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第27話「反撃」

 ある時、ギルドに珍しい依頼が出た。

迷宮内で以前、狗毛鬼こうもうおにの集落を冒険者達が壊滅させた事があったが、そこから先の地域に向かった冒険者らの被害が、増えているらしい。

狗毛鬼らが待ち伏せ、集団で襲って来るそうだ。

おそらく、狗毛鬼が対策を講じ始めているのであろう。

冒険者の中には、負傷者だけでなく死者も出たという。

何でも狗毛鬼の中には、何匹か連中の魔術師も混ざっているようだ。

それに、黒狗毛鬼が加わっていれば、脅威になるだろう。


奴らを完全に討伐するまではないが、ここである程度は打撃を与え、数を減らす事にギルドの方針は決まった。

今回は、数組のパーティーで依頼を受け、共同で実行させる事になっている。

以前、旧市街で魔獣の討伐戦を行った時と同じである。

あの地域も気にはなっていたので、自分達「西方せいほう炎風えんぷう」も参加する事にする。

久し振りに狗毛鬼の出没する地域へ向かう。


 前後に別の冒険者のパーティーが迷宮内を進んでいる。

そろそろ、以前に狗毛鬼の集落があった場所だ。

そこからは、各パーティーが別れて別々のルートから先を進む。

ここまでは、狗毛鬼には、まだ遭遇しない。

キオウ「こんな浅い所じゃ、出て来ないか?」

「そうだな。もっと奥の方らしいな。」

フォド「待ち伏せしているのでしょうか?」

やがて、通路がやや広がった場所に出る。

これはもしやと思って、先の様子を伺うと、予想通りに障害物が置かれており、中に狗毛鬼が複数立て籠もっているようだ。


キオウ「いたな。また立て籠もってるな。」

ナルルガ「矢や呪文を使って来るだろうから、呪文を唱えるわ。」

魔法の障壁を展開し、魔法や弓の攻撃に備える。

案の定、障害物の裏側から呪文と矢が飛んで来る。

魔術師は1匹、弩を構えているのは3匹位か?

ナルルガの火炎球が、障害物を燃やす。

驚いたのか、弩の攻撃は止む。

向こうの魔術師は、水魔法を唱え消火しているようだ。

キオウ「やった、奴ら、大慌てだぜ。」

「一気に責めるぞ。」

そこへ自分が、岩塊弾の呪文を唱え障害物ごと連中を攻撃する。

炸裂した岩の破片の大半は障害物に当たるが、一部は連中に当たったようだ。

もう、狗毛鬼は反撃どころではない。

キオウ「よし、切り込め!」

その混乱に、前衛の3人で切り込む。

待ち伏せをされたが、強襲で乗り切った。

ここに立て籠もっていた狗毛鬼は、8匹。

その内の1匹は、やはり魔術師だった。

キオウ「こんなの何カ所もあるのか?」

「かもしれないな。」

マレイナ「あいつらも必死なのね。」

小休止をして更に奥へ向かう。


別の狗毛鬼の一団と遭遇し、それも討伐する。

今度は、洞窟内で出会いがしらであった。

そいつらを倒し、一息ついていると、別のパーティーの冒険者が1人駆け付けて来た。

「ああ、良かった。助けてくれ。」

「何かあったのか?」

「見た事の無い、手強い奴が出て来たんだ。」

キオウ「見た事の無い奴?」

随分と慌てた様子のその冒険者に、付いて走る。

何でも、見た事もないだけでなく、相当に手強い奴で、彼のパーティーが苦戦中のようだ。

付いて行った先に、それはいた。

キオウ「何だ? あいつは?」

マレイナ「白い毛だね。」

フォド「あんなの見た事は確かにありません。新種でしょうか?」

姿は、間違いなく狗毛鬼だ。

けれど外見は他の狗毛鬼と同じだが、やや身長が高く、全身が白い毛に覆われている。


 白狗毛鬼しろこうもうおに

そんな奴がいるのは初耳だ。

そいつは鎖帷子を着込み、片刃の少し湾曲した大型の剣を装備している。

偃月刀か、あれは?

こいつは腕が立つだけでなく、他の狗毛鬼らに短い鳴き声を出し、指示しているようなのだ。

キオウ「どうやら、黒狗毛鬼よりも、厄介そうだな。」

「ああ、腕も数段は上だぞ。奴は。」

助けを求めて来た冒険者の仲間らが、既に2人傷を負って倒れている。

まだ戦える冒険者3人が、必死にその傷付いた仲間を守っている状況だ。

白狗毛鬼は1匹、その他に普通の狗毛鬼も8匹いる。

このパーティーも、狗毛鬼の一団とここで戦い、それが終わって休憩していた所を白狗毛鬼らに襲われたそうだ。

助けを求めて来たパーティーの4人と、自分達の前衛3人で白狗毛鬼達に立ち向かう。

フォドは魔法の加護を自分達に掛けた後に、負傷者の治療に回る。


白狗毛鬼が、向かい合う冒険者と切り合っている。

剣を合せようとした冒険者の長剣を跳ね上げると、白狗毛鬼がその冒険者を一閃する。

強い、そして素早い。

傷付いた冒険者が下がる。

自分は目の前の1匹を切り捨てると、白狗毛鬼に立ち向かった。

白狗毛鬼の偃月刀が迫る。

それを受けようとしたが、奴の刀に弾かれる自分の長剣。

これでは、先程の冒険者の二の舞だ。

白狗毛鬼の続く二撃目を体を捻って避け、こちらも一撃をお見舞いする。

だが、その攻撃は避けられた。

反応の早さに驚きを感じる。

(こいつ、やるな)

こいつは今まで出会ったどんな相手よりも強い。

こんな強い奴は、ハノガナの街の冒険者にもいるのだろうか?

互いに剣撃を繰り出しているつもりだが、向こうの方が手数が多く、何時の間にか防戦一方になっている。


やがて、他の狗毛鬼を倒した冒険者らが応援に来てくれるが、それでも攻めきれない。

逆に、応援で来てくれた冒険者が手傷を負う羽目になる。

そこへ周囲から、狗毛鬼の増援が集まって来る。

折角数を減らしても、また元通りだ。

既に15匹は倒しているが、次々と増援が来て数が変わらない。

白狗毛鬼がいる限りは、あちらの体勢が崩れる事は無い。

むしろ、こちらの方が押されている。

こいつが、迷宮で冒険者を倒した相手だろう。

これだけの腕なら、冒険者が苦戦するのも当たり前だ。

時間が過ぎる毎に、状況は不利になるだけだ。


しばらく白狗毛鬼と戦い続けたが、そう簡単に倒せる相手ではない。

隙が見い出せない上に、この辺りは相手の支配地域で、増援がまだまだ来るだろう。

余力がある内に、撤退するのが得策だ。

幸いな事に、傷付いた冒険者も全てフォドの治療で動けるようにはなっている。

撤退を合図すると、魔法が使える者らが障壁や煙幕を張り後退する。

悔しいが、このまま戦い続けていても、こちらは不利になるばかりなのだ。

途中、連中の襲撃を何度も受けたが、白狗毛鬼は追撃に加わっていなかったので、何とか振り切り街へ戻る事はできた。


 白狗毛鬼の事は、早速ギルドへ報告を入れた。

ヘルガ「白狗毛鬼ですって?」

「ええ、相当に奴は手強いです。奴がいると、他の狗毛鬼の動きも今までと変わってきます。」

キオウ「今回の冒険者らだけでは、相手は難しいですよ。」

その強敵の存在に、ギルドも街も騒然となる。

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