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第50話「魔獣との戦」

そんな物騒な話を聞いてから数日が経った頃、冒険者ギルドに向かうと中が騒がしい。

何かと思っていると、先日に話をした冒険者に出会う。

「また村が襲われたらしいぞ」

このタイミングに驚きもある。

マルマトの町から15km程離れた村が、数日前に魔獣の集団に襲われたという。

周囲の町村では、反撃の為に冒険者らを送り込むつもりらしいが、人手が足りないそうだ。

そこで、マルマトの町のギルドにも応援要請が来たらしい。

受付に向かうと、自分達も討伐に参加しないか勧誘される。

そんな大規模な戦いには参加した事はないが、経験の為にも行く事にする。

まずは、被害に遭った村の近くのアロの町に向かい、そこで体勢を整えるという。

アロの町へは、他の冒険者らと共に乗合馬車で向かう。


乗合馬車に揺られる事半日、アロの町へと着く。

すると先に集まった冒険者らが殺気立っていた。

まずは、ギルドに向かい、登録し依頼の説明を受ける。

被害に遭った村はここから8kmほど。

何人かの村人が周囲の町村に助けを求めに来たが、後の村人の安否は不明である。

村人の目撃情報から、相手は大食い鬼と一角鬼の混合集団らしい。

一団の行動から、何か統率を取っている魔獣がいる可能性が高いと言う。

偵察に出た一隊からの情報が齎された。

村は、今も魔獣に占領された状態だと言う。

村の中に籠っている魔獣の数は正確には解らないが、50匹は越える数がいるらしい。

それと、魔獣の中に赤い大食い鬼が見えたそうだ。

それはおそらくは、赤大食い鬼だろう。

大食い鬼のリーダー的な存在で普通の大食い鬼よりも一回りも大きく、力も数倍はあると言う。

そいつが今回の魔獣を統率しているのだろう。


集まった冒険者らを編成して、10人程を1つの小隊として行動を共にする。

自分達も別の冒険者らと組み、11人の小隊を作った。

今回の作戦は、今夜遅くアロの町を出発し被害に遭った村を包囲する。

そして、夜明けに一斉に攻撃に移る事となった。

村の四方に2小隊づつ配置して包囲し、その4組で一斉に攻撃する。

村の正面には別に2つの小隊を予備兵力として、緊急時に備えて措置する。

攻撃の合図は、村の正面に配置する小隊からの火矢の攻撃を持ってする。

夜まで休憩となり、アロの町に分散して休憩を取る。

そして、夜に入ると食事を取り、各小隊毎に進撃を開始する。

自分達の小隊は村の西側を攻める2つの小隊の1つとなった。


無言で夜道を進み、配置場所へと移動する。

2時間程歩き、村の西側に着くと、身を隠す場所を探す。

灌木が何本か生えている場所を見付けると、そこに皆で隠れる。

西側を担当する別の小隊も同じく息を潜めて合図を待つ。

夜明けまでは、あと2時間程の時間がある。

1時間程過ぎた頃に、村の正面に措置さえた小隊から伝令が来る。

各小隊の配置状況を確認する為もあるが、合図の火矢攻撃の前の抜け駆けはしないように念を押す為でもあった。

作戦の変更は無く、予定通りの決行だそうだ。


暗闇の中、村の方角を見詰める。

寝静まっているようで、暗闇の中では普通の村にしか見えない。

村の周囲を囲む塀の高さも差ほどに高くは無いので、乗り越えようと思えば簡単であろう。

村からは灯りなどは見えないが、魔獣達も寝ているのだろうか?

ここからは、見張りがいるのかも解らない。

少々眠気を感じ始めた頃に、南側の村正面の方角に火矢が数本飛ぶのが見えた。

「合図だ!」

潜んでいた全員で村へと殺到する。


まずは、村の塀に身を寄せる。

村の西側にも出入り口があるので、小隊づつに別れ入口の左右に移動する。

村の中では怒号が聞こえるが、西側の出入り口周囲は今のところ静かだ。

夜明けが近付き、周囲も少しづつ物がはっきりと見え始める。

待っているだけでは何の働きもできないので、出入り口の扉を開けようとする。

だが、開かない。

面倒なので、全員で塀を乗り越える。

高さは2m程しかないので軽く乗り越えた。

村の内部を探る。


不意に一角鬼に出くわすが、そのまま切り捨てる。

あとは、周囲の家屋を小隊毎に分かれて捜索する。

出て来た一角鬼や大食い鬼は切る。

家屋では生存者の確認もするが、いない。

何軒か見て回ったが生存者は見付からず、少数の鬼らに出会うだけだ。

村の至る場所から戦闘の音や叫び声が聞こえて来る。

西側から村へと入った自分達も村の中央に移動しつつある。

その先は広場となっているはずだ。

道々、鬼と戦い切り捨てて進む。


広場に出ると、そこでは大乱闘が繰り広げられている。

冒険者らと鬼らがそこかしこで切り合いをしている。

数的には互角だが、村の様々な方角から鬼が集まりつつあり、少しづつ冒険者の数を上回り始めている。

自分達もその戦闘に加わり、鬼の増援に対処する。

奇襲が成功したのか、防具を付けている鬼は少ない。

ほとんどが武器を手にしている程度だ。

一角鬼を双角鬼を大食い鬼をまた切っては突き刺し切り払う。

面倒なので、戦った鬼を数えるのは10を越えた頃には止めた。

数で負けていた冒険者だったが、少しづつ鬼の数を減らし何時しか追い込んでいる。

だが、それに立ち塞がる相手がいる。


赤大食い鬼だ。

奴だけ革鎧に胸甲を着け、人間では振り回せない程の大斧を振り回し、冒険者を寄せ付けていない。

被った兜の両脇から伸びる2本の大角が、余計に迫力を感じさせる。

しかし、今は奴に構っている暇は無い。

対峙している冒険者らに任せるしかない。

自分達にも、まだ相手は沢山いる。

鬼の増援は止まった。

連中は、今、広場に残っている奴だけになったのだろう。

ようやく、自分達の周囲の鬼を掃討し終る。

さあ、赤大食い鬼に挨拶に行こう。


赤大食い鬼の周囲だけは、別世界だった。

奴の周囲にいる大食い鬼も指揮下にあるのか他よりも手強い。

幾人かの冒険者が既に離脱している。

怪力に大斧、そう簡単に倒せる相手ではないようだ。

他の小隊の冒険者が引き下がる。

さて、次は自分達の出番だ。

一緒に小隊を組んだ冒険者が赤大食い鬼に切り掛かる。

それを大斧を一閃して退ける。

そして、次の冒険者も。

まともにあの大斧を喰らえば他の冒険者と同じ運命を辿る。

幸い、死者は出ていないが大怪我をしている者が幾人かいる。

仲間の神官が懸命に彼らを回復して回る。


ついに、赤大食い鬼と立ち向かう。

ゆらりと長剣を構えると、振り回される大斧を受け流し、赤大食い鬼の手首を切りつける。

と思ったが、咄嗟に手首を捻って避けられる。

なる程、ただの怪力ではないのか。

久し振りの大物と対峙している、ある種の喜びを感じる。

これは牛頭巨人以来の強敵だ。

だが、牛頭巨人の方が力は上だったろう。

奴の大斧が戻る前に次の一撃を繰出す。

けれど、奴の革鎧を僅かに抉っただけに終る。

今度は奴の大振りを避ける。

避けながらも連続で突きを繰出し、相手の体勢を崩しに掛かる。

体勢を立て直そうとする赤大食い鬼、だが、そこにあれが来るはずだ。


体勢を崩した所へキオウの戦槍の追撃が加わる。

避けきれずに、一撃を喰らう。

そこへ今度は自分も切り付ける。

威力を込めた強撃だ。

「ごりっ」と奴の腕の骨を折った手応えがする。

だが、それに満足するのではなく身を引く。

そこへ大斧の風圧が迫るが避ける。


今度は、 キオウの槍の連続突きが奴の体勢を崩しに掛かる。

槍先を避け、不用意に開いた胸をこちらが狙う。

更に死角になった背後からマレイナの剣先が一閃する。

全身に自分達の必殺の技が炸裂する。

それでも、赤大食い鬼は引かない。

周囲の大食いは他の冒険者らが排除しつつある。

自分達は赤大食い鬼に集中できる体制へとなっていた。

すると、両腕に大斧を握り締める赤大食い鬼。

そして、ぐるぐるとその場で旋回し始める。

大斧から繰出される風圧を感じる。

魔法ではなく奴の怪力がなせる技だが、これでは近寄る事は難しい。


だが、こちらには魔法もある。

火炎槍が数本、叩き込まれる。

光弾もだ。

ナルルガとフォドの呪文が煌めく。

堪らず、大斧の旋風が止む。

そこへ再び切り掛かる。

肉を切り骨を砕き筋を叩き切る。

流石の奴も大斧を地面に落とした。

「ぐゎらん!」と響く大斧の金属音。

キオウの槍先が喉元を貫き、自分の剣が胸を切り裂く。

「んぐぅん!」

声にならない声が聞こえた。

どっと倒れる赤大食い鬼。

上がる歓声に生き残った鬼達が逃亡を始める。

その先には待機していた冒険者が待ち構えている。


夜明けから約2時間、村の死闘は終った。

切り倒したのは、

赤大食い鬼、1匹。

大食い鬼、50匹。

双角鬼、10匹。

一角鬼、65匹。

全ての鬼を退治し終った。

助け出された村人は10人。

約40人の村人が犠牲となっていた。

冒険者は20名が重傷を負ったが、回復は可能である。

生存者、負傷者を連れてアロの町へと引き返す。

疲れた、今はただただ休みたい。

アロの町でギルドに報告して休憩場所になっている民家に向かい、ばたり寝台に倒れ込んだ。

後の記憶は無い。


目覚めると、既に昼過ぎになっていた。

顔を洗い軽めの朝飯代わりの昼飯を貰うと、再びギルドに向かう。

昨日は簡単な報告だけだったので詳細を報告し、また各小隊からの証言も集める。

今回の作戦は成功と言って良いだろう。

村人の被害者も自分達が攻撃する前にほぼ息絶えていた。

突然の奇襲で、鬼側も生き残りの村人を人質に使う余裕も無かったようだ。

参加した冒険者の被害は、ほぼ赤大食い鬼による物だった。

その赤大食い鬼を倒した自分達は大手柄を立てたと言えよう。

周囲から賞賛された。


村の今後だが、しばらくはあのままにするしかないようだ。

移住する者が集まってから再建する事になるとは思うが、それには数年を要するかもしれない。

まあ、それは自分は関りの無い話だ。

今回の討伐の報酬で自分達は5000シルバーと赤大食い鬼討伐で別に1500シルバーを貰った。

報酬を受取り、また乗合馬車でマルマトの町へと戻った

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