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第91話「魔族の封印場」

 ネアンに妖戦鬼の言葉を少しづつ習い始めた。

その他にも、ケルアンに様々な事を聞き出す事も引き続き行われていた。

ケルアンの話は、主にアデト魔法学校の教授らが聞き役になっている。


ケルアンの魔法の知識には、現代では知られていない事も多い。

また、無面石の使い方なども、彼から聞き出す事もできた。

ケルアン「この石は、記憶装置なのじゃよ。この石に念を込めれば、その人物の知識や意識が保存される。石に中の意識は、こうして喋る事もできるし、新たな知識を得る事もできる。ただ、元の体には、その新たに学んだ事をそのまま伝える事はできない。」

記憶装置、そうか念を込めれば時間の経過など関係なく、こうして未来の誰かと話せるんだ。

ケルアン「儂自身、その後に自分がどうなったのかは知らん。多分、本来の儂は何百年か前に、亡くなっているだろう。この石に意識を移したのは、300歳の頃であったからの。」

他に、意識を石に移した者はいたかと聞くと、

ケルアン「勿論、他にもいた。ただ、それが今も残っているのかは解らん。後から、別の者が意識を入れてしまえば、前の者のそれは消えてしまうはずじゃ。」

ケルアンは、石の製造法自体は知らないようであるが、様々な魔術技術を使った産物であると言う。

ケルアン「魔道具の製造は、専門外の事なので、儂には解らんのだ。」


ケルアンには、魔族の事も聞いていた。

ケルアン「今の時代は、どうなのかは解らんが、儂がいた時代に魔族が出現する事は、それ程に珍しくはなかったぞい。魔族の小物などは、よく見掛ける相手じゃった。」

昔は、当たり前のように魔族もいたのか。

では、今の奴らは、どうなっているのだろうか?

ケルアン「全く出現しない訳でもなかろう。奴らも、この時代でも、どこかにいるであろう。だが、その数が減ったり、余り見掛けなくなった理由は解らん。」

ケルアンのいた時代から今に至るまでに、魔族らに何があったのだろうか?

奴らも居なくなったのではなく、今もどこかに多数の魔族が潜んでいると、考えるべきなのか?

まだまだ、ケルアンらから聞き出す事は、沢山あるようである。


 ネアンらと会うだけでは、生活にならない。

自分達は、また迷宮へと入り、稼ぐ生活を続けている。

今日は、先日見付けた地底湖の先を探っている。

キオウ「この洞窟も、どこにつながってるんだ?」

それなりに長く、洞窟の中を歩き続けている。

たまに、洞窟は広がり、そして枝分かれして行く。

「入り組んでいて、よく解らないな。」

洞窟は、先でぐねぐねと曲がり、時に下り、時に登りになっていて、どの方角に続いているのかよく解らない。

迷わないように、分かれ道では印を付けながら進んではいるが、今もどこに向かうのかは解らに。

ただ、水辺に近付いた場所では鰐人に、乾いた場所では獣悪鬼に遭遇するようだ。

自然の洞窟であるので、遺物などは見付からない。

キオウ「魔獣に出会うから稼げているが、そうでなかったら、ただ歩いているだけだぞ。」

「そうだな。何も無いなんて勘弁して欲しいよ。」


ちょっと不満ではある。

新しい場所へと入り込んでいるのだが、珍しい物に遭遇する訳でもない。

ある程度進んでも、変化が無ければ、引き返して別の道へと進むを繰り返す。

そして、また新しい洞窟を見付けては、その先を探る。

何度、それを繰り返しただろうか。

洞窟の床に何かが落ちている。

「?」

手に取ってみると、容器の欠片のようだ。

そんな物が幾つか落ちていた。

キオウ「いよいよ、お宝か?」

先へと進むと、また洞窟が広がっていた。

すると、落ちている物が増えて行く。

木片や、壊れた道具、盛られた土の山やら切り出した石材など、様々な物が散らかっている。

更に進むと、洞窟は作り掛けの回廊につながった。

フォド「どうも、建設中の通路へと出たようですね。」

キオウ「ああ、今度こそ、お宝が眠っているぞ。」

期待に胸を膨らませて、通路を進んで行く。


しばらく通路を進むと、妙な場所に出た。

今来た通路と、正面は、また通路が続いている。

だが、通路の左右に洞窟が開いている。

マレイナ「ここも、作り掛けだったのかな?」

ナルルガ「そうかもしれないわね。でも、本命は、この先の通路よね?」

そのまま通路を進む。

その先に、下り階段がある。

そこを降りると、何やら掘り下げた広い空間となっている。

マレイナ「何、ここは。」

イルネ「そうね、部屋とかではないけど。」

掘り下げた床をナルルガが調べている。

ナルルガ「見て、ここを。」

ナルルガが、床を示した。

何だろう、書き掛けの魔法陣みたいな紋様があるな。

「魔法陣?」


ナルルガ「そうね。魔法陣に、何かを設置するような穴もあるわ。」

穴? そう言えば、窪みみたいなのがあるな。

ナルルガ「これは、多分、前に見た魔族を封印していた場所と同じ設備よ。」

言われてみれば、そんな気もする。

大きさは、あそこまでは大きくはないが、人の背丈を越えた程度の魔族ならば、充分に閉じ込める事はできそうに思える。

周囲を調べてみたが、封印する場所は、ここの1ヶ所だけらしい。

あとは、また通路が続いている。

やっぱり、何カ所かに魔族を封印する為の物が造られていたのか。

ここには、魔族はいなかったが、他にはいるのではないのか?

周囲には、積み上げた石材などもあった。

建設の途中で、放置されてしまったようだ。


ナルルガ「どうやら、ワイエン王国では、魔族を捕らえて封印していたようね。」

イルネ「でも、彼らは封印して、何をしようとしていたのかしら? ただ、倒す為だけではなさそうね。」

「何かを魔族の力で、やろうとしていたのか?」

ナルルガ「そう考えても良さそうね。」

マレイナ「魔族は魔獣を呼び寄せられるって、ケルアンは言ってたよ。それって、封印した魔族でもできるのかな?」

イルネ「封印していても、魔族を操れるならば、魔獣を呼び出せるのかも?」

キオウ「えっ、それって、できるのか?」

ナルルガ「できるからこそ、封印したんじゃないの? 何か意味が無ければ、あんな巨大な魔族まで封印する意味は解らないもの。」

「でも、人間に、あんな巨大な魔族を封じる事ができるのか? 本当に?」

迷宮の奥で見た、あの大きく強そうな魔族を思い浮かべた。

あんな奴を捕まえて、大人しく封印する事ができるのか?

イルネ「私達が、知らないだけかもしれないわね。」

今日は、この辺で探索を打ち切り、街へ戻る。


 街へ戻ると、空の魔族を封印する場所を見付けた事をギルドと伯爵に報告した。

アグラム「そうか、あったか。しかし、魔族はいなかったと。」

「引き続き、周辺を調べてみます。」

アグラム「頼む。迷宮の他の場所にも、同じ物がありそうだな。」

あるとして、魔族がそこには封印されているのだろうか?

まだ、探索は始まったばかりだ。

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