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第43話「地下迷宮に戻るという日常」

伯爵との会合の翌日、久し振りに街で冒険者の依頼を受ける事にしてギルドに向かう。

ギルドに着くと受付嬢のヘルガや幾人もの顔見知りの冒険者らの懐かしい顔に会う。

街を離れていた間の互いの情報交換などをまずはした。

ハノガナの街と言えば例の地下迷宮だが、変わった様子は無いかと聞くと何か雰囲気が変わったという噂を聞いた。

雰囲気の何が変わったのかは言葉にできないが、今までとは何かが違うと幾人かの冒険者らが肌で感じているという。

勘を戻す為にも迷宮に試しに潜って見る事にする。

ついでに、久し振りに能力鑑定を行う。

自分の能力は、


「魔法戦士Lv.18」

「戦士Lv.41」

「魔術師Lv.38」

「農夫Lv.8」

「剣術Lv.31」

「斧術Lv.24」

「棍術Lv.17」

「格闘術Lv.15」

「水魔法Lv.26」

「地魔法Lv.24」

「火魔法Lv.2」

「風魔法Lv.2」

「光魔法Lv.2」

「闇魔法Lv.1」

「水泳Lv.2」

「腕力+9」

「敏捷性+7」

「器用さ+7」

「土質鑑定+6」

「植物鑑定+5」

「植物育成+4」

「魔法感知+3」


となっていた。

自分の戦士レベルも41に達したが、西方の炎風の他のメンバーも同じように達していた。

これで、冒険者ランクはBになり、更に難易度の高い依頼を受ける事もできる。

また、キオウと自分は戦士が剣士という上級職になり、ナルルガの魔術師は魔法使い、マレイナの狩人は従術士、フォドの神官は上位神官となった。

剣士と言っても剣の扱いに特化した職業でもない。

また、従術士は従属させた魔獣を扱い事ができる職業だ。

魔法使い、上級神官は、より高位の魔法が使えるようになる。


迷宮に久し振りに降りて行く。

雰囲気が違うと聞いていたが、そう思えばそう思えるのだがよくは解らない。

まずは手始めに以前、大角鬼とよく遭遇した地域を目指す。

中を進んでみると、確かに変化しているようだ。

以前から遭遇する魔獣は相変わらずなのだが、遭遇する場所が違う。

中層を半ばまで進んでみるとその変化は顕著で、前は中層の奥で遭遇したような魔獣に遭遇し以前は深層に近い所にいたはずの大角鬼とも遭遇した。

今の自分達は大角鬼に差ほどに苦戦はしないが、もっと技量が落ちる冒険者にはこの変化は脅威であろう。

想定していた程の奥深くにまで達せずに今回の目標を達成できた。

この日の成果は、大角鬼15匹、大食い鬼12匹、一角鬼17匹である。

ギルドでの報酬は1人300シルバーになった。

そんな生活がしばらく続き、迷宮での感覚が戻って来たように思えた。

そろそろ深層に向かっても問題は無さそうだ。


迷宮の深層部まで到達するには時間が掛かり過ぎるのが今までの課題であった。

それを何とか短縮できないかと前々から考えてはいた。

それは他の冒険者も同じ事で、以前からその方法が幾つか考えられていた。

中層に短時間に移動できる入口から迷宮へと入り、そこから深層を目指すのが一番楽な方法である。

だが、その手段は何年も前から常識的に知られた経路で、開拓され尽くして実入りが少ない。

そして、それとは違う手段もある。

それは、迷宮内の裂け目から下に降りる方法だ。

迷宮内には所々で縦に空いた裂け目がある。

そこを縄梯子などで降りて、下の階層に向かうのだ。

だが、どんな場所に降りるかは解らない為に危険も大きい。

一度は試してみようという事になり、縄梯子や固定用の金具を持ち込んだ。


候補地として、以前、水竜と戦った地域で水が流れ落ちている縦穴があったのでそこを選ぶ。

そこから下へ降りられないか、まずは調べてみる事に。

裂け目のある場所に着いた。

増水時に大量の水が流れ込んでいた位だから、下の空間も相応に大きいはずであろう。

問題は、どの程度の落差があるかどうかだ。

試しに拾った小石を落としてみるが、小さ過ぎたのかそれとも下が深過ぎるのか微かな音しか聞こえない。

縄梯子は50m程の長さの物を持って来たが、それ以上の距離を降るのは難しいとの判断で選んだ。

まずは縄梯子の端を厳重に金具を打ち込んで固定する。

縄梯子を使っている間に外れても困るし、魔獣などに悪戯されても困る。

少し離れた場所に予備の縄梯子も固定し、1つをマレイナ、もう1つを自分が降る事にした。

光魔法で光の玉を発生させ、足元より少し下を照らしながら不安定な縄梯子を降る。

何に出くわすのか解らないので、恐ろしく感じる。

降り始めて30m程で下の層に達した。

同じく降りて来たマレイナと合流し、周辺を探る。

下の層も天然の洞窟のような場所で、緩やかな下り坂が続いているようだ。

どうやら先が続いていそうだ。

魔獣の気配も今の所は感じられない。


上で待つ仲間に笛を吹いて合図を送る。

初めにナルルガが1人で、続いてキオウとフォドが揃って降りて来た。

降り坂を揃った所で進む。

増水期から随分と日にちも経っているから洞窟が濡れている事も無い。

下り坂は長年の水の流れが削ってできたようだ。

人が歩くのに充分な高さも広さもあるので助かる。


降り続けて数百mは進んだであろうか。

少しばかり開けた場所に出る。

そこは地底湖のようだ。

地底湖は随分と広いようで先はランタンや光魔法の呪文が届かない程に広い。

だが、増水期ではないので水位は下がっているのか、地底湖の端を歩いて進む事はできそうだ。

地底湖の端がまるで通路のようになっている。

そこを歩いて更に先へと進む。

地底湖は風も無いからか静かである。

まだ魔獣や生き物の気配は無い。

この地底湖には何も棲んでいないのか?

地底湖の水面をランタンで照らしてみると、何か小さな物がたまに泳いでいる。

魔獣ではなく迷い混んだ魚の類であろう。

地底湖の畔をしばらく歩き続けていると、別の登り坂を見付けたのでそこを登り始める。

今のところ何も遭遇しないが、ここはハズレなのだろうか?


この登り坂は曲がりくねって続いている。

進んで行くと登りは何時の間にか降り道になっている。

そして、到達したのはまた地底湖であった。

前とは似た地底湖だが、ここの天井は高い。

湖の畔は前と同じく歩けるように干上がってはいる。

こんな大きな地底湖が幾つもあるとは、迷宮の広さがまた実感できる。

畔を歩いていると、たまに水面で「バシャッ!」と何かが水を跳ね上げる音がする。

音の大きさからすると、それなりのサイズのある何かがいるようだ。

音のした方角をランタンで照らすが、水中に隠れたのか何も見えない。

水面には、たださざ波と波紋だけが残っている。

不意に自分達がいる場所から20m程の距離の水面に、ぬっと顔が現れた。

水竜すいりゅうだ。


1匹の水竜が水面から頭を出しているのだ。

水竜も明らかにこちらを認識している。

そいつの口が開いたかと思えば、水塊が吐き出される。

それを左右に別れて避ける。

水中に居座る水竜を相手にするのは厄介だ。

これは魔法で対抗するしかない。

水中では火属性の魔法は効果が無い。

土属性の魔法で岩塊を叩き付ける。

ナルルガは、闇属性の黒い矢を多数撃ち込む。

潜った水竜も堪らず顔を出す。

そこへ火球を撃ち込むナルルガ。

学院での受講で皆の魔法の威力が上がっているのだ。

頭を出しても潜っても魔法の攻撃に晒される相手が気の毒に思える。

数十の呪文を受けた水竜は、やがて動かなくなった。

地底湖の水面に浮いた水竜の体にロープで作った投げ縄を掛けると水際まで苦労して引き寄せる。

討伐の証に鱗を剥ぎ取ると、水中に戻した。


水竜を討伐し、しばらく地底湖の畔で休憩する。

以前は手こずった水竜を簡単に倒せたのは自分達の成長であろう。

最初の水竜を倒したのも随分と前の事になっていた。

思いにふけっていても意味はないので、先の探索を続けよう。

ここに水竜がいたからには、他の魔獣は警戒して寄り付かないのかもしれない。

地底湖の脇に別の通路を見付けたのでそこを進む。

通路と言っても、細長い洞窟が続くだけだ。

水竜も利用していたのか、あいつが通れるくらいの広さはある。

その先は、また地底湖であったが、今までに見た地底湖よりは少しばかり狭い。

その先に通路を見付け登り坂を進むと洞窟が広がった場所に出る。

その洞窟は、今まで進んで来た場所とは何かが違うような気がする。

洞窟の壁に手を触れた時に、ある種の勘が告げる。

試しに壁で採掘してみる。

何かの鉱石が採取できたが、今まで採取した物とは違う。

特殊な金属の原料になりそうな感覚があるが、正体までは解らない。

何度か採掘してみるが、正体不明の鉱石は僅かしか採取はできなかった。

あとは他でもよく見る黒鉄鉱ばかりだ。

それでも、稼ぎの足しにはなるだろう。


採掘の音を聞き付けたのか、何かがこちらに近付いて来る気配がする。

それも数が多い。

ランタンで気配のする方を照らしてみると、人型の何かが10匹程こちらの様子を伺っている。

人に似た形だが、明らかに人間ではない。

ナルルガの火球が数匹を包み込んだが、他の奴は怯みもせずに向かって来る。

武器を構えて立ち向かう。

全身が黒く顔だけが青白く見える今までに出会った事も無い相手だ。

大きさは170cm位あるであろうか?

そいつらが素手で向かって来る。

フォドが、腐食屍鬼ふしょくしきだと叫ぶ。


怪力で動く物ならば何でも喰らう厄介な魔獣だ。

連中は武器を恐れない。

こちらが武器を構え切り付けても怯まず避けもせず向かって来る。

全ての感情を食欲が上回っているような相手だ。

指や腕を切り裂いてもまだ向かって来る。

「うああぁぁぁ」と、言葉にならない声を上げながら近寄って来る様に恐怖を感じる。

動く死体と対峙している時に似た感覚があるが、こいつらの方が動きも早く力も強い。

魔法で焼き尽くすか首を切り落とすまで、こちらに襲い掛かって来る。

押され気味ではあるが、少しづつ数を減らして行く。

やがて、全ての腐食屍鬼を討伐した。

差ほどに手強い相手ではないが、傷付いても怯まずに襲い掛かって来る奴は厄介だ。

ここで休憩していては、また連中と遭遇するかもしれないので、ここらで街へ引き返す事にする。

この辺りの魔獣は手強そうではあるが、余り数は多くは無いのかもしれない。

ギルドに向かい、討伐した魔獣の証と採掘した鉱石を換金した。

見知らぬ鉱石は、白玉鋼しろたまはがねという上質な武器の材料になる物らしい。

白玉鋼は、特に純度が高く武器作りには最適な素材となるようだ。

討伐と採掘の報酬で、1人1500シルバーを貰った。

しばらくは白玉鋼の採掘をあの場所で続けた。

採掘していると腐食屍鬼が寄って来るが、予め魔法の防御陣を貼っておき奴らが近付けないようにしておいて、内側から魔法で退治するようにした。

報酬稼ぎに経験稼ぎと良い稼ぎになった。

そんな事をしばらく続けていると、伯爵からお呼びが掛かった。

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