箒に乗って青空へ
ぼくたちは今、周りに白い雲が浮かぶ舞台の上にいる。
「みんな一列に並ぶのよ。これから箒を渡すからね」
ひろびろと広がる青空の下、わらわらと集まり列を作っていく。
「どうしよう……魔法が来て落っこちたらどうしよう」
「魔法の世界だし、大丈夫だよ絶対大丈夫だよ」
「待っておとねちゃん。魔よけの魔法使ってから並ぼうか」
わたしたちも並ぼうよと手を引くおとねちゃんは、リン姉の言葉で手をとめる。
「よし、行くよ。せーの」
ぼくとおとねちゃんとリン姉は三人で考えた魔法を使う。
「箒よ箒、魔をよけて」
たったこれだけの言葉なのに、タイミングが微妙にずれた。
宝石の輝きは消えたから、魔法は発動していると思う。
それを信じて、ぼくたちも列に並び宝石のついた箒を受け取った。
「うわーい!うわーい!」
「アニーちゃんもおいでよ」
楽しそうに箒にまたがり飛ぶおとねちゃんとリン姉がぼくを誘う声が聞こえる。
「う、うん……」
目の前に浮いているサドルのついた箒を見て、ぼくの心は揺れていた。
どうにも怖い気持ちがあって、それが空を飛びたい気持ちを妨げる。
「うさー」
ロップールが箒の穂先に乗って体が淡く輝くと、空を飛びたい気持ちが増す。
「ありがとう、ロップール」
ロップールの返事を受け、サドルに対して横向きに座り直す。
「魔法の力は心の力。自分を信じて空を飛んでいる姿を想像してね」
箒を受け取ったときの先生の言葉を思い出し、心の中で復唱する。
ゆっくりと宙に浮いて、空で待っているリン姉に追いつく。
「みんなもゆっくりだから、ゆっくり行こうよ」
リン姉の言葉に励まされ、ゆっくりそろそろと空中飛行を楽しむことにした。




