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第62話「東方へ、」

イルネと行動するようになり、1ヵ月強が過ぎた頃、再び自分達は伯爵の執務室に集められた。

イルネもいるが、ガラワンもその場に呼ばれていた。

伯爵が、全員の顔を順に見回して発した。

「よし、頃合いは良いだろう。諸君、計画を次の段階に進める時が来たようだ。」


伯爵の言葉は続く。

自分らとイルネは、再びケリナの街へと向かう。

そして、魔法学院で、対闇魔法の呪文等を学び、国境を越えてハルム王国へ向かう。

そして、例のふだを使った騒動の顛末を調べる事となった。

「君達は、札に縁があるのかもしれない。他の者よりも熟知しているであろうし、これ以上の適任者はいない。」

ガラワンには、自分らやイルネがしばらくハノガナの街から離れるので、その穴埋めをしっかり行う事を命じていた。

出発は5日後の予定となり、解散となった。

また、ケリナの街へ行くのか。

そして、今度はその先へも。


準備と休養で5日間は、あっという間に過ぎた。

自分らとイルネは、城館に集合した。

伯爵やガラワン、その他の騎士や従騎士らに見送られて、自分達は6頭の馬で旅立つ。

例によって、馬は伯爵に借りた。

それも、ナハクシュト王国まで一緒に旅した馬である。

彼らと共に歩めるのは、また嬉しい事だ。

5日後、6人はケリナの城門を数ヵ月振りに潜った。


向かうは、まずはユドロ侯爵の別宅だ。

今回も、ケリナの街の滞在中は、ここでお世話になる。

家宰ら、懐かしい顔に迎えられた。

馬を預け、荷を降ろすと、次は魔法学院である。

タバル教授が対応してくれる。

そこで、重複する内容もあったが、ハルム王国での惨事、札の事、対処魔法の説明を聞く。

自分達も以前に対処魔法を体得してはいるが、改めて習う事となる。

その修得に、1週間の期間を当てる事とする。

修練は、翌日から始める流れとなった。


この街で、冒険者として活動するつもりも余裕は無いが、一応はギルドに顔を出し登録は済ませておく。

何か、噂など聞いておく事も、けっして無駄な事ではない。

ケリナの街は、数ヵ月振りではあるが、特に変化は無いようだ。

ハルム王国での事は、関心を持つ者が無く情報はほぼ無い。

この街で、その事に取り組んでいるのは、魔法学院だけのようだ。

元から、ここでは遠方に出掛けでもしなければ、強力な魔獣に出会う事もないので、仕方ないのかもしれない。

ここは、ハノガナの街以上に、安全な場所なのだ。


それから、自分だけ別行動を取り、貧民街のマガセを尋ねた。

土産にここの辺りでは珍しい薬草の種や、市場で買い込んだ食料などを持ち込む。

マガセも子供達も、元気にやっているようだ。

今回は、時間も無いので、挨拶程度で別れる。

時間に余裕があれば、また畑仕事を手伝いたいのであるが。

ここを立つ前に、もう一度は顔を出したいものだ。


翌日からは、魔法学院で幾つかの呪文を習う。

光属性魔法の呪文である。

札などの闇魔術を無効化する「光の円陣」。

闇の魔術で動き回る相手への有効な攻撃呪文の「光の尖槍せんそう」。

闇魔法から身を守る呪文である「光の御符」。

この3つの呪文である。

光の円陣は、既にナルルガらは修得していたが、その他の呪文は新たに古文書から見付け出した物だという。

これで、札で動く相手や、魔族への対抗力も大幅に強化できるはずである。


それから、ハルム王国での、現在まで解っている騒動の内容についても説明があった。

事の始まりは、数ヵ月前、ハルム王国内のラッカムラン王国の国境近くの村で、動く遺体が目撃された所から始まる。

最初は、数日に1体程度、その数が徐々に増え始めたようだ。

そして、次第に、その遺体が村の中まで入り込んで来るようになると、付近の町の冒険者らに討伐依頼が出された。

だが、冒険者らが討伐しても、数は減らない。

それどころか、遺体が段々と攻撃的になって来たのだとか。

ついに大量の動く遺体により村は占領され、逃げ出せた村人以外は殺されてしまう。

更には、周辺の町村にも被害が拡大され、国軍が出動しての大討伐戦へと発展したそうだ。

聞いていた以上に、その被害の規模も大きかったようだ。

その被害者も、数百人にも及ぶと言う。


そして、ケリナの街での用事も全てが終った。

習い覚えた呪文も完璧である。

ナルルガは、修得に余裕があるので、他にも幾つも呪文を習っていたようだ。

フォドやイルネも呪文の数を増やしていた。

さてと、今度は東へと向かう。

ケリナでの少ない知人らにも別れを告げて、自分達はまた馬の背に乗った。

とは言え、街道を馬で進むだけである。

朝に集落を出て、昼頃に通り道の集落で昼飯を摂る。

それから、夕方まで、できるだけ先に進み、辿り着いた集落で宿を取る。

その繰り返しが続いた。

やがて、12日後に、ハルム王国との国境に近付く。


ラッカムラン王国側の国境の街である「カンダリアの街」、ここのギルドで冒険者の登録を行う。

そして、今日はここの街に泊まり、情報収集。

それが終れば、越境許可証を発行して貰い、あとはハルム王国入りをする。

ここも国境沿いであり、物々しい街だ。

街の城壁も高いが、周囲の丘には砦の名残もある。

約30年前までは、緊張状態にあった国境地帯である。

今は、両国間は友好的な関係になっているが、かつての争いの痕跡は今も残っているようだ。


ここのギルドでは、流石にハルム王国に近いだけあり、いろいろと情報も多い。

何でも、ここの冒険者らも、幾人かは越境して動く遺体の掃討戦に参加したらしい。

国境沿いでの事件であり、ハルム王国側ではラッカムラン王国が関わっている疑惑まで持っていたようだ。

倒した遺体には、例の札に似た物が貼られていたようだが、その全てはハルム王国で回収されたそうだ。

向こうでも、研究されているのだろうか?

貼られた札は1枚づつだったようだが、自分達の知っている札以上に効果が大きいように思える。

しかも、国内を揺るがす程の規模だったのだから、使用された数もかなり多いだろう。

自分達が、無国籍地帯の廃都市で対処した以上の事である。


その他に、ハルム王国自体の情報も集める。

隣国故に、漠然としたイメージは、自分達にもある。

ラッカムラン王国と同じく、農業主体で、国民性もよく似ている。

ラッカムラン王国の建国が約300年前で、あちらが約250年前だ。

向こうの建国が遅かったので、それで軋轢が生まれたという話は、何となく聞いた事もある。

だが、それも今から30年前に、互いの先代王の時代に和平に至っている。

それよりも、両国には、ダラドラムド王国という共通の敵国があるのだ。

ダラドラムド王国、ハルム王国の北方にある大国で、一部東側でラッカムラン王国とも隣接している。

建国は約400年前と、三国の中で最も古い歴史を持つ国家だ。

ダラドラムド王国は、ラッカムラン、ハルムの両国に度々介入してこようとして来た経緯もある国である。


ハルム王国は、こちらとの共通点も多いので、あちらの習慣なども、差ほどの戸惑いも無いのかと思う。

それは、ナハクシュト王国で受けた文化の違いよりも、小さな差ではないのかと。

冒険者の中にも、両国を行き来している者も多いらしい。

国境を越えて自分達が活動しても、怪しまれる事は少ないかもしれない。

ただ、騒動から、それ程に日が経っていないので、変に刺激を与えないように注意して行こう。

あとは、向こうに行ってから調べるのが良いだろう。


その後は、飯屋に寄り、食事をしながら聞き耳を立てる。

こんな場所だと、意外な情報が聞こえて来る事もあるのだ。

だが、動く遺体の事など話している者はいない。

まあ、食事中に話す事でも無いか。

宿に戻り、翌朝にギルドで越境許可証を求める。

さて、準備も出来たので、ハルム王国へ向かおう。

投稿開始以来、連日で投稿をして来ましたが、ここでついに話のストックが尽きました。

今後の投稿は、どうなるのか今は未定です。

できるだけ、頑張るつもりですが。

アダルト作品の方は、まだストックがあるのですけど・・・。

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