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第229話「ポイの帰還」

 ポイが魔界から、約4ヵ月振りに戻って来た。

それも、ハノガナの迷宮のまだ冒険者らが未踏である深層部の確認もされていない、魔界のつながりから。

ポイは、そこから第二拠点まで移動して来たそうだ。

地龍どころか飛龍とも遭遇しながら。

サダ達も、ポイが嘘を吐くとは思えない。

だが、ポイの力が、しばらく見ていない間に数倍も成長しているであろう事を想像するのみである。

ポイは、以前の大魔導師の名乗りから、魔法使いに変えていた。

その名乗りは、魔界で魔王に貰ったと言っている。


ポイの見た目は変わらない。

ただ、その身に付けている物が、魔界に行く前とかなり変わっているであろう事以外には。

今のポイは、濃紺の装備で身を包んでいた。

つば付きの尖がり帽子、マント、腹帯、どれもが魔力を秘めた装備らしい。

それに、首輪に腕輪など、これも魔界で手に入れた魔法具のようだ。

それに、彼のサイズに合った、宝玉が嵌められた素材も見た事の無い杖、これも相当な魔力を秘めているであろう。


更には、魔界での案内役であった魔族ブランを連れていた。

彼女は、サダらが天空の神殿で見た時とは、随分と姿が変わっている。

あの時は、身長も120cm程度で、人に似た顔立ちではあったが、全身が黒い魔族の特徴を大きく備えていた。

だが、今では、身長は160cm程あり、その肌も褐色で頭には銀髪が生えている。

体付きも20歳位の美しい女性に見える。

その身は、やや露出も多いが、青い服が胸周りと腰回りを隠している。

見た目は、人間のように見えるが、背中からは体に比して小型な羽が生えているそうだが、普段は服の中に隠しているそうだ。

ブランも、普通に共通語を話す。

そして、彼女は、自分がポイの眷族だと言う。

だが、その口調はため口なのだが、ポイも気にはしていない。

ポイ自身が、ため口で話す事も多いのだが。


 不思議なコンビを引き連れて、サダらはハノガナの街に帰還した。

魔族のブランを街に入れるのには躊躇もあったが、ポイが問題無いと言う。

ギルドに一度寄ってから、アグラム伯爵の城館へ全員で移動した。

珍客に、伯爵も素早く対応してくれた。

サダらは、伯爵の執務室に招き入れられた。


執務室で、ポイとブランを加えたサダらと対面する伯爵。

アグラム「ポイ、よく無事に戻って来たな。そして、半妖精の次は、魔族をここに連れて来るとはな。もう、何が来ても驚いてはいられないな」

「うん、伯爵も久し振りだね。僕は、戻って来たよ」

伯爵は、ポイとブランから、魔界や魔族の事を聞いていた。

その内容は、サダらも初めて聞く事も多い。


アグラム「そうか、それは大変に貴重な体験であったな。もしよろしければ、その体験などを記録して頂けるとありがたい。もし必要ならば、助手も付ける」

「うん、いいよ。それと、魔界で幾つか魔導書を手に入れて来たんだ。それは、もう僕は覚えちゃったから、伯爵にあげるよ。それ以外にも、僕が覚えてきた魔法の呪文もあるけど、それもまとめようか?」

アグラム「それは、是非、お願いしたい。魔法学園からも人を寄越して貰おう。全面的に協力するので、よろしく頼む。それに、また、この屋敷の部屋も自由に使ってくれ。そちらのブランも部屋を用意しよう」

ブラン「ありがとう。でも、私はポイと一緒がいい」

アグラム「ならば、そうしよう。君も必要な物があれば言ってくれ」

「うん、伯爵ありがとうね。僕は、そんなに体が大きくないから、部屋も狭くてもいい。ブランが一緒なら、丁度いいかも」


 それから、ポイは魔界での事を書物にまとめ始めた。

また、ポイの提供した魔導書は、魔法学園に送られた。

だが、魔法学園でも、その魔導書の解析はそう簡単には出来ない。

その指導もポイが行い、更には魔族らの言語も彼が教えた。

魔導書などの写本も作られ、ケリナ魔法学院や、その他の関係部署にも送られた。

魔法学院からは、一度、ポイに来て欲しいと嘆願もあった。

ただ、まだポイも忙しいので、それは少し先の事になりそうだ。


ポイが魔界から持って来てから、1ヵ月強があっという間に過ぎた。

サダらは、ポイとは伯爵の城館で顔を合わせる程度だ。

城館に住む、キオウやイルネも、ほぼポイとは顔を合わせないそうだ。

それだけ忙しくポイは働いていた。

そのような事は、ポイはマメである。

不満を言う事無く、記録を書き続け、また魔術師らに魔導書や魔族語を解説し教える。

魔界から戻って来て、しかも、未知の魔法に関する事なども熟知している。

そんな人物が、過去にもほぼいないのだ。

ポイが齎した膨大な知識は、この世界に様々な益も運んで来るであろう。


しかし、サダらは、そんなポイと少し距離が出来た事に寂しさも感じていた。

それでも、カディンは、活動の合間にポイをいろいろと手伝っていた。

ポイから呪文を習うのも、彼女経由でサダ達は学んでいた。

カディン「まあ、私もポイの一応は助手かな?」

ポイに忙しさの不満が無いのかサダらは聞いてみたが、案外、こういう事は好きなんだそうだ。

それに、伯爵は、ポイへの食事の提供も怠らない。

故に、ポイに気力が萎える事も無くなっていた。

そんな忙しいポイに、新たな助手が現れた。


 ケリナの街から、ナルルガがやって来た。

彼女は、魔法学院で、上級、特級、星級の講義を終えて、既に大魔導師の資格を得ていた。

今回、ハノガナの街に戻って来たのは、ポイの助手を務める為である。

ナルルガ「みんな、久し振り。そして、ポイ、初めましてだね。やっと会えて嬉しいよ」

「うん、よろしくね、ナルルガ。噂はキオウからよく聞いてるよ」

それに、ナルルガは、魔法学院で学ぶフェムネらも連れて来ていた。

彼らも、助手をやるそうだ。

「ああ、ポイに会えて、僕ら、嬉しい」

「ポイだ、ポイだ。あの大魔導師だ」

「それな、僕は、今は魔法使いって名乗っているからね」

「ええっ! 魔法使いポイだ。そいつは凄いや」


更には、アデト魔法学園からも、ポイの助手が派遣されている。

デルニーサ、彼は32歳。人間族の魔術師だ。

彼は、ポイ専属の魔術師に任命されていた。

彼を含めて、ナルルガにフェムネら、そして、たまにカディンがポイの助手をしていた。

また、ブランも様々な援助をしていた。

ブランに魔界や魔法の事を明かして良いのか、サダらは聞いてみた事があった。

すると、

「元々、魔法は魔族が魔界からこの世界に伝えた。それを今もやっているに過ぎない。だから、何の問題もない」

だそうだ。

案外、魔族が寛容なのか、それともブランはポイの眷族だからであろうか?


 放置されている状態のサダらだが、ポイから教えられた魔法が、迷宮の探索にも役立っていた。

呪文の強化は、攻撃呪文に限った事ではない。

防御呪文や補助呪文、強化呪文も強力になっていた。

それを使えば、苦戦していた新たな魔獣や魔族に充分に抵抗出来るのだ。

そのお陰で、また迷宮の奥底へ数歩踏み入れられるようになっていた。


サダらも、それらの呪文を独占している訳ではない。

親しい冒険者らにも教えていたし、魔法学園経由で、新たな魔導書も世に出回り始めていた。

その動きが、ラッカムラン王国内で、じわりじわりと広がっていた。

ポイの魔界訪問が切っ掛けに、新たな時代の扉が開いたのかもしれない。

やがて、2ヵ月程の作業で、ポイの仕事は終わったようだ。

ポイの書き出した物は、既に幾つか複製も作られていた。

作業が終了した事で、ポイがケリナに移動する事になった。

彼に、ナルルガやデルニーサも一緒に付いて行く。

勿論、ブランもだ。

ポイとは、またサダらは別れる事になるが、ケリナは魔界よりも遥かに近い場所である。


ナルルガは、ロバのケッティに跨った。

フェムネらは、小脱兎鳥を呼び出す。

デルニーサは、馬を借りて来ている。

ナルルガ「魔法使い様は、小脱兎鳥は呼ばないの? それに、ブランは乗り物はどうするの?」

「心配ないさ」

ポイとブランが口笛を吹いた。

すると、空間が歪み、異形の生き物が2匹現れた。

これは、魔界の飛行型の生物のリュファだ。

「これが、僕らの乗り物さ」


ポイら一行が、ハノガナの街を去って行く。

それをサダらは見送った。

カディン「また、行っちゃったね」

キオウ「ああ、まただな」

サダ達は、その姿が見えなくなるまで、街の外で眺めていた。

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