バスの移動とネズミさん
幼稚園でお昼を終えると、ぼくたちはバスに乗りこむ。
今日は魔法の研究所へ見学に行く。
「魔法について本格的に教わるのはもっとあとなのよ」
なんで、とシイちゃんがバスガイドさんに聞く。
「今は魔法について知る時期よ。魔法使いの卵の時期。略してまほタマ」
ぼくたちのお部屋には、たまごの絵があった。
「小学校がまほヒナ、中学校が見習い、高校以上が駆け出し、社会に出て新人よ」
赤ちゃんのクラスはまほタネと言ったあと、先生はぼくたちを見る。
「アニーちゃんとおとねちゃん、エリーちゃんは来年、まほタマだからね」
魔法の杖は将来、すべての人が使えるのが目標と、先生はみんなに告げた。
バスは電車の走る高架をくぐり、信号や交差点を抜けていく。
丘の上に建物が見えると、バスガイドさんが声を出す。
バスは坂道を上り、駐車場に止まる。
「ここからはグループ行動よ。先生やお兄さんお姉さんたちと一緒にいようね」
「私たちはお兄さん二人なんだって。どこだろう」
幼稚園の帽子をしっかりと被り、おとねちゃんとリン姉の一歩後ろを歩く。
「ミャリャリャリャリャ!ようこそ魔法の研究所へ!」
ミャリャウさんの声を聞くと、おとねちゃんがぼくの前に立つ。
お互いに挨拶と自己紹介して、研究所の中に入る。
「まず魔法の模型から案内するぞ」
「あれ、魔法の杖は?」
「順番だよ。ここは魔法使いのいろんなものを作っているからね」
案内受けて進んだ先のとあるお部屋の前に立つ。
ミャリャウさんはコンコンコンと扉をノックした。
「扉はノックを三回やろう。二回はトイレだぞ」
理由を聞くおとねちゃんにミャリャウさんは優しく答え、扉を開ける。
中には整った髭を生やした肌の濃い人がひとりいて、模型を眺めていた。
「ダグさん!なんでこんなところに!」
ミャリャウさんは慌てて姿勢を正す。
「未来を担うまほタマが気になってね。会いに来たんだ」
「こんにちは、だぐさん。わたしおとね!桜と桃と音って書いておとね!」
「やあこんにちは。俺の名はダグラウス。ダグさんって呼んでくれ」
元気におとねちゃんが、明るくリン姉が、びくびくしながらぼくが挨拶する。
初めましてだったかなと、自己紹介の後に気がついた。
「あ!ここどこかで見たがする!どこだろう?」
「箒で飛んだところさ」
ダグさんが隣で佇む中、ミャリャウさんは模型の説明を始める。
「あ、ネズミさん」
ぼくが窓から見かけたものの名前を呼ぶ。
それを聞いたミャリャウさんたちの時間が止まる。
「今さっき壁をたーって登っていっちゃったよ」
クマかよ、リン姉の説明を聞いたもう一人のお兄さんがつぶやいた。




