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第65話「騎士フラム」

パシコの町に戻ると、暴漢に襲われたので撃退したと役所へと届けた。

放置して、こちらの不利な状況に陥れられても困るので、隠さずに話せる範囲で報告した。

魔獣を探していたら、急に森から飛び出して来た武装した一団に襲われ、撃退したところその仲間らが止めを刺して逃げ去ったと。


対応したのは、自分達と差ほどに歳の変わらない女性だった。

鎖帷子に外套を羽織り、腰には長剣を下げている。

どうやら、この町に派遣されている騎士のようだ。

翌日、現場に案内するように言われ、その時は宿に返された。

勿論、身分証明の為に、冒険者のタグを見せてある。

それと、連中から回収した武器を提出した。

連中の遺体は、森に放置して来たが、明日まで残っているだろうか?

ああ、それと奴らの馬を2頭捕まえられたので、これも役所に渡した。


翌朝、再び役所へと向かう。

昨日も対応してくれた女騎士が一団を率いて、一緒に現場へと向かう事となる。

彼女の名は、フラム、獣人のこの国の騎士である。

騎馬が8騎、馬車1台に8人の兵も乗せている。

自分達も馬に跨り、現場へと案内する。

昨日も聞かれたのだが、道々、自分達のこの町へ来た理由、襲撃を受けた時の状況などを確認された。

こちらは、まだ札の件は伏せておき、方々を彷徨っているうちに、この近くで起きた騒動を知り半ば野次馬的な興味で来たと伝えた。

襲撃を受けたのに心当たりは無いので、山賊の類が襲って来たとしか思えないと告白した。

とりあえずは、納得してくれたらしい。


襲撃現場に到着した。

まずは、連中の遺体の確認である。

幸い、獣や魔獣らに悪戯された痕跡は無い。

連中の人相書きなどを、その場で作っていた。

昨日も自分達で確認したが、連中は全て人間族である。

その後は、襲撃の様子を自分達に確かめる班と、森の中を調べる班に解かれ調査する。

森の中には、特に何も手掛かりとなる物は残されていないようだ。

遺体は、布に包んで馬車へと乗せた。

例の騒動以降、遺体は全て火葬処理するのだそうだ。

パシコの町へと戻る。

道中、フラムから役所で、再び話を聞きたいという事なので同意する。


通されたのは、フラムの仕事部屋のようだ。

彼女の他にも、3人の兵士らが同席している。

勿論、彼女がここの役所の責任者ではない。

ただの現場の雑用係だと、少々自虐的に言われた。

そして、彼女は語り出した。

フ「君達は、連中の仲間ではないのだね?」

連中とは、フードを被った武装集団の事だろうか?

「お尋ねの意味がよく解らないのですが?」

こちらも慎重に言葉を選ばないと。

フ「君達が戦った相手の事だが、仲間割れではないよね?」

「ええ、勿論。もしも、仲間割れならば、そのまま殺めた事を届け出もしないでしょう。届け出て、罪に咎められても困りますから。」

フ「まあ、そうだろうね。でも、君達は役所に態々報告をしてくれた。信じていいのだよね?」

「こちらも、信じて頂けると、助かります。故郷を離れた場所で罪を疑われても助けてくれる人がいませんから。」

フ「冒険者ギルドにも、不審な記録は無いようであるから、君達の事は信用しよう。」

「ありがとうございます。」

このフランという女騎士をこちらも信用しても良さそうだ。

彼女の自分達への応対も、ちゃんとしてくれている。


フ「君達の倒した相手の仲間を、こちらでも調べてはいる。けれど、その正体が解らないのだ。」

「そうでしたか。何か連中が問題行動でも?」

フ「恥ずかしい話だが、連中の正体も目的も、未だに判明していない。だが、君達も知っているだろうが、この地方で動き回る遺体が大量に発生する事件が起きた。あいつらは、その前からいろいろと問題を起こしていたのだよ。」

ああ、やっぱり、札や動く遺体と何かしら関係があると、こちらでも疑われていたのか。

「そういう連中でしたか。でも、何で自分達が、そんな連中に襲われたのでしょうか?」

フ「それは解らないが、君達は、あの付近で何かを見たりしなかったか?」

「いえ、お話したように、こちらは魔獣を探して通り掛かったら、向こうから攻撃をいきなり仕掛けて来られたので。その前に、奴らが何かをしていたのかは解りません。」

フ「そうか、連中は、たまに通り掛かった村人や旅人を追い払うような事は何度もやってはいるが、冒険者を襲う事は余り無いのでな。」

アデレード地方の西側の開拓村付近でも、開拓民らとトラブルが起きていた。

同様の事を、こちらでもしているのだろう。

「あの辺りに、連中の拠点のような物があるのでしょうか?」

フ「それらしい物は、今までに見付かっていない。例えば、廃墟や洞窟など隠れるような物は、あの辺りには無いのだ。」

そうか、開拓村の近くにあった、廃墟のような隠れ家になりそうな場所は無いのか。

ならば、何で自分達を襲ったのか?

連中には、こちらの正体が解っているのか?

もしかして、開拓村を襲ったり、近くで監視していたのと同じ人物がいるのだろうか?


フ「もしも、君達の都合が良ければ、我々に協力して貰えないだろうか? 結果によって、相応の報酬を出す事もできる。」

いきなりのフランからの提案である。

「何故、自分達に? ただの通り掛かった冒険者ですよ。」

フ「君達の腕前を評価している。冒険者としての経験は充分で、現にあいつらの襲撃も撃退している。」

言葉通りに受け取っても良いのだろうか?

要は、自分達を監視下に置きたいだけではないのか?

「評価して頂けるのはありがたいです。ですが、一度、仲間らとも話し合いたいのですが。それに、旅の途中ですから路銀なども不足してますので、ギルドでの活動も可能なのでしょうか?」

フ「当然の事だな。気が済むまで話し合って欲しい。ギルドを通しての活動だが、こちらの方が頼んでいるのだから、それを優先して貰って構わないよ。」

フランの部屋から宿へ自分達は戻った。

これから、仲間達と相談だ。


兵「彼らは信用できるのでしょうか?」

サダらが去った部屋で、フランに兵士の1人が聞いた。

フ「それは何とも言えない。だが、少なくとも連中とは無縁であろう。騎士が3人もいる冒険者というのは珍しいがな。」

兵「ラッカムラン王国の密偵でしょうか?」

フ「それにしては、あからさまな組み合わせだな。密偵ではないだろう。」

兵「では、例の物を追い求めて来た訳では無いと?」

フ「それも解らん。魔票まひょうを使っている奴らの仲間だとしたら、ある種のいかがわしさが無い。それだけで、今は充分だ。接する時間が長引けば、いろいろと見えて来るだろう。」


宿に戻ると、仲間らとの相談が始まった。

皆、不安はあるが、逆に断れば疑いを深める事にもなるだろう。

それに、フランという伝手を作るいい機会だと思われた。

フランに協力する事で、意見は一致した。

返事は、明日にしよう。

彼女が、本当に信用できる人物であるならば良いのだが。

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