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第94話「魔族を封印した場所」

 迷宮の中、新たな行先を探していた自分達は、再び魔族を封印した場所を見付けてしまった。

光の中に閉じ込められていた魔族は、前にも出会った事のある黒の魔人であった。

ナルルガ「ついに、魔族が封印された場所を見付けたのね。」

光の中の魔族を眺める。

やはり、こいつらは、この中でまだ生きているのだろうか?

と、奴の体が僅かに動いた。

マレイナ「今、動いたよね?」

以前、ガノ山から入った場所に封印されていた沢山の魔族は、全く身動きもしなかったのだが、今、ここにいる奴は、僅かながら腕を動かした。


封印されている黒の魔人が、見ていると、たまに体を動かす。

動かすと言っても、腕や足が少しばかり位置を変えるだけなのだが。

イルネ「前に見た奴は、全く動かなかったから、生きているのかよく解らなかったわ。でも、これは、明らかに、」

「生きているみたいだな。」

元から、目などは無い魔族なので、その表情などは解らない。

特徴的な、顔の半分程の大きさの口も、今は閉じられて見えない。

いや、頭の2本の触覚がたまに「ぴくり」と動いている。

キオウ「やっぱり、生きてやがる。どうする? こいつを?」

どうすると言ってもな。

ナルルガ「無理に、解放して戦う事はないんじゃない。ここに閉じ込められたのは、百年は前の事でしょう。それを態々、解き放つ必要など無いわ。」

フォド「そうですね。ここで、こうして大人しくしているならば、このままでも良いでしょう。」


と、その時、魔人を囲む、光が変化した。

マレイナ「な、何が起きるの?」

思わず、皆で、光の魔法陣から距離を取る。

奴を囲む白い光が更に強くなったかと思うと、赤や青、その他の何色かに色が変わっり、そしてまた元の色に戻った。

光が変色している時に、中の魔人も前以上に体を動かしていた。

そして、元の魔法陣から10m程離れた場所に、別の魔法陣が光り輝いた。


イルネ「何、あれ?」

離れた場所に現れた魔法陣の中に、何かの影が幾つも浮かび出した。

そして、その影が形になって行く。

朧げな影が形になって行くと、その魔法陣は光を失い消えた。

その場には、4匹の大食い鬼が立っていた。

出現したばかりの大食い鬼は、どこか夢心地なのか、立ったまま体を左右にゆらゆらと動かしている。

だが、それも数十秒の事で、直ぐに正気を取り戻したようだ。

そして、近くにいる自分達に気付いた。


武器の棍棒を振り上げ、襲い掛かって来る大食い鬼ら。

それを迎え撃ち、直ちに討ち取った。

マレイナ「何なの、これは?」

ナルルガ「魔族の魔法陣が、大食い鬼を呼び出した。」

イルネ「前にもあったわね。」

フォド「迷宮内に、魔獣が溢れているのは、こんな魔法陣が幾つもあるからでしょうか?」

今までも、そんな予想はあったが、今、この場所でそれを目撃してしまった。

「どうする? これを?」

キオウ「こいつを解放して倒せば、ここから魔獣が出て来る事は無くなるよな。でも、それをしてもいいのか?」

魔獣の供給源を絶つ事が、冒険者の判断として正しいのだろうか?

ナルルガ「今は、このままにしておきましょう。もし、倒すなら、またの機会でもいいのだから。」

今のところ、湧き出る魔獣も、それ程に強力な物でもない。


封印された魔族をそのまま放置し、更に奥を探る事にした。

だが、その先には、もう1つ魔法陣があったが、そこに魔族の姿は無かった。

そして、行き止まりになっていた。

キオウ「ここは、ここまでみたいだな。」

イルネ「引き返しましょう。」

光る魔法陣に近付いて行くと、また色が何度か変化していた。

そして、呼び出された魔獣らが、迷宮のどこかを目指して去って行く。

こうして、迷宮に魔獣が出現するのだろう。

いつの日にか、魔獣らの群れが出て来る空洞があったが、あの先にも魔法陣があったのだろう。

街に戻ると、ギルドにも伯爵にも、今日の事を報告した。

アグラム「そうか、迷宮の中に、魔族を封じ込めた場所があったか。そして、それが魔獣を呼び出していると。」

「どうしましょうか? あの魔法陣と魔族を?」

アグラム「そうだな。それが街の近くにあるならば、直ぐにでもそいつを倒すべきだろう。だが、迷宮の中での事だからな。今は、そのままに放置しよう。ギルドの方でも、魔法陣をそのままにするように、通達はする。」

伯爵もギルドも、魔法陣は、現状維持の方向で一致した。


 伯爵の城館に寄ったので、ネアンにも会いに行く。

マレイナ「ネアン、来たよ。」

ネアン「ああ、皆さん、今日も迷宮の帰りですか?」

ネアンも元気そうだ。

彼女は、自分のあてがわれた部屋にいる事が多い。

そこで、植木を育てたり、女中らに習った刺繍をしたりする事が多いと言う。

また、城館の庭園で散歩したり、お茶を飲むのが好きだと言う。

ネアン「窓から見える景色もいいですが、太陽の下にいる事が、こんなに気持ちがいいとは知りませんでしたよ。」

地上での生活も嫌ではないようだ。


だが、それでも、疑問はある。

マレイナ「ねえ、ネアンは、仲間の所に帰りたくないの?」

一瞬だけ、彼女は言葉を発しなかった。

ネアン「・・・、そうですね。帰りたくないと言ったら、それは嘘になるでしょうね。でも、迷宮に戻るのも、どうなのかなと。」

イルネ「ここに、ずっといる方が、あなたには良い事なの?」

ネアン「もし、私が迷宮に戻ったら、皆さんと戦う事になるのでしょうか? その方が嫌です。元から、私は神官ですから、直接に地上の方々と戦った事はありません。ですが、私の仲間らは、あなた方と戦いを続けて来ましたから。」

マレイナ「妖戦鬼の人達は、ネアンに帰って来て欲しいみたいだよ。それでも、帰らないの?」

マレイナ「そうですね。地上の皆さんと、私の仲間が戦うような事が無くなるなら、帰っても良いかと。でも、またここにも来たいですね。」

妖戦鬼との和平もしくは休戦。

それが実現すれば良いのだが。

その辺りを、相手と交渉してみようか?


ネアンの話も、伯爵に伝えた。

アグラム「そうか、彼女は、そんな事を言っていたか。」

伯爵は、しばらく腕を組んで考えている。

アグラム「よし、連中との交渉を始めよう。ネアンという切っ掛けが、良い方向へと向かえば良いのだが。まずは、互いの要求を再確認してみよう。焦る必要は無いぞ。少しづつでも進展すれば良い。勿論、今考える事ではないが、交渉が上手く行かない事もあるだろう。」

伯爵も態度を決めたようだ。

アグラム「ネアンを相手に返す事が、条件ならば。それを飲む用意もある。」

過去に投稿した物の書き直し、第1章までは終わりました。

今後もまた書き換える事もあるかと思います。

第2章も、少しづつ変えて行きます。


今後とも、よろしくお願いします。

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