第25話「水の主」
迷宮の大空洞に居座っている水竜を倒す為に、マグルのパーティーに協力を頼む。
マグル「水竜か。いいぜ、俺も戦った事はないが、力を貸すぜ。」
「ありがとう。よろしく頼むよ。」
キオウ「奴を倒して、その先を目指すぜ。」
水竜討伐の依頼もあるので、ギルドで受注して一緒に挑む事にする。
装備や回復薬なども備えて、あの大空洞に向かう。
マグルのパーティーと合せて、今回は9人組で戦う。
水竜が君臨する、あの水辺の大空洞に至る。
水は更に引いていた。
所々に残った水溜まりが残る程度なので、これならこちらも戦い易い。
水飛沫を上げながら、空洞内を進んで行く。
しばらくすると、前方に大きな影が浮かび上がる。
(いた、奴だ。水竜だ。)
まだ、ここに居てくれた。
頭を下げ何かを水竜が食べている。
その口の間から見えたのは、鰐人の体の一部だった。
水竜は、こちらが近付いても、食事を止めわしない。
ジロリと一瞬目を向けて来たが、自分達など何の脅威も無いのだろうか?
それよりも、自分の食事に夢中のようである。
(嘗められたもんだ。)
食事中の奴を観察してみる。
頭から尾の先まで約6m位か。
(こうして近くで見ると、本当にデカイな。)
水竜としても、やや大きい部類に入るだろう。
大型のトカゲで、体の所々にヒレ状の突起があるのは、水中での活動する種類である事を物語っている。
こいつを自分達で倒せるのか、不安になって来る。
(何を今更、その為の準備をして来ただろう。)
奴が食事をしている間に、こちらは体勢を整える。
神官の様々な魔法の加護を付与して貰うと、陣形を整え武器を構える。
魔術師が強力な呪文を唱え、それが戦闘開始の合図となる。
ナルルガの大炎球が空中に出現し、水竜の頭上に移動する。
大炎球は炸裂し、下にいた水竜を飲み込む。
水竜は叫び声を上げ、やっと食事を中断する。
だが、あの強力な火属性の呪文を受けても、致命傷ではないようだ。
巨体に似合わぬ速度で、体をくねらせてこちらへ向かって来る。
水竜の体当たりを避け、横腹に一撃を加える。
移動速度強化の魔法を掛けているので、こちらの動きも素早い。
更には、魔法で武器に火属性攻撃力も付与されているので、水竜へのダメージ効果も期待できるはずだ。
前衛の誰かを襲われそうになったら、他の前衛が切り付ける。
大型の相手には、魔法の攻撃も可能だ。
武器で切り付け、魔法の呪文が射貫く。
水竜の体力も凄い。
決して狭くはない大空洞の中をどたどた走り回り、こちらを狙って突っ込んで来る。
体当たりや前脚の爪による攻撃だけでなく、噛み付こうと大きく口を開ける。
更には、口から水塊を吐き出す事もある。
水属性魔法の水塊と同じような物であろうが、あちらの吐き出す量の方が多い。
当たると厄介な攻撃だ。
少し思い付いた事があるので、試してみる。
まずは魔法で、岩塊を生み出す。
そして、水竜の口へとそれを放り込む。
続いて、その岩塊を体内で炸裂させる。
岩塊弾を水竜の体内で破裂させたのだ。
流石に、体内への攻撃は効いたようだ。
「どうだ。こいつの味は?」
今度はナルルガが、火球を口の中に叩き込むと体内で炸裂させる。
これも利いた。
水竜が体を大きく痙攣させた。
だが、それでも水竜の動きが止まらない。
幾分、速度は落ちているが、まだ執拗に自分達を追って来る。
ただ、水塊を吐き出す事は出来なくなったようだ。
それに口の中に魔法を叩き込まれる事を嫌ってか、噛み付きの攻撃をして来ない。
しかし、巨体と爪の攻撃は、まだまだ脅威である。
油断せずに、奴を追い込んで行く。
魔法の加護の効果が切れたので、再度かけ直して貰う。
既に、20分は戦い続けているだろうか?
皆も疲労が溜まり始めているであろう。
水竜の体力は、桁違いのようで、明らかな衰えは見えない。
マグル「こいつ、体力あり過ぎだろう。」
キオウ「こっちは、もうへとへとだぜ。」
このまま長引かせるのは下策だ。
交代で体力回復もしているのだが、それが何時までも続く訳ではない。
ならば、水竜の体力を奪うのも良いだろう。
魔法で体力消費の効果のある減気矢を撃ち込んで貰う。
やがて水竜の脚が止まる。
口を開き、半ば焦げて傷付いた舌を伸ばして喘いでいる。
だらだらと、流れ落ちる水竜の唾液。
そこを一気に攻め立てる。
魔法と武器の連続攻撃、惜しまず全力で叩き込む。
水竜も反撃して来るが、流石に体力を消耗したようで動きが鈍い。
強打一閃、必殺の剣技を叩き込む。
水竜の体をすっぱりと切り裂く。
それでも、もがき抵抗を続ける水竜。
もう一息で止めを刺せるだろう。
と思っているのだが、戦闘は更に15分は続く。
そしてついに、水竜が体を硬直させたかと思うと倒れ込んだ。
油断せずに最後の攻撃をするが、反応は無い。
その活動は、終ったようだ。
「やった、やったぞ。」
キオウ「ああ、ついに水竜を。俺達が。」
マグル「はは、本当に体力あったな、こいつは。」
宿敵の水竜を皆で倒した。
疲労感が半端ではない。
もう少し長引けば、やられていたのは自分達の方であろう。
体力も魔力も、もう限界に近い。
フォドらも、もう回復魔法も使えなくなっていた。
フォド「今回は、もう限界です。すみません。」
「いや、みんなそうさ。」
残った回復薬で、体力と傷を癒すと、水竜の体を解体する。
爪と牙、鱗を幾つか切り取る。
洞窟の乾いた場所を見付けて休憩してから、街へと戻る。
水竜の討伐に、ギルドは少しばかり沸いた。
こんな大物の討伐も、滅多には無い事なのだ。
討伐報酬は、1人6ゴールド。
参加人数が多いので、大物の割には分け前はやや少ない。
でも、そんな事よりも、強敵を倒せた事の方が嬉しい。
この後は、宴だ。
今日は、飲んで喰って騒ぐぞ。