目指せあこがれ、夢に向け
「わかったよ、アニーちゃん!」
「わかってくれた?」
「うん!わたしたちが目立てば、そういう格好もできるってことよね!」
「よーし!お洋服の勉強しようね、おとねちゃん!」
「うん!リン姉!いろんなお洋服着こなそう!」
あっけにとられる中、破竹の勢いで話が進む。
「本借りるね!ちょっとこれ見せて」
「それはお父さんと水族館で買った海の生き物図鑑。お洋服はこっち」
助けを求めお母さんに視線を送ると、リン姉のお母さんが複雑な顔をしていた。
「ねえ、リン姉のお母さん何かあったの?」
「えーとね、昨日お父さんがこの話をしてからずっとあんな感じなの」
リン姉は本を本棚に返すと、困った様子で笑う。
「なんとかしようよ、なんとか。ちょっと聞いてくるね」
「待って、おとねちゃん。あの様子だと答えてくれるかな」
「なら魔法使おうよ魔法――ってあー!もう使っちゃた!」
顔を合わせ話していると、リビングの明かりが急に消えた。
雷鳴が轟き、耳をふさぐ。
「だ大丈夫だよアニーちゃん、わわたしが一緒にいるからね」
「私もいるよ」
うるんだ瞳でおとねちゃんとリン姉を見つめるとまた雷と雨音が響く。
ぼくたちはしっかりと肩を抱き合い、雷が通り過ぎるのを待った。
やがて静かになり、太陽の光がカーテンから差し込む。
ぼくたちはお互いを見つめ、笑いあった。
「あれ?毛布。いつの間に」
「お母さんかな。ちょっと聞いてくるね」
リン姉が立ち上がり、会いに向かおうとするのを目で追いかける。
その時スケッチブックとくれよんがぼくの目に飛び込んできた。
「あのね――お母さんも、描いてみる?」
おずおずとリン姉が渡したくれよんで、リン姉のお母さんはサクラソウを出す。
「みんなが魔法を使える時代はもうすぐですからね」
お母さんとリン姉のお母さんの話し声が聞こえた。