表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
211/232

第211話「旅立ったポイ」

 ポイが魔界へと旅立って行った。

サダらは、天空に浮かぶ神殿に残っている。

魔界がどんな場所なのか、サダらには想像も出来ない。

キオウ「なあ、向こうは安全なんだろうな?」

キオウが紫の魔人に詰め寄ってた。

それに、魔人は答えた。


「君達のこの世界も、安全なのかな? それは、どこでも同じであろう。程度の差があるが、我らの世界もそなたらの世界も、強き者が生き残る。それは、世界の理でもある。だが、安心するが良い。あの小さき者は、そう簡単に破れるような事はないであろう」

マレイナ「そうだね。ポイは強いから」

「あの者が持つ魔力、相当な物と見た。でなければ、魔族に名など与えられるはずもない」

カディン「そうなの? ポイは、普通にやっていたけど」

「ただ、呼び掛けるのは簡単よ。だが、それを相手が受け付けるという事は、少なくとも名を受けた者よりも強大だ。ブランと名付けられた者も、弱者ではない」

フォド「もしかして、ブランは、あなた方よりも強いのですか?」

「そうだ。ブランは我よりも各段に強い。しかも、今は名を持つ者になった。その力、想像も付かない」

キオウ「まさか、案内させる奴の方が強いとは、思いもしなかったぜ」

「客人は少ない。それをもてなす気持ちは、我らにもある」

イルネ「ならば、私達にも、ここを案内してくれるの?」

「それを望むのであれば」


なりゆきで、魔人らに、ここの神殿を案内して貰える事になった。

案内に、紫の魔人が同行してくれる。

キオウ「俺らには、あんた達しか案内役はいないのか?」

「許せ。こちらにいる者で、我が最高位故に」

ディーナ「変な要求は失礼よ」

キオウ「へいへい」

神殿には、様々な区画があった。

こんな巨大な島のような陸地が空に浮かび、その上大きな神殿までが浮いているのは不思議な事である。

フォド「この島が浮いているのも魔法の力ですか?」

「そうだな。これは、ある魔鉱石を加工し、魔力を持たせておる。空中に浮かぶようにな」

イルネ「これも、魔界の知識なの?」

「元はそうであるが、こちらの世界にも、施した場はここだけではない」

カディン「なら、こんな場所が、世界のどこかにも?」

「存在する」

キオウ「その魔鉱石って何だ?」

「それまでは、明かせぬ。ただ、こちらの世界でも見付かるとだけ言っておこう」

全てを教えてくれる訳ではないようだ。

魔人に導かれて来たのは、神殿の祭壇がある間のようである。

その中心に巨大な像が1つ立っている。

像は、羽の生えた人間のようにも見えるが。


フォド「これが、あなた方の神ですか?」

「そうだ、我らの神だ。そなたらは、影の神と呼ぶようであるな」

フォド「その名前も、一般的ではないのですが。他の四主神は祀らないのですか?」

「それは、我らが恩恵を受ける神ではない。故に、我らは祀らぬ」

フォド「あなた方は、神の声が聞けるのですか?」

「それは、まずない。だが、聞いた者もおる。その者は、それ故に特別な存在になる」

イルネ「特別な存在? 魔族の中でもそんな存在が?」

「そうだ、それが魔王の資格である」

ディーナ「魔王? やっぱり、そんな物もいるの?」

「そうだ。それは、お主らの王も同じではないのか?」

フォド「太古の王はそうであったとも聞きますが、現在ではいないのではと」

「ほう、ならば、そなたらの王は力を持たぬ者もなれるのか?」

少し、魔人は蔑んだような顔をした。

イルネ「そんな資格は、滅多に得られる事ではないからね」

「そうか。我らの方が長寿故、そのような機会も多いのであろう。失礼した」

カディン「その魔王は、今もいるの?」

「常にいる訳でもないが、今は幾人かおる」

力ある魔王が数人もいるのか。

それは恐ろしい事だな。


神殿の他の場所も見せて貰った。

ある場所には、見覚えのある物が設置されていた。

魔法陣のようだが、それが様々な色に光っている。

あれは、そうだ転移装置だ。

それに入り込んだ魔族が消えたかと思うと、今度は何も無い場所に魔族が現れた。

フォド「あれは、転移装置ですね?」

「そうだ、知っておったか?」

キオウ「ああ、前に見た事があるからな」

転移装置が8つ程、そこにはあった。

イルネ「これで、世界の各地を移動してるのね?」

「そういう事だ。これがあれば、世界を自由に旅する事が出来る」

「これは、ここ以外の場所にもあるんだよな?」

「そうだな、ここだけの物では無いし、珍しい物でもない」

という事は、魔族の移動は、思った以上に頻繁に行われているのか?


その他、サダらは魔族の休憩所なども見て回った。

この神殿だけでも、数百の魔族がいるようだ。

となると気になるのは、あの事だ。

神殿の一角に落ち着いたサダらは、魔人に質問を続けた。

「なあ、昨夜、あんた達の仲間が荒れ野に向けて沢山飛んで行ったが、何をしてたんだ?」

「あれを見ていたか? まあ、こちらも見られて困る事ではない。そなたらが荒れ野と呼んだ場所に向かった者もいれば、その外を目指す者もいた。目的は、それぞれよ」

イルネ「荒れ野には、何の用事が?」

「そうだな。あの地は、我らにとっては気持ち良いのだ。そこにいるだけで、体が休まる」

カディン「魔界に似てるの?」

「そうではないが、静かな場所である。故に我ら好みの場である」

ディーナ「魔獣とは、仲良くしてるの?」


「魔獣? ああ、知恵無き者らか。そうだな、我らは彼等に恵を施す。故に、あのような土地でも奴らは生き永らえておる」

キオウ「なら、あの色が違う魔獣は、お前らが作ったのか?」

「作るのとは違うな。ただ、恩恵を分け与えただけだ」

マレイナ「あんなのが、世界に溢れたら、こちらは困るけど」

「そうか、だが安心するが良い。与えた力が永遠に続くのでもない」

ならば、荒れ野限定と考えても良いのか?

「ただ、他の場でも似たような事はあろう。我らは、そなたらが思うよりも多くが潜んでおるからな」

魔族の影響は、思った以上に大きいらしい。


ここでふと、疑問が浮かんだか、イルネが聞いてみた。

イルネ「ねえ、こうしてあなたと話しているけど、私達と魔族は解り合えるの?」

「それはどうかな? こうして会話は出来る。だが、解り合えるかは解らん。それは、我らの中にも様々な者がおり、そなたらの方もそうであろう」

イルネ「それはそうね。でも、解り合える魔族もいると考えてもいいのね?」

「その可能性はある。だが、多くは期待せぬ方が良いであろう」

イルネ「でも、それを確認出来ただけでも収穫よ」

「我も、そなたらと話せて楽しかったぞ」

そろそろ、この場から去る時間のようだ。

紫の魔人には、礼を伝えた。


「何、何、客人をもてなしただけよ。碌なもてなしは出来なかったかもしれないが。そうだ、せめて、これを持って行くが良い」

魔人が、何やら小さな空間の歪みを生み出した。

そこに魔人が手を入れると、中から1冊の本を取り出した。

「何かの役に立つであろう」

その本を魔人はイルネに差し出した。

本の中身を確認するイルネ。

それを仲間らにも確認させた。

内容まではよく解らないが、魔法に関する書物のようである。


イルネ「いいの? これって、多分、私達が知らない魔法の事が書いてあるんでしょ?」

「構わぬ。そもそも、そなたらに魔法を秘匿するならば、初めから教える事はしない」

イルネ「それじゃあ、ありがたく頂いて行くわよ。ありがとうね」

「土産をそれしか用意出来なかったのだ。こちらこそ許して欲しい」

魔人は、橋の所まで送ってくれた。

「それでは、こちらの世界の者らよ。達者でな」

「ああ、いろいろと世話になった。仲間のポイの事もよろしくな」

サダ達は、橋を渡って行く。

魔族らが追って来るような気配も無い。


橋を渡りながら、皆は話し始めた。

キオウ「なあ、これで良かったのか?」

カディン「ポイ1人で行かせても良かったのかな?」

「それは、ポイが望んだ事だし、あいつなら大丈夫さ」

マレイナ「お腹、壊したりしなきゃいいけど」

フォド「それよりも、想像以上に魔族がこちらの世界に関わっているみたいですね」

イルネ「世界中に、沢山の魔族が潜伏してる。それは間違いないわね」

ディーナ「これから、そいつらと出くわす事が増えそうね」

「貰った本にも、魔族への対処法が書いてあるのか?」

イルネ「この本の中身は、解らないわ。これは、ケリナの魔法学院に届けた方が良いでしょうね」

話している内に、橋を渡り終えた。

目の前に、空間の歪みがそのままになっている。

サダらは、その歪みを抜け出た。


 空間の歪みを抜けると、そこは元の城の裏庭であった。

空は相変わらず、紫色で、やや暗くなり始めていた。

サダらは、拠点としていた貴族の屋敷らしき建物に戻って来た。

まずは、馬を確認する。

馬屋の馬達も、ポイの小脱兎鳥も無事である。

日も暮れて来たので、出発は明日にする事にした。


夕食後に、サダらは話し合った。

ポイが抜けた事は、なかなかに大きい。

野営地での結界などをどうするのかなど、話し合った。

ポイの結界を張る手法は真似る事は出来る。

だが、フェムネ独自の幻術は真似は出来ない。

これからは、警戒を厳重にして行くしかないであろう。

それと、ポイが運んでいた荷物であるが、そのほとんどは食料であった。

今ある食料でも、荒れ野を抜けるには充分な貯えもあるので、それは心配がなかった。

サダらは、また屋敷の中で眠りに入った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 魔法専門の人間ばかりが知識欲の為に抜けてしまうな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ