 ドギーの言葉にどっきりしたぼくに、お母さんは優しく話してくれた。


「うわー!うわー!ほんとに魔法が使えるよ!」

 家でやることやってベッドで眠ると、夢で会ったリン姉が楽しそうに言う。

 パジャマ姿だったため、あわてて魔法の服に着替えたのはご愛敬。

「雲の向こうに行ってみようよ!」

 おとねちゃんは魔法の杖を箒に変えてまたがると、大空に出発する。

 リン姉とぼくもあとに続き、雲を突き抜けて空を飛ぶ。


 ある程度飛んで海にでると、海を氷で固めてその上に舞い降りる。

 お魚さんの泳ぐ姿が見える氷を、おとねちゃんの出した巨大なケーキが隠す。

 ぼくは手を引くリン姉とともに海の中に入り、お魚さんと一緒に泳ぐ。

(泳ぐのってこんなにも楽しいんだね)


 海から上がって二人がスケート姿を見ていると、小さな音が耳に届いた。

 はじめは小さかった音が、だんだんと大きな音へと変わっていく。

「なんの音?」

 リン姉とおとねちゃんに声をかけ、みんなで耳を澄ませる。


 この音は目覚ましの音、と目が覚めてからわかった。


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