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第76話「報告と新事業」

ハノガナの街へ戻って来た。

まず、最初に立ち寄る場所は、アグラム伯爵の城館である。

ここを優先しないと、義理も欠くであろうし、後も怖い。

伯爵に逆らう気など、自分達には一切無いのだが。


執務室で、伯爵と対面する。

今日も、アグラム伯爵は楽しそうに見える。

そして、自分達の報告に、何度も頷いている。

今回は、黒の魔人という新たな魔族に遭遇した事。

その魔人が、バロの魔犬や小魔人を召喚した事。

魔人の特徴や、使って来た呪文や技の事も伝えた。


最後まで、黙って聞いていた伯爵が口を開く。

「今回も、皆の者、ご苦労であった。」

「そうか、新たな魔族か。また、面倒な物が現れたな。」

「それと、バロの魔犬か。珍しい魔獣だと思ってはいたが、魔族とのつながりがあるとはな。」

「ナルルガ、君はどう思う?」

いきなりの指名に焦ったナルルガではあるが、彼女なりの考えをまとていたようだ。

「ま、魔犬は、魔界の生き物であり、魔族が使役している魔獣ではないかと。」

「なる程、それも、ありえるかもしれないな。」

伯爵に認められ、ほっとした様子のナルルガだった。

「では、サダ、君は以前、魔犬に襲われたそうだが、その時に魔族を見た覚えはあるか?」

今度は、自分に向けられた。

「い、いえ、記憶がまだ不完全なのですが、魔族を見た覚えは今のところは、ありません。」そうだ、両親と共に襲われた時の記憶も、完全に戻っているのか解らないのだ。

その後の2年間の記憶は、すっぽり消えている。

もしかしたら、その2年の時間が、自分には無かったのかもしれないが。


この日は、各自の立場から、伯爵に1人づつ質問をされていた。

最後に、イルネに伯爵は聞く。

「ハルム王国では、遺体や一角鬼を呼び出した者がいた。そいつと、今回の魔族、関りがあると思うか?」

イルネが少しの間、考え込んでいるようである。

そして、やや下を向いていた顔を伯爵に向けた。

「解りません。魔族と、果たして協力関係が築けるものでしょうか? 今回の魔族は口から何かを発声していましたが、あれが言葉なのか呪文なのか定かではありません。発音も人間らとは随分と違う印象を持ちました。」

「そうか、なる程な。魔票とやらを使う連中と魔族を結び付ける根拠は無いか。」

確かに、魔獣を召喚するという事に共通点があるのかもしれないが、まだその間をつなぐ証拠が無い。

まだ、別の物と考えるべきなのか。

けれど、それを伯爵は、関りがあると予想していたのか?


伯爵への報告は終った。

しばらくは、休めと言われる。

ギルドの仕事でもすると良いとも。

それから、最後には、

「ギルドも面白い事を始めるみたいだぞ。」

そう話すと、会談は終った。

翌日は、休息日に当てると、その次の日にギルドに向かった。


久し振りに、ハノガナの街の冒険者ギルドに行った。

まずは、最初に登録を行うと、変わった事は無いかと聞いてみた。

ヘルガに会うのも久し振りだ。

「ああ、サダ君達、丁度いい所に来た。君達も手伝ってくれないかな?」

ヘルガの言う手伝いとは、地下迷宮に冒険者らの活動拠点になる場所を建設する計画があるそうだ。

ギルドが主体となり、迷宮内の幾つかのポイントに休憩場所兼避難場所兼物資の集積所を作る事となったらしい。

それにより、冒険者が、より深く迷宮に潜れるようにもなる上に、退避場所もできる。

将来的には、迷宮内に幾つか拠点を設けるが、今は、その最初のポイントを作るそうだ。

利用法などは、まだ未定だが、設置に協力した冒険者らには、しばらく優先的に使わせるそうだ。


なるほど、以前、自分達はそんな臨時の場所を作ってもいたが、ギルドが関わるならば、もっと安全で、休憩場所として使える物ができるかもしれない。

それで、何を自分達に頼みたいかと言えば、魔獣避けや、魔力回復の作用のある鉱石を掘り出して欲しいとの事だ。

掘り出した鉱石は街へ一度持ち帰り、加工してから建設現場に運ぶという。

迷宮内での事なので、それを全て人力でやるのである。

自分達も、まずは鉱石掘りから手伝う事となった。


求められる鉱石は、破龍石はりゅうせき魔生岩ませいがんの2種類だ。

破龍石は、魔獣避けの作用がある鉱石である。

魔生岩は、魔力回復の効果がある。

共に、御符などの材料にもなるが、今回は休憩拠点の礎石として使われる。

礎石にする為に、レンガ大のサイズを切り出す事が求められている。

また、大変なのは要求数である。

破龍石を180個、魔生岩を120個集める事になっている。

共に、迷宮の中層から深層に近い場所で採掘される上に、1ヶ所で全て集められるような見付かり易い物でも無い。

当然、そんな大掛かりな作業であるからには、ギルドの単独で行える事ではない。

領主やアデト魔法学校も協力している。

伯爵め、ギルドが面白い事をやってるなどと言っていたが、しっかり自分も一枚噛んでたのか。


久し振りに、迷宮へ潜る。

今回は、鉱石の採掘が目的だが、当然ながら魔獣にも遭遇する。

採掘場の行き帰りにも遭遇するが、採掘中もこちらの都合に関係無く襲って来る。

迷宮に冒険者らが入り始めてから、100年は経過している。

その間に何千、いや何万という頻度で冒険者と魔獣らの戦いがあったのだ。

奴らも、冒険者の出す、様々な音や気配を熟知しており、それを目掛けて現れるのだ。

鉱石の採掘など、その音や振動を消せるものではない。


「来たよ。奥の方から5匹。多分、狗毛鬼だと思う。」

マレイナが、探知して警告を出してくれた。

ハンマーで迷宮の壁を叩いて鉱石を掘り始めてから、10分も経ってはいない。

お客さんを迎え撃つ準備をする。

マレイナの探知した通り、狗毛鬼が5匹現れる。

イルネが真っ先に飛び出すと、1匹を切り倒す。

そこを狙う1匹を自分が切り、また別の奴をキオウが突き刺す。

体勢を直したイルネが2匹目を切ると、残った1匹が逃げ出すが、その背をナルルガの火炎矢が射貫く。

マレイナから声を掛けられてから、2分も経っていないだろう。

マレイナ「みんな、早過ぎるよ。」

フォド「出番無しでしたよ。」

うん、いいパーティーだ。

採掘を再開しよう。


何度か、魔獣を撃退しながら採掘を続けた。

だが、1日掛かって得られたのは、破龍石が10個、魔生岩が3個である。

それでも、魔獣を何匹も討伐している上に、別の鉱石も掘れている。

今日は、それで満足しよう。

鉱石集めは、10日程前から始まっているが、まだ必要な量の半分程度しか集まってないそうだ。

掘り出しても、粗悪な石は使えないので弾いているので、なかなかに数が揃わない。

今回の自分達が集めた物も大丈夫であろうか?


街に戻ると、まずは、ギルドで石の選定を行う。

純度の高い合格レベルの鉱石は、破龍石が8個、魔生岩が3個と言われる。

半数以上が合格できて良かった。

弾かれた鉱石も、他の用途には使えるので無駄になる訳ではない。

集めた鉱石は、石工らが形を整えた後に、魔術師らが調整すると言う。

それと、休憩拠点の候補地は、以前、狗毛鬼の集落があった場所が選ばれている。

そこでは、白狗毛鬼とまた遭遇する可能性があると思ったが、逆にそこに拠点を構えて奴を封じるのも目的にしているそうだ。

ギルドや伯爵も、白狗毛鬼を脅威とし、積極的に対処を決めたという訳だ。

奴が再び姿を現すのは、いつなのかは解らないが。

しばらくは、鉱石集めを続けるしかないが。

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