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第44話「開墾」

伯爵の城館に向かう。

これで何度目になるだろうか?

伯爵家の家人の大半とも顔も知りになっている。

執務室に入ると、ガラワンもそこにいた。

彼も呼ばれているという事は、何か問題が起きたのだろうか?

今回の呼び出しは魔法学院からの報告についてだった。

ケリナの街からこちらに戻って来て、早1ヵ月近くが経過していた。

例のふだの使い方が判明したらしい。


魔法の呪文は魔法文字を正しく並べて唱える事により発動する。

その並べ方にはある種の法則性があるが、時として属性によって違いがある。

また、同じ属性の魔法であっても系統があるという。

初期講座しか受けていない自分達には、まだレベルが高過ぎて理解が及ばない世界の話だ。

辛うじてナルルガだけが、その話に付いて行っているようだ。

以前、迷宮内で見付けて編集した彼女の魔導書が希少なのは、失われた魔法文字の並びも含まれていた故でもあるそうだ。

札を使う呪文も、そんな失われた知識に含まれる物だったようだ。

その再現に王国随一の魔法の権威でも数ヵ月の時間が必要だったのだ。

札を1つ使う事で遺体を動かす事ができるようになる。

そして、複数の札を使う事で、より遺体を上手く動かし更には生前の能力も引き出す事も可能になるらしい。

つまり、複数を使えば、武芸に優れた人物であったならば武術に長けた動く遺体に、魔法に長けた者であれば魔法の使える遺体になると言うのだ。

ただ、魔法学院で判明したのは札の使い方だけで、それを何者が何を意図して持ち出したのかは解らないそうだ。

それから先を調べるのは行政側のテリトリーだ。


学院では札を無効化する呪文の研究が始められたらしい。

もしも動く遺体を使った事件が起きるならば、それを防ぐ対策を用意しておこうという事だ。

魔法学院での研究、伯爵の領内での探索などについては、王国の中枢にも報告がされているらしい。

一連の動きは不穏な事の前触れとして各地の領主にも報せれている事だろう。

今の段階ではアデレード地方内では、まだ不審な動きの兆候は掴んでいない。

今は警戒を続けるしかないようだ。


話はそれで終らなかった。

伯爵から自分達に新たな仕事の指示が出された。

今回の依頼は、開拓村を新たに立ち上げる為にその候補地を探して欲しいとの事だ。

この開拓村は自領に取り込む事を前提に建設を始める。

将来的には、周辺の開拓村を全て取り込むつもりだが、その前段階としての拠点となる町を作りたいと言う。

まずは、基礎となる村を作り、そこに入植し発展させるのが目的だ。

候補地の査定は伯爵の家人で建築に長けた者が行うが、その護衛役を自分達に頼みたいとの事だ。

今回も断る理由が無いので承諾する。

数日後、伯爵の城館に再び向かい、開拓村開墾の為の調査隊に合流した。


2台の荷馬車に伯爵の家人の10人が分乗し、自分達5人は再び騎乗となり目的地へと向かう。

家人の責任者はマクロンという30代半ばの男だ。

彼は建築や町作りの専門家であり、伯爵領内の各地の町村の建築にも関わっている。

他の家人はマクロンの助手と兵士だ。

目標は開拓村が点在するただ中の中心付近が理想である。

例の廃都市を改修すれば良いように思えるが、あそこを拠点とするのは王国の様々な派閥の意向もあるようで難しいそうだ。

あれだけ規模の大きな都市を新たに獲得した場合、いろいろと揉め事の原因となる事もあるのだ。

まあ、あそこも何代か後の伯爵の子孫が領有する事もあるかもしれないのだが。


国境の外に出て、開拓村の候補になりそうな場所を探す。

森や林、時に草原を一隊は進む。

候補地は少しばかり小高くなった川の傍が理想だ。

起伏が多く土地が狭い場所では町の発展も難しい。

途中野営をしながら、2日程無国籍地域を彷徨い進んだ。

町を作るなど初めての体験だが、理想とする土地がなかなかに見付からない。

だが、その日の昼過ぎに何とか理想的な場所を見付けた。

高さ10m程の高さの台地を見付けた。

少し離れた場所には幅6m程の川も流れている。

川から水を引く事も難しくはないだろうし台地を中心に町を広げれば、それなりの規模に発展させる事も難しくはないだろう。

台地の周りには比較的平坦な土地があり、そこを畑や牧草地にできるかもしれない。

しかも、すぐ近くには他の開拓村も無いので、揉め事にもならないだろう。


その日から台地の周りの測量が始まった。

自分達は台地の周囲を探索する。

適度に近くに林や森もあり、そこで狩猟や木材集めもできそうだ。

3日程して周囲の地図や測量と村の大まかな設計が終った。

マクロンと兵士らは一度、ハノガナの街へ戻り伯爵への報告と開拓団の派遣の準備をする。

残った助手らは基礎の準備を始め、自分達は護衛と周囲の警戒の為に残った。

それから6日後、再びマクロンらが開拓民らを連れてやって来た。

30人程の開拓民はまず臨時のテント村を作り、そこを宿泊場所として村の建設を始める。

その後、街から運んで来た資材で村の中心を建て始める。

そんな作業を時に見守り手伝い、或いは食料調達の為に狩りをして1ヵ月余りが過ぎた。

村の基礎がほぼ完成したので、続いて派遣されて来た兵士らと護衛役を交代し自分達は街へ戻る事になった。

この1ヵ月近く護衛役を務めたが、何の問題も無さそうで安心した。

街へ戻ると伯爵に報告し、報酬を受け取って我が家に戻った。

1ヵ月の報酬は1人30ゴールドになったが、なかなかの稼ぎである。

開拓村から戻り、3日程休養に当てた。

久し振りの我が家を掃除したり、装備の手入れをするには良い期間だ。

休みも充分に取れたので、久し振りに冒険者ギルドに顔を出す事にする。

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― 新着の感想 ―
[一言] 伯爵の毎回の依頼報酬がケチ臭くてしょっぱすぎる気がするわ。0が一桁足りないのでは無いかねぇ……
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