始まる朝の物語
太陽の日差しとともに、声が聞こえてくる。
「おはよう、おとねちゃん」
ベッドをもぞもぞと動き、体を起こして声の主に挨拶をする。
「ようやく起きた。おはようアニーちゃん」
「兄ちゃん?おにいちゃん。ボクはお兄ちゃんーー」
高くなった自分の声に首をかしげていると、お母さんが姿を見せた。
(あれ?お母さん大きくなった?)
ふしぎに思い、おとねちゃんと会話するお母さんを見つめる。
「お母さんお母さん、あのねアニーちゃんがね、自分の事お兄ちゃんだって」
「あらあら。昨日の夜に魔法使っちゃったのかな」
お母さんはぼくのおなかに手をあてて、なにかをつぶやく。
すると、ぼくの中に手が入っていき、引っ張り出す。
お母さんの手と一緒に、お兄ちゃんが出てきた。
「朝食できたよ――ってどうしたんじゃ」
ひょいと扉からおじいちゃんが姿を見せ、お母さんと会話をはじめる。
「とにかくお兄ちゃんはわしに任せて、アニーちゃんとおとねちゃんは病院に急ぐんじゃ」
お母さんはぼくとおとねちゃんを乗せて、病院へと車を飛ばす。
「おはよう、アニーちゃんおとねちゃん」
病院でお母さんが手続きをしていると、女の子が声をかけてきた。
(この子は確かリン姉。ぼくたちの従姉のお姉ちゃん……ってあれ?お姉ちゃん?)
妹のおとねちゃんもボクと同じ背の高さだし、なんだかふしぎな感じがする。
「リン姉、おはよう」
「……おはよう、リン姉」
おとねちゃんの元気な挨拶とは対照的に、ぼくは控えめに挨拶する。
「ねえお父さん、おとねちゃんもアニーちゃんもいるから急ごうよー」
一緒に歩いていた大人の手を引っ張って、リン姉の明るい声が聞こえる。
「……リン姉も病院に用事?」
「え。今日ってパートナーと服装と杖の説明を聞く日でしょ?」
「うん!私もう待ちくたびれちゃって――お母さん先に杖やろうよ杖!」
ぼくの質問にリン姉が答え、おとねちゃんはお母さんの服のすそを握る。
(あれ?そうだっけ?うん、確かに記憶が……あれ?あれれ?)
「そうねえ。専門の先生も今こっちに来ているそうだからそうしようか」
書類を書き終えたお母さんは、受付の人と会話しだす。
ここは大学病院で、魔法の研究棟とつながっていると案内を受ける。
「それとこれを。先生がいらっしゃられたらお呼びしますね」
お母さんは受付の人から呼びだしベルの受信機を受け取ると、職員さんが来た。
「こちらになります」
手続きが終わると、職員さんが案内をしてくれた。
ノックして開いた扉に、我先にと入るおとねちゃんとリン姉に、ぼくも続く。
「最初にパートナーを決めるよ。そこの魔方陣で好きな動物を思い浮かべてね」
リン姉が魔方陣に入って少しすると、しま模様をした銀色のネコが出てきた。
「ミュレット。よろしくね」
続いておとねちゃんが入り、ややもすると茶色のクマっぽい動物が姿を現す。
「ポビー、一緒にいてね」
最後はぼく。場の勢いに流されるまま、魔法陣に入りウサギを思い浮かべる。
「ロップール、一緒にいてくれる?」
たれた耳からかろうじてうさぎとわかる動物が出てきて、コクリと頷いた。
ロップールについてはこちらの絵かき歌をご覧ください。
https://ncode.syosetu.com/n4035hq/100/




