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第79話「魔法陣を死守せよ」

ナルルガら、8人の魔術師らの魔法陣を作る呪文の詠唱が続いている。

それも、少しばかり前に始まったばかりなので、ここを1日間、自分を含めた冒険者らが護る。

その詠唱が、少しづつ迷宮内の魔獣らを呼び寄せる。

嫌、ナルルガが言うには、呪文の苦痛を感じて妨害しに来るらしい。

現れる魔獣も、まだ散発的で数も少ない。

だが、時間が経過すればする程に、迷宮の各所から集まって来るらしいのだ。


初めは、少数の一角鬼や大食い鬼が現れるだけだった。

やがて、それが一度に現れる数が増え、その頻度も上がって来る。

余裕を持って対処していたのが、徐々に処理が大変になりつつある。

交代が来るまで、支えられるのか?

自分らは、最後までナルルガに付き合うつもりではあるが。

出て来る魔獣も変わり始めた。

狗毛鬼や鰐人が混ざっている。

ここは、水辺から距離があるはずだが、鰐人まで少数だが出て来た。

鰐人が相手だと、苦戦する冒険者も出始めて来た。

奴らは、硬く、武器の扱いも上手い。

武技が未熟な冒険者には、恐ろしい相手なのだ。

そんな強敵は、ベテランの冒険者が受け持つようにしているが、いつまで庇えるだろうか?


冒険者らも、交代で回復や治療を行ってはいる。

あと数時間もすれば、交代も来るはずだ。

だが、その時間が果てしなく長く感じる。

気が萎えないように、互いに声を出して励まし合う。

「マレイナ、無理するな。」

キオウ「サダも、加減して戦え。先はまだ長いぞ。」

マレイナ「まだまだ、行けるよ。」

他のパーティーでも、同様である。

方々から、声が聞こえて来る。

他にも一緒に戦う仲間がいる事が、また心の支えにもなる。


けれど、魔獣の方も、どんどんと出て来る。

呪文の詠唱が、迷宮のどの辺りまでの魔獣に影響を与えているのだろうか?

まさか、深層の奥まで伝わり、地龍らにも囁き掛けているなんて事もあるのか?

ついに、大角鬼や、獣悪鬼までが姿を現した。

獣悪鬼とは戦った事の無い冒険者も、最初の護衛役の冒険者にはいる。

自分らが、積極的に対処に当たる。

まるで、今までの迷宮内での戦いを再現しているかのように、幾種類もの魔獣と戦っていた。

そう思うと、それらと戦って生き残った自分達の成長も感じられるのだが、そんな事を考える余裕も無くなりつつある。

漸く、交代要員が現れ、呪文を唱える魔術師が1人づつ交代し、護衛の冒険者のパーティーも入れ替わる。

それでも、ナルルガと自分達は引き続き、この場に留まった。


数時間の呪文の詠唱で、魔法陣にも変化が現れている。

最初は、空気が魔法陣の方に集められ、その周囲を舞っているだけのようであったが、今は積み上げた魔鉱石が微かな光を放っている。

これは、石に魔法が浸透し始めているからなのか?

交代し、少しばかり休憩を取っていたナルルガも、また呪文を唱え始めた。

まだまだ、余裕な顔を見せるナルルガではあるが、内心は苦しいのではないのか?

今回の魔法陣は、ハルム王国で一角鬼を撃退した時よりも、魔力を消費しているように思えるが。

それでも彼女は、

ナルルガ「大丈夫、何てことないの。」と強がって見せていたが。

自分達も休憩を終えて、守備へと再び付く。

獣悪鬼の数が増えつつあり、不安が大きくなっているのだが。


既に、魔獣を何匹切り捨てたか?

護衛する冒険者らにより、倒された魔獣の遺体の山ができつつある。

もう、100体は越え、200近いのではないのか?

ハノガナの街に、今、所属している冒険者の数を越えている。

迷宮内の魔獣の多さには驚くが、それでも、その極一部でしかない。

これで、魔獣が居なくなるなら、拠点など築く意味も無くなってしまう。

しかし、そんな気配も無く、魔獣は湧き続けていた。


一角鬼や大食い鬼の姿は消えていた。

今は、狗毛鬼が姿を見せる魔獣では、最も弱い相手となっている。

武技は極力使わずに、気力をできるだけ温存したいが、それもいつまでできるか。

互いに掛け合う口数が減っている事に気付いたので、声を張る。

「まだまだ、行けるぞ!」

キオウ「おうっ!」

イルネ「まだまだ、お腹いっぱいには程遠いわ。」

仲間らの武器の動きに、鈍った印象は無い。


だが、深層にいるような輩まで、姿を現した。

灰白巨人が、ぽつんと獣悪鬼に混ざって現れた。

他の魔獣に比べ、体も大きく、存在感がある。

そいつが、他の魔獣も巻き沿いに、巨大な木の塊のような棍棒を振り回して来た。

だが、交代した冒険者らも、ベテランが揃っている。

難無く倒したが、こいつらが複数出て来るとすれば厄介だ。

そして、それが予感ではなく、現実となるのに時間は差ほどに掛からなかった。

魔獣の頭越しに、何匹かの灰白巨人の姿が見え始める。

そいつを目掛けて剣を振るい、奴の無骨な武器を避ける。

こちらは避けるが、周りの魔獣を巻き沿いに、奴はこちらに向かって来る。

もう、相手など誰でも良いようだ。

奴らが連携して来ないので、ありがたくはあるが。


風を巻き込み、奴の棍棒が迫るが、それを避けて懐に踏み入ると、切り付け、さっと身を引く。

奴が怒り任せに振り回す棍棒が、周りの大角鬼や獣悪鬼を巻き込む。

中には、灰色巨人に攻撃する魔獣もいるが、格上の魔獣が敵うはずもない。

そんな奴は、一撃で肉の塊と化した。

そんな打撃を自分も受けるつもりは無い。

そんな隙を見付けると、灰白巨人へ致命的な一撃を加えてやる。

今日、何匹目かの灰白巨人に止めを入れた。

だが、そんなのは、この長い戦いのほんの一部の事でしかない。

まだまだ、呪文は留まる事無く、迷宮の壁に当たり、暗い奥底へと響いて行く。

それが、また新たな魔獣を呼び込む。


既に、半日はとうに過ぎただろう。

護衛役の冒険者らのニ陣目にも、やや疲労が見え始めている。

当然、最初から戦い続けている自分らの疲労の蓄積も多い。

たまに、交代して休むが、少しづつ限界が近付いている気もする。

だが、ハルム王国での長期戦の経験などが、長い戦いのコツを掴んでいるようで気力の使い方を調節する。

あの時の方が守る相手は多かった。

それに比べれば、まだ余裕がある。


しかし、また強敵が姿を現し始めた。

魔獣に、妖戦鬼が混ざりだした。

これも、また強敵である。

剣で切り付ければ、防がれ、切り返して来る。

並の戦い方では、こいつらとは戦えない。

温存していた気力を振り絞り、剣に魔力を込めた。

さて、これからが、本気の戦いの始まりだ。


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