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第88話「語り出す石」

 ギルドで、ギルマスのナガムノに、久し振りに彼の執務室で面会した。

自分達6人とネアン以外にも、受付嬢のヘルガも同席している。

ナガムノ「やあ、サダ君達、久し振りだね。拠点の設営の時以来かな? 今日は、またどうしたのかな?」

「その前に、彼女、ネアンを見て頂きたいのですが。」

イルネが、目深に被るネアンのフードをずらしてやった。

そして、ネアンの頭に巻いた包帯も外す。

ヘルガ「! 彼女は、まさか。」

「そうです。ネアン、彼女は妖戦鬼のそれも神官です。」

ナガムノ「妖戦鬼の神官、その彼女を迷宮で捕らえた訳ですか?」

ナルルガ「ええ、それだけじゃないのよ。」

ナルルガが、ケルアンの意識の入った無面石を取り出し、ナガムノの机の上に置いた。

すると、石にケルアンの顔が浮かび上がった。

ケルアン「おお、ここは人間の町のようだな。」


ケルアンとの問答が、しばらく続いた。

しばらく難しそうにしていたナガムノが、話し始める。

ナガムノ「これは、ギルドだけの問題で済みそうにないですね。」

そう言うと、使いの者をアグラム伯爵とアデト魔法学校に走らせた。

アグラム伯爵からは、直ぐに城館へ来るように折り返し返事が来たので、自分達とナガムノは、ネアンとケルアンを連れて、移動する。


 伯爵の執務室に、早速、通された。

アグラム「また、面白い物を見付けて来たな君達は。その彼女が、例の人物だね?」

伯爵もネアンの存在に興味深げだ。

アグラム「そして、この石の中にも客人がいる訳だな。」

その語る内容は、ケルアンの方が興味深い事が多く、それはまた後日、話しを聞く事とした。

ネアンの処遇だが、伯爵が城館で預かる事となった。

呼び出された神官が、彼女に首輪のような物を取り付けた。

アグラム「少し窮屈かもしれないが、その首輪には魔力封じの効果がある。申し訳ないが、君の事を完全に信用はできないので、そのような対応をさせていただく。勿論、ここで預かるからには、君の身の安全は保障する。手荒な事などはしないので、安心して欲しい。」

ネアン「ありがと、感謝す。」

今日は、時間も遅くなって来たので、城館で御馳走になると自分達は家に帰された。

翌日からは、また城館へと通う日々が続く。


とは言え、自分達には余り用事はない。

ケルアンとネアンから別々に話しを聞いているのを、横で眺めている程度だ。

ケルアンは、記録を付き合わせて行くと、400年は前の人物らしい。

時代は、ラッカムラン王国の建国以前にまで遡る。

ラッカムラン王国が立てられる前の王国、ワイエン王国と関わりがあったそうだが、彼自身は妖精族である為に、その国の国民や臣下では無かったそうだ。

彼曰く、旧ワイエン王国は、今のラッカムラン王国の西側半分から開拓村が点在する無国籍地帯に跨る辺りまでが領土だったらしい。

ワイエン王国が滅びたいきさつは、彼が石に意識を移した後の事で知らないようである。

ケルアン「そうか、ワイエンは滅びてしまったのだな。だが、あんな事をしておれば、いつかはそんな日が来るような気がしておったよ。」

彼は語る、旧王国が行って来た事を。


彼は、自分が入った石が地下迷宮の中に放置されている事を知らなかった。

そもそも、彼のいた時代には、「地下迷宮」などという名称は無かった。

ただ、ハノガナの街の旧市街などにある、地下の建造物を旧王国は建設していたと言う。

それは、地下に「都」を作る為に。

当時の王国は、今も人々が魔獣に悩まされているように、外敵からの攻撃に脅かされていたそうだ。

旧王国の敵は、魔獣だけではなかった。

その恐るべき相手は、魔族だったのだ。


魔族の襲撃に備える為に、旧王国は地下へと避難場所を作り始めていたそうだ。

多分、その名残が、地下迷宮なのだろう。

そして、その建設の為に、様々な種族らの応援を求めていたらしい。

ケルアンもその内の1人だったようだ。

彼ら妖精族は、その魔法の知識、能力を買われての事だったそうだ。

だが、旧王国の興味は、いつしか敵対する魔族へと及び始める。

最初は、敵対する魔族を調べる為に。

それが、いつの間にか、魔族の力を利用する方向へと変化して行った。

ケルアン「儂らも、魔族の研究に協力を頼まれた。そして、彼らを捕らえようと王国の連中は始めた。まあ、捕らえたのは、どれも小物だったようだが。」

アグラム「魔族を捕らえる? もしかして、それが迷宮の奥の・・・。」


迷宮の奥で自分達の見た封印された魔族、あれはワイエン王国が捕らえた物だったのだろうか?

だが、この場にいる全ての人が、その事を知っている訳ではない。

アグラム「諸君、この事は他言無用にして欲しい。実は・・・。」

伯爵は、封印された魔族の事を語り始めた。

ナガムノ「そうでしたか、迷宮の奥にそんな物が。確かに、公表はできない内容ですな。」

ケルアンも驚いていた。

ケルアン「そうか、そこまで設備を作っていたか。魔族は魔獣を呼び寄せる。迷宮とやらに魔獣が沢山いるのも、封印された奴らの影響じゃろう。」

ケルアンの話で、迷宮が出来上がった経緯が、少しばかり解って来た。


 ネアンからも、話を聞いた。

まず最初に、迷宮の神殿で四主神以外に邪神も合わせて祀られていた事、魔獣である彼女らが何故に四主神も崇めているのか聞く。

ネアン「みんな、神様よ。昔から、そ。祀る当たる前。」

彼女らに、神々の区別は無いようだ。

ネアン「昔、神様、1つだた。それが割れた。」

聞き取りに参加していた神官らから、どよめきが生まれる。

フォドも、驚いた様子だ。

もしかして、四主神も邪神も、元は同じ1つの神だったのか?

ネアン「だから、私ら分けねい。分けんの変。」

そうなのか? だけど、今まで見た邪神に関わる場所は、邪神しか祀ってなかったようだが。

ネアン「影の神様だか祀る? そは、おかしいい。」

妖戦鬼の神官だあるネアンは、邪神だけを特別に祀る事はおかしな事のようだ。


その他、仲間の妖戦鬼の事も聞いたのだが、

ネアン「仲間、いぱいいう。でも、私言いてくまい。ごまんなさい。」

流石に、仲間らの情報は言えないようだ。

だが、自分達が彼女を捕らえた廃墟の先に、彼女らの仲間も沢山いるようだ。

あの先へと向かえば、彼女の仲間とも戦う事になるだろう。

今までは当たり前の事だったが、ネアンに関わったので、何だか抵抗感が生まれた気がする。

彼女には、妖戦鬼の生活なども聞いた。

彼女らは、迷宮内で狩りをしたり、道具を作ったりと、余り人間らとは違わない生活をしているらしい。

魔獣扱いをされるが、その辺りは他の物とは違うようだ。

ワイエン王国が地下に都市を作っていたのならば、今もそこを妖戦鬼らが活用しているのであろう。

もしかして、彼らの都市までもあるのだろうか?

興味は尽きない。

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