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第82話「拠点設営の後始末」

魔法陣が完成し、拠点が使用可能になった。

施設としての完成ではないが、この魔鉱石で囲まれた円陣は、地上と同じく気力や魔力を回復できる場所となった。

今後、ここを休憩所や物資の集積所として使う予定である。

魔法陣で保護したお陰で、ここに魔獣は寄り付かなくなるはずである。

先程、狗毛鬼らが去って行ったのも、冒険者らの気迫が追いやったのではなく、拠点が機能し始めたという事であろう。


負傷した冒険者や、呪文の詠唱で消耗した魔術師らが、拠点の円陣内に運び込まれた。

ナルルガも、いつの間にかに、ひっくり返っていた。

ナルルガ「もう、限界よ~。ここで眠る。」

そうは、いかないだろう。

キオウ「後で、背負ってでも街へ帰るぞ。」

ナルルガ「そんな体力残ってんの、あんた。」

キオウ「いや、そう言われると、自信ない。」

ナルルガ「ダメじゃん。やっぱり、ここで寝る。」

「ここじゃ、食事も碌にできないぞ。他の回復が終ったら帰ろう。」


「おう、ご苦労さん。」

交代の要員がやって来た。

これから、ここには冒険者やギルドのスタッフが常駐する事にもなる。

まずは、拠点内部の施設を建設するが、それまでの仮の待機場所を作る。

回復した冒険者らが、何組かのパーティーで固まって帰路に付く。

自分達も、ナルルガが立ち上がれるようになったので、街へと戻る。


キオウが、ふらつくナルルガを支えている。

そのキオウも、足を引き摺っているのだが。

ナルルガ「あんたも、ふらふらじゃない。」

キオウ「ナルルガよりは、マシさ。お疲れ。」

ナルルガ「みんな、最後まで付き合わなくても良かったのに。」

「そうは、いかないだろ。」

マレイナ「ナルルガだけ、迷宮に置いてはいけないよ。」

フォド「そうですよ。私達は仲間ですから当然の事です。」

ナルルガ「ありがとね。みんなが守ってくれたから、私も最後まで踏ん張れたんだろうね。」キオウ「お前、珍しく素直だな。」

ナルルガ「いつもそうでしょ。私は。」

イルネ「そういう事にしておきましょう。」

ナルルガ「何よ。イルネまで。」

「いつも、そうなら楽なんだけどな。」


消耗し切って、街へと帰って来た。

報告の為にギルドに立ち寄るが、詳細は明日以降にする事とし、今日は家へと帰る。

今は昼に近いので、家に帰る前に飯屋により軽めに食事をする。

ふらふらではあるが、腹も空いている。

マレイナ「ほら、ナルルガ起きて、家に帰るよ。」

ナルルガ「う~ん、もうここで眠る。」

キオウ「ほら、しっかりしろ。寝るなら家に帰ってからにしろ。」

ナルルガ「もう寝られるなら、どこでもいい。」

重い体とナルルガを引き摺りながら、家へと帰る。

その後は、記憶が消えた。


次に、意識を戻したのは、翌日の昼頃である。

丸一日は、寝ていたようだ。

起きたはいいが、体中が痛い。

怪我などは回復して貰ってはいるが、所々、打撲の跡や筋肉の強張りもある。

自室から1階に降りると、マレイナが何か料理を作っていた。

そろそろ、皆が起きて来るだろうと、作っていたらしい。

食卓に座ったがいいが、そこから動く気力も起きず、ただ楽しそうに調理してるマレイナを見ていた。

何かを手伝おうとは思うのだが、それから先が思い付かない。

そうしていると、フォドがキオウが起きてきた。

フォド「おはよう、皆さん、何やらいい匂いですね。」

キオウ「ああ、もうこんなに日が昇ってるのか。体中がいて~よ。」

マレイナ「できたよ~。お皿取って。」

「ほ~い。」

マレイナが卵や肉やら野菜で、炒め物をなどを作ってくれた。

それをただ、もぐもぐと食べる。

ああ、今は、他にする気力も無い。

キオウ「ギルドへは、どうする?」

「ナルルガが起きて来ないと。」

キオウ「あいつ、また明日まで寝るんじゃないのか?」

フォド「そうかもしれませんね。今回も大活躍でしたから。」

マレイナ「様子、見てこようか?」

キオウ「ほっとけ、どうせ今は、何をしても起きないから。」


そのナルルガが起きて来たのは、その日の夕方近くだった。

腹が空いたと言うので、マレイナの作っておいた、パンに野菜や肉を挟んだ物を持たせ、引き摺るようにしてギルドに向かう。

途中、餓えたナルルガが、マレイナのパンを貪る。

それでも足りないので、街の屋台でいろいろ買ってからギルドに入った。


ヘルガ「ああ、皆さん、体力は戻りましたか? 報告でしたら、後日でも構わないですよ。」

いつもは、混雑しているギルドの1階に、ほぼ人はいない。

拠点の設営は、比較的、経験の浅い冒険者以外は、ほぼ全員が参加であった。

今日明日は、新たに依頼を受けに来る冒険者は、ほとんどいないであろう。

ヘルガ「それと、皆さんの討伐していただいた魔獣ですが、拠点の守備をする者達が集計しましたので、後日、配当金が出ます。」

今回は、誰が魔獣を倒したのか解らないので、討伐の報酬は参加した冒険者の頭割りらしい。

ただ、自分達は最初から最後まで戦っていたので、その分の上乗せはしてくれるようだ。

その他にも、設営の手伝いや魔法陣を完成させた報酬が別に出る事になっている。


ヘルガ「それから、今回は、倒した魔獣の数が多いので、その死体の処理も各冒険者さんにお願いしたいと思います。」

そうだ、拠点の前に魔獣の遺骸が多量に溜まっている。

普段ならば、魔獣の遺骸を迷宮内に放置しても、それがまた別の魔獣の糧となっているので、それを態々処理する事も無い。

だが、魔獣避けを施した拠点近くに、連中が立ち寄る事はほぼ無くなった上に、あれだけの遺骸が腐敗したら、拠点が使えなくなるかもしれない。

燃やすなり、どこかに運ぶなり、何かしらの対処は必要であろう。

設営は終ったが、後始末はまだ終っていない。

それに、拠点の機能を効果的に活用する為の施設の建設もこれからだ。

全てが終るのは、まだ数週間は先になるようだ。

キオウ「まだまだ、やる事は、山積みだな。」

「仕方ない。それだけの大仕事だったから。」


その後は、簡単に今回の出来事を報告した。

自分らは討伐した魔獣に関して、ナルルガは魔法陣に関して。

これも、数日掛けて報告をし、他の冒険者らの物を合せて様々に検討する事となる。

自分達が聞かれたのは、主に、未知の魔獣の事だ。

大タコに、洞穴貝など。

キオウ「白狗毛鬼をまた逃がしてしまいましたよ。」

「でも、あの状況では、奴を倒せたかどうか。」

ヘルガ「そうですね。イルネさんならば、倒せたかもしれませんが、今回は拠点を完成させる事が目的でしたので、仕方ありません。」


報告も一応は終ったので、アグラム伯爵の城館へも向かう。

既に、日も暮れていたが、伯爵は自分達を迎え入れてくれた。

城館には、イルネもいた。

「イルネからも、報告は聞いている。だが、君達からも話を聞きたい。」

ここでも、伯爵へと報告する。

「そうか、大タコか。そんな物が迷宮にはいたのだな。海に棲むような魔獣も暮らせる地域があるのだな。」

伯爵も驚いた様子である。

「ナルルガ、魔法陣の事、ご苦労であった。君がいてこその今回の成功であろう。」

ナルルガも照れ臭そうである。

ナルルガ「いえ、そんな事。今回は冒険者ら全員の働きの結果です。」

いつの間にか、そんな言葉を彼女は言えるようになっていたか。

その後、伯爵に御馳走になると、その日は家へと戻るだけであった。


数日は、ギルドや伯爵への報告、ナルルガはアデト魔法学校へ魔法陣の事も説明しに行っていた。

そして、やっと迷宮に戻る。

最初の仕事は、拠点の周囲に積み上げられた魔獣の遺骸の処理であった。

大半は、既に他の冒険者らの手によって片付けられていた。

大タコや灰白巨人のような大型の物は、その場で魔法の炎で焼かれた。

運べる物に関しては、拠点から数百mは離れた、広がった場所に破棄される。

流石に、細い通路のような所に放置しては、通り抜けもできなくなる。

キオウ「うう、これ腐り始めてるぞ。」

「鼻がもげそうだ。」

マレイナ「食欲、無くなりそう。」

幸い、今回の戦闘で、周囲の魔獣の数が減っているようで、廃棄作業は捗る。

そんな作業が終る頃には、迷宮内でまた魔獣が徘徊し始めたのだが。


拠点の施設の建設も進む。

拠点の円陣内の半分は、冒険者らが休養、睡眠をする場所として簡単な小屋が立てられる。

その中では、約30人は休めるであろう。

その他、1/4のスペースには、物資の貯蔵場所、残った場所は、ギルドの係員らが使う場所である。

円陣の外側にも魔獣避けの効果があるので、倉庫や便所なども作られている。

施設が完成すると、ここが冒険者らの迷宮内での足掛かりとなる。

まるで、山小屋のように、ここで休憩した冒険者らが迷宮の深くへと向かって行く。

中には、数日、迷宮内で過ごすパーティーも出て来るが、それはまた先の話である。

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