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第214話「魔法学院への依頼」

 黄昏の荒れ野から戻って来たサダ達。

ハノガナの街に帰るのではなく、ケリナの街に来ていた。

荒れ野で魔族から受け取った書物などを、ケリナ魔法学院で解析して貰う為であった。

街に着いた翌日、ナルルガやフェムネと共に、サダらは魔法学院へと向かった。

荒れ野で入手した物に関しては、ライドリアンの町に着いた段階で、学院にも文を送っておいた。

それが、ちゃんと受理されていると良いのだが。


学院に着くと、ナルルガらとは別れるサダ。

ナルルガ「どうなったのか、後で屋敷で話を聞かせて頂戴」

そう言うと、ナルルガは講義を受けに行った。

サダらは、学院の受付から、タバル教授の部屋へと案内された。

その部屋を訪れると、懐かしいタバル教授がいた。

「ええ、諸君らも久し振りであるな。本日は、ええ、また珍しい物を入手して来たとか」

教授に、魔族から受け取った書物を渡した。

それを手にすると、教授は書物を捲り始めた。


数分、書物を眺めていた教授が顔を上げ、話し始めた。

「ええ、正直、何が書いてあるのか、半分も解らん。ただ、どうやら、魔法の原点とも言われる事柄が幾つも書かれているようである。ええ、これからこれを解析させて頂き、詳細は後日、ハノガナの街の方へも報せよう。大変貴重な物であると、ええ、思われるのである。今回も、物凄い物を手にして来て、ええ、頂いた事に間違いはない」

書物の解析を、学院にお願いする事となった。


それから、荒れ野で入手して来た鉱石については、別の人物を紹介してくれた。

その人物に会いに行く為に、サダらは、別の場所へと移動した。

タバル教授の部屋のあった建物とは、別棟の建物に移動した。

そこの教えられた部屋の扉をサダらは叩いた。

「どうぞ」

部屋の中から、男性の声が聞こえたので、サダらはその中に入った。


「ようこそ。今日は、どんな案件かね?」

色黒の中年の男性が出迎えた。

サダは挨拶をすると、荒れ野で手にして来た紫色の鉱石を差し出した。

アグザと名乗ったその中年の男性は、様々な魔道具に関する教授だそうだ。

アグザは、鉱石を手にして少し眺めると、説明を始めた。

「これは、紫光石しこうせきだね。魔鉱石の一種だよ。魔鉱石が、他の鉱石と違う所は、その中に魔力を溜め込み易い性質を持つ事なんだ」


アグザの話では、魔道具や魔法の込められた武器を作る時に、様々な魔鉱石を使うそうである。

それぞれの魔鉱石にも、様々な特性があったり、魔力を溜め込める量も違う。

それはまた、その魔鉱石の質によっても変化する。

紫光石は、他の魔鉱石よりも、魔力を溜め込む量が多いので、上質な魔道具などの材料になるそうだ。

「紫光石の産地は幾つかあるが、なかなかに見付かる物でもないよ。君達が持ち帰って来ただけの量でも、何個か魔道具や武器が作れるだろうね」

アグザには、紫光石をどのように入手したのか聞かれたので、サダは語った。

「そうか、荒れ野で手に入ったのか。実は、我が国でも、国内で僅かに採れる程度で、後は他国から輸入している。けれど、あの荒れ野から持ち込まれる事は、今まで無かった。これは、新たな産地として有望な場所を見付けたのかもしれない」

そう言えば、この鉱石を掘り出せた場所は、ラッカムラン王国寄りの地域ではなかった。

もしかして、荒れ野でも王国から離れた場所でしか見付からない物なのかもしれない。

「荒れ野で紫光石を求めるとなると、それは政治の話になるな。君達の領主に相談してみると良いであろう。それと、これの加工はハノガナの街でも出来ると思うので、持ち帰ると良い」

紫光石をアグザは返してくれた。


続いて、サダは牛頭巨人が使っていた鎚鉾を教授に見せた。

「ほう、なかなかに魔力の籠った武器のようだね。それにしても、これだけ大きいと扱える人間は、ほとんどいないだろうね」

鎚鉾は、数日を掛けて調査してくれると言う事なので、教授に預けた。

「2,3日もすれば、解明出来ると思うので、少し待っていてくれ」

サダらは、アグザに別れを告げた。


学院を出ると、時間は昼過ぎであった。

キオウ「さて、中途半端な時間だけど、どうする?」

マレイナ「お腹空いたから、何か食べに行こうよ」

カディン「それがいいわ」

イルネ「ここも美味しい食べ物が沢山あるから。それに学生が多いから量も凄いわ」

ディーナ「誰かさんがいたら、大はしゃぎでしょうよ」

「そうだな、ポイは元気でやってるのか?」

サダらは、食事の出来る店へと向かった。


 2日程、サダらは、ユドロ侯爵の別宅で連絡を待っていた。

何もする事も無いので、昼間は街に出掛けたりしていた。

サダは、この機会にマガセに会いに行ってみた。

薬草園も菜園も、また発展しているようである。

耕作面積も広がり、携わる人も増えているそうだ。

「僅かながら、収入になってますよ」

貧民街の助けになっているのであれば、嬉しい事である。


そして、アグザからの連絡を受けたので、サダらは再び学院へと向かった。

アグザの部屋に入ると、鎚鉾の説明が始まった。

「いや、これは、なかなかの物だったよ。魔力無効化や地震発生の魔法が掛っている。また、威力や使う者の腕力を上げる効果も加わっていたね。思ったより、腕力が無くても使いこなせる武器かもしれないよ。ただ、大き過ぎるから、それは難しいと思うけどね」

このまま使うのは難しいかもしれないが、価値は高そうである。

ちょっとしたお宝には違いはない。

これも、アグラム伯爵へ渡せば、何かしらに役立ててくれる事であろう。

アグザ教授から、鎚鉾を返して貰った。


学院に来たついでに、サダらはタバル教授にも会いに行った。

しばらく待たされたが、教授は会ってくれた。

「ええ、まだあの本の解析は出来てはいないがね」

それでも、少しばかり説明してくれた。

「ええ、諸君らは、魔族から魔法が連中から伝えられたと聞いたそうだが、それは間違いない事のようだ」

教授の話では、この世界に魔族から魔法が齎されたのは、今から2千年は前の事だとか。

「ええ、最初、それは妖精族らに教えられたそうだな」

その事は、フォドも知っていた。

フォド「何でも、元から我々、妖精は精霊と語り合う事が出来ましたから、魔法にも相性が良かったみたいですね」

「ええ、そのようだな。そして、他の種族にも魔法が広まったのは、ええ、今から千年程前の事らしい。その辺りから、人間族も勢力を拡大させたようだ。我々人間の歴史は、この千年に大きく発展した。それは、魔法の力も大きいのであろう」


思ったよりも、人間の歴史は新しいのかもしれない。

魔法を知らない時代の人間らは、それ程に目立った種族でもなかったようだ。

だが、千年と言っても、人間の寿命からすれば、長い時間である。

これからも、魔法や様々な技術で人間は繁栄して行くのかもしれない。

教授からは、書物の解析は、まだまだ掛ると言われた。

「ええ、数ヵ月は、考えて欲しい。また、読み方も意味も解らぬ文字まで、見付かったりしておるからな。解析には、ええ、ナルルガ君も関わっておるよ」

まだまだ、時間は掛るようである。

ならば、これでハノガナの街へ帰っても良いだろう。

教授にもそう伝え、学院からサダらは帰って来た。


明日、サダらはハノガナの街に帰る事とした。

ユドロ侯爵の別邸にいると、講義の終わったナルルガらが帰って来た。

ナルルガ「そう、明日帰るのね。もう少し話を聞きたかったけど。また、文で教えてよ」

キオウ「俺は、もう少し、ここに残ってもいいけどな」

ナルルガ「あんたは、さっさと帰りなさい」

カディン「そう言えば、あのモリタさんと話した時に、キオウからナルルガさんに言う事があると聞いたのですが」

ナルルガ「モリタ? サダの中にいた女の人だったわよね? あんた、何かあるの?」

キオウ「いや、何もねぇ~よ。そのモリタって人の勘違いなんじゃねぇの?」

カディン「そう、勘違いなの? へぇ~」

キオウ「何だよ、いいだろ」

カディン「全く、兄さんもそうだけど、キオウも、こっち関係はダメだよね」

「何で、自分まで」

カディン「兄さんも、ちゃんと言うべきだと思うけど、姉さんにさ?」

マレイナ「何かあるの?」

「いや、別に無いさ」

カディン「全く、うちの男連中はこれだから。一番決断力があったのは、ポイじゃないの?」


「大魔術師ポイの話、僕ら聞きたい」

フェムネがポイの話を強請って来た。

カディン「やっぱり、ポイって、あなた達の間では有名なの?」

「そりゃそうさ。一番の魔法の使い手さ。それが、ある日、いなくなっちゃったんだ。それが、今も生きてたなんて驚きさ」

彼等の中では、ポイは有名フェムネのようだ。

「ポイの名前を知らない者なんていないさ」

「今度は、魔界に行ったんだね。また、凄い事をポイはしてるよね」

ポイの話だけで、長い物語が出来るかもしれない。

カディンはフェムネらに、ポイの話をいろいろと聞かせていた。

カディン「それで、あいつ、いつも食べてばかりなんだよ。背中に乗せてる小脱兎鳥も段々と重そうにしてたから」

「流石は、ポイだ。食べるは正義だよ」

ディーナ「フェムネの価値観からすると、ポイの行動は正しかったみたいね」


 翌朝、サダらは、ハノガナの街に向かって出立した。

ナルルガとは、講義もあるので屋敷で別れる事に。

ナルルガ「じゃあ、またね、みんな」

キオウ「ああ、また来るからな」

ナルルガ「やっぱり、何か言いたい事あるの? 何なのよ」

キオウ「い、いや、それはやっぱり、仲間だから、離れ離れは寂しいなって思うだけさ」

ナルルガ「そうだったの? なら、これ、あんたにあげるから」

そう言うと、馬上のキオウにナルルガは自分の手に嵌めていた腕輪を渡した。

ナルルガ「これ、防御力上げと回復効果があるから。怪我とかしないように注意しなさいよ」

キオウ「あ、ああ、ありがとな」

ナルルガから渡された腕輪をキオウは自分の腕に嵌めた。

キオウ「これ、大事にするから」

ナルルガ「大事にするのは、あんたの体の方だからね。じゃあ、みんな、またね」

サダらは、ナルルガとフェムネらに別れを告げた。


また、ナルルガが、ケリナの街が遠のいて行く。

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