お土産食べる帰り道
三回目の魔法は内緒にしようねと三人で約束を交わし、雲の世界を後にした。
お部屋に戻ると、もう一人のお兄さんがぼくたちを見つめている。
「リンちゃんにおとねちゃん、それにアニーちゃん。ありがとう。助かったよ」
ダグさんがぼくたちに頭を下げ、お礼を言う。
「終わりよければすべてよしさ。言ったろう?俺がすべて責任をとる」
困り顔のミャリャウさんともう一人のお兄さんにダグさんは微笑む。
脳に酸素を送るためなのか、二人ともども深呼吸をしてから案内を再開した。
「宝石に光を戻すのは一晩かかるの。だから魔法は大切に使ってね」
次のお部屋で宝石、その次は杖、服、カード、ぐるぐると研究所を回る。
研究所とお兄さんお姉さんたちにお礼を言って、バスに乗り込む。
ダグさんが急いで車に乗る姿を、傾き始めた太陽が照らしていた。
「もっとたくさん魔法を使えればなあ」
みんなが口々に話す言葉はぼくと一緒で、うれしい気持ちが満ちてくる。
「できますよ」
研究所の服を着た人がバスにやってきた。
お土産を渡しに来たのだろうか、手にはかごを持っている。
「魔法を多く唱えたいなら、夢の世界に行きましょう」
先生とバスガイドさん、運転手さんの瞳からほんの一瞬、光が消えた。
「夢の世界の扉を開ける、カギならここにありますよ」
バスガイドさんはかごを受け取り、騒ぎ出したみんなに配り始める。
配られたビスケットを口に含むと、口いっぱいにリンゴの味と香りが広がった。
職員さんに手を振って、バスは出発し来た道をたどる。
幼稚園に着くと先生から感想を聞かれ、各パートナーがその答えを書き記す。
帰りの会を待つ間、シイちゃんは卯の花クッキーをみんなに配る。
先生が来ると、先生にも手渡していた。
「お母さん遅いね。クッキー食べちゃおうか」
茜色に染まる空を眺めながら、お母さんのお迎えを待つ。
「麦茶もらってくるよ。クッキーはお母さんの分もあるからね」
おとねちゃんはポビーに卯の花クッキーを半分渡し、勢いよく食べ始める。
ぼくはロップールと一枚ずつ半分こにしてゆっくりと味わう。
そうしているとお母さんとボッポウの姿が見えた。
「遅くなっちゃった。ごめんね。お詫びに夕食は外で食べようか」
「うん。あとこれ卯の花のクッキー。シイちゃんから」
お母さんはお礼を言い受け取るとぼくの口を拭き、おとねちゃんの服を払う。
「そうだ、お兄ちゃんから動画が届いたの。新しいお城に行ったそうよ」
「うわー!池にもお城がある!これなんてお城?」
おとぎの国のお城よ、とお母さんはおとねちゃんに答え車を走らせる。
お母さんはドリンクバーも頼み、ぼくたちをボッポウに任せ席を立つ。




