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第45話「魔法の腕試し」

冒険者ギルドは相も変わらずに賑やかだ。

大勢の冒険者が行きかう。

顔見知りの冒険者に挨拶しながら受付に向かう。

今日はシクルという人間族の受付嬢が応対してくれた。

「ああ、サダさん達、丁度良いところに来てくれました。実は・・・」

彼女から依頼を受けて貰えないか頼まれた。


依頼の内容はナマスの町に面倒な魔獣が出現したので討伐して欲しいとの事だ。

その討伐する魔獣は、赤耳小人あかみみこびとという魔法を使う奴らだ。

身長は120cmくらいで、小人族に近い種族ではあるが悪さをするので人間族や他の種族からも魔獣扱いされている。

魔法に長けているので、魔法耐性が無いと倒すのは難しい。

自分達のように全員が魔法学院で初級とはいえ講義を受けているようなパーティーは他にはおらず最適と言えるであろう。

ナマスの町はここから自分の故郷のニナサの村に向かう途中でオルタナの町とは逆方向に進むとある。

少々遠くではあるが、すぐさま向かう事にする。

途中で軽めの休息を取り、3時間程でナマスの町へ着いた。


まずは町で聞き込みである。

ハノガナの街でも簡単な説明を受けてはいるが、ここでも情報集めだ。

最初にナマスの町の冒険者ギルドに顔を出す。

以前も何度か依頼を受けに来ていたが、1年振りくらいだろうか?

ギルドに顔を出すと、受付嬢のトワが対応してくれる。

彼女とも何度も顔を合わせていた。

「お久しぶりです。皆さん」


トワからの説明を聞く。

受付嬢としては若い19歳の人間族の女性だ。

赤耳小人は、村の周辺の森や街道沿いに出没するらしい。

森で作業する町人や、街道を移動する人々がここ数日、襲われるらしい。

死者までは出ていないが、怪我人が幾人も出ており、町への物資の流通も滞りがちなようだ。

町の冒険者が退治しようとしたが、魔法の攻撃が凄まじく失敗したようだ。

普通は冒険者のパーティーに魔術師がいても1人程度で、ここのような小さな町で魔法に対応できる冒険者は少ない。

赤耳小人も単体や少数では脅威でもないが、今回は数が多いようだ。

最低でも十数匹はいるという。

連中が出没するという町の近くの森へ向かう。

この辺りも普段は一角鬼程度しか魔獣は出て来ないはずだが、何か異変でもあるのだろうか?


森に到着する。

人の出入りする所が怪しいと思い、木材の切り出し場所を目指す。

切り倒された木材がそのまま放置された場所に来た。

今のところ、変わった気配は無い。

切り株に腰掛けるなどして小休止していると、何かが木々の間を近付いて来る気配がする。

気配の方角を目を凝らして見てみるが、何も見えない。

だが、近付いて来るような相手は目的の赤耳小人しか思い付かないので戦闘態勢を取る。

ナルルガが魔法の障壁を作り、各自が魔法の攻撃に備える。

不意に森の中の何も無い場所から無数の呪文の火炎矢が撃ち込まれる。

火炎矢の飛んで来る方角をよく見てみると、薄っすらと人型の何かが見える。

連中は魔法の力で森に同化して近付いて来たのだ。


それにしても、火炎矢の数が多い。

一度に10本以上が絶え間なく撃ち出されて来る。

これでは魔法への備えの不充分な冒険者では対処は出来ないだろう。

こちらも火炎矢の向かって来る場所を狙い呪文を次々と放つ。

石塊を風の刃を光弾を火球をと様々な呪文を手あたり次第に叩き付ける。

一瞬、相手も怯むが、今度は火球を連発して来る。

火球が障壁の周囲で炸裂するが、まだ充分に持ち堪えられそうだ。

互いに呪文を放ち合うが、障壁がある分、こちらが有利なようだ。

森の中で力尽きた赤耳小人が幾人も倒れ始める。

そして、飛んで来る呪文の数も頻度も減って来る。

隙を付いて、武器を抜いて切り掛かる。

姿は完全に見えないが、狼狽える姿が薄く見える。

連中は魔法は得意だが、接近戦は苦手なようだ。

近付いてしまうと、ほぼ抵抗を受けずに沈黙させる事ができた。


地面に12匹の赤耳小人が倒れている。

名前の通り、やや尖がった耳が赤い。

皆、似たような胴着を来て革製の靴を履いている。

武器らしい物はナイフと短い杖のような物を持っているだけで、これでは長剣や槍の攻撃に遭えば、ひとたまりもないだろう。

その場で休憩し、探索を続ける。

火炎矢や火球で周囲が燻っていたので消火も忘れずに行う。

後で森に延焼しても面倒だ。


森の中を一回りしても連中が見付からないので、森から街道の方向へと向かう。

その途中で、またもや一団に遭遇する。

今度は小高い岡の近くで待ち伏せされるような形で攻撃を受ける。

だが、魔法の障壁を張れば、連中の呪文も差ほどに恐ろしくはない。

あとは、落ち着いてこちらも呪文を繰り出すだけだ。

今度は、連中の数が少ないようだ。

岡の周辺にちらちらと連中の姿が見え隠れするので、それを狙って呪文を放つ。

全ての呪文が効果的に当りはしないが、少しづつその数を減らして行く。

待ち伏せはされたが、森での遭遇よりも短時間で制圧できた。

赤耳小人の数は7匹。


これで全て片付けたのだろうか?

日も大分傾いて来たので町へと戻る。

ギルドに戻り、連中の切り取った赤耳を提出する。

ほぼ退治したと思うので、これで依頼を終了とする。

報酬は1人250シルバー。

まあ、数は多いが難易度としては高くはない。

今日はナマスの町に一泊し、翌朝に念の為にもう一度森を探索し異常が無いか調べた。

赤耳小人に遭遇する事は無かったので、昼過ぎにハノガナの街へと帰路についた。

今回の依頼で、改めて自分達の魔法の能力が上達した事を実感できた。

ハノガナの街のギルドにも依頼終了の報告を済ませる。


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