第26話「地下のその先へ」
水竜を討伐した事により、地下迷宮のその先へ進む事も可能になった。
しばらくは、水竜がいた大洞窟の先から、深層部へ向かう事にする。
まずは、ギルドに寄り手頃な依頼は無いか確認してみる。
ついでに、久し振りにボードで、各自の能力を調べてみる。
すると、全員のレベルが31になっていた。
やった、これで冒険者ランクがCに上がった。
難易度は上がるが、報酬の更に良い依頼の受注がこれで可能に。
ちなみに、自分の今の能力はこうなっている。
「戦士Lv.31」
「魔術師Lv.24」
「農夫Lv.7」
「剣術Lv.25」
「斧術Lv.23」
「棍術Lv.17」
「格闘術Lv.8」
「水魔法Lv.20」
「地魔法Lv.17」
「腕力+9」
「敏捷性+5」
「器用さ+4」
「土質鑑定+5」
「植物鑑定+4」
「植物育成+3」
それと、今の自分の装備も書いておこう。
主武器:長剣+2
副武器:ナイフ
防具:鉄兜、鎖鎧+胸甲、金属籠手、革長靴
左の籠手には更に金属の装甲を付け盾替わりに使っている。
更に、膝と肘には金属製の防具を付けている。
何時の間にか剣術のレベルが斧術よりも上がっている。
そう言えば、最近は斧や棍は使わなくなっていたな。
自分達の成長を確認すると、自信が沸いて来る。
さあ、迷宮へ向かうぞ!
まずは、大空洞を目指す。
水竜の死骸を確認してみる。
マレイナ「水竜、何かが食べてるね。」
「骨は、まだあるけど、肉は、ほぼ残ってないな。」
キオウ「水竜も、死ねば、こんな物なんだな。」
フォド「それが迷宮です。地上でも同じですが。」
それは、迷宮で命を失った冒険者もそうなのだ。
ここで命を落とし、仲間が街へ連れ戻せない時には何かの糧となるのだ。
大洞窟の奥へと向かうと、行く手を塞ぐように何かが立ち塞がる。
鰐人だ。
水竜の遺骸を食べに行くつもりなのかもしれない。
6匹の鰐人が、襲い掛かって来た。
連中も手強いが、以前ほどの圧を感じない。
10分もしない間に連中を片付けた。
更に奥へと進む。
進んで行くと、上の層から大量の水が落ちて来る場所に達する。
マレイナ「うわ~っ、滝になってる。」
キオウ「凄い水の量だな。また、水没しなきゃいいけどな。」
落ちて来た水が溜り、そして更に低い場所へと流れて行っているようだ。
その流れの先を辿って行くと、下り斜面になっているので、その先を行く。
マレイナ「まるで、ここは川だね。」
やがて、流れは洞窟の割れ目に落ち込み消えて行った。
この辺りが、大洞窟の境目なのかもしれない。
少し進むと、乾いた場所に出た。
今までとは、違う地域に来たのであろう。
洞窟の横に枝道になっている場所が見付かったので、そこに入る。
狭くなってはいるが、幅は1mはあり、人が通る分には問題はない。
そこを過ぎると、幅がまた3m程に広がる。
その先は、真っすぐではなく、左右にぐねぐねと曲がっている道だ。
やがて到達したのは、また広い空洞であった。
水竜と戦った大空洞程ではないが、そこそこ広い空間に出た。
こんな場所が幾つもあるのだから、この地下迷宮は、全体でどれ位の広さがあるのだろうか?
新たに入り込んだ空洞を探っていると、前から何かが向かって来る。
人型の影が浮かび上がった。
キオウ「獣悪鬼だな。数は3匹か?」
マレイナ「横からも来たよ。」
空洞の横側からも、2匹の獣悪鬼が近付いて来る。
5匹の獣悪鬼がこちらを囲むように立っている。
「避けようはないようだな。」
皆で、武器を構えた。
魔法の先制攻撃に続いて、接近戦を挑む。
数は同じだが、前衛が少ない分、自分達がやや不利かもしれない。
ここは、フォドも余り得意ではないが、鎚鉾を振るって応戦する。
自分はナルルガを庇いながら、2匹の獣悪鬼を引き受ける。
誰かが1匹倒して、手空きになる事を祈るばかりだ。
こちらの腕が上がったとは言え、まだ獣悪鬼を圧倒する程ではない。
ようやく、互角の戦いができるようになった程度かもしれない。
2匹の獣悪鬼と何とか戦っていると、火炎鞭がその1匹を捉え巻き付いた。
火炎鞭を食らった獣悪鬼はもがいて逃れようとしていたが、やがて膝から崩れ落ちた。
すかさず、その首を長剣で一閃する。
さて、後は1対1だ。
だが、先の1匹に止めを刺した瞬間に、残った1匹からの強烈な一撃を食らう。
「痛っ!」
左腕に打撃を食らうが、そこは手甲の上に鉄板を重ねてあるから大丈夫だ。
盾を持たない分、そこは充分に強化してある。
だが、痛いものは痛い。
「ったく、痛かったな!」
腹立ち紛れに、そいつと刃を交わす。
ナルルガは、フォドのカバーに回って行った。
向かい合う獣悪鬼と切り合いを続ける。
負ける気はしないが、まだ相手からの圧を感じる。
その頃、キオウが対峙する獣悪鬼を突き伏せ、そしてフォドのカバーに回って行く。
それを視線の端に捉えながら、自分も戦い続ける。
数的に、徐々にこちらが有利になって来るのが解かると、余裕が出て来る。
更には、手の空いたフォドの魔法の加護が加わる。
こうなれば、負ける訳はない。
切り合いが始まって10分を過ぎた頃、戦闘は終った。
キオウ「こいつら、強ええな。」
「ああ、だけど、段々と互角に戦えるようになってる。」
小休止して現在いる場所を探る。
そこは、円形に広がった洞窟である。
直径は20m位はあるか。
そこから、自分達が通って来たような太さの枝道が幾つかある。
先程の獣悪鬼らは、この枝道からばらけて出て来たので囲まれたようだ。
という事は、この先に獣悪鬼が暮らす場所があるのかもしれない。
連中の集団に見付かるのは厄介だが、場所を探っておいた方が、今後の活動にも役に立つであろう。
枝分かれした道を1つ選らんで進む。
進んだ先は、また別の広がりに出た。
マレイナ「また来るよ。今度は3匹だよ。」
そこでまた、獣悪鬼と遭遇する。
獣悪鬼は、一角鬼や狗毛鬼のような大人数では行動しないのだろうか?
その方が、こちらには都合が良いのだが。
前衛の3人で、それぞれ立ち向かう。
自分と向き合っている獣悪鬼が持つ得物は斧だ。
何だか、以前の自分と対峙しているように思える。
斧は剣よりも手数は少ないが、一撃の強さが勝る。
この獣悪鬼も、斧の扱いに長けているようだ。
長剣を傷付けられないように扱い、体の動きで奴の攻撃を避ける。
大きく振りかぶった時が、こちらの狙い目だ。
長剣で一撃しては避け、少しづつダメージを重ねて行く。
やがて相手の体力が衰え始めたので、そこへ止めの一撃を加える。
仲間らも戦闘を終える。
先を進む。
その後も幾つかの空洞に出たが、獣悪鬼の集落らしき所は見付からなかった。
それは、まだ更に奥になるのだろうか?
「ここらも、まだまだ広そうだな。」
キオウ「ああ、そう簡単には、全て見て回れないらしいな。」
それからも、獣悪鬼の小集団に幾度か遭遇し、更に討伐数を稼ぐ。
「今日は、そろそろ戻るか?」
キオウ「ああ、潮時だな。」
ナルルガ「怪我をしない内に帰りましょう。」
キオウ「何か棘のある言い方じゃないか?」
ナルルガ「そう? 気のせいじゃないの?」
ギルドで魔獣10匹の討伐依頼を受けていたので、それで各自5ゴールド、追加の討伐で1人5ゴールドを受け取る。
その後も幾度か獣悪鬼の集落を探しつつ、その地域の捜索を続ける。
だが、以前に見付けた狗毛鬼のような集落は見付からない。
マレイナ「狗毛鬼とは、生活が違うのかな?」
フォド「そうかもしれませんし、巧みに隠してあるのかもしれませんね。」
ある空洞で、簡単な仕切りのある場所があり、そこに連中が寝泊まりしているような場所を見付けた。
寝床と調理をする為の竈、それに武器や道具などが置いてある。
これが連中の集落なのか、それとも仮の休憩場所なのだろうか?
子供やメスらしき個体を見た事が無いが、奴らの集落はもっと奥や隠された場所にあるのかもしれない。