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第203話「荒れ野の地図」

 サダ達は、黄昏の荒れ野で見付けた、カドの村にいた。

サダ、フォド、イルネの3人で、仲間の馬や荷物を村の入口近くの広場で見張っている。

入口に近い場所にいるので、村に出入りする者らを観察する事も出来た。


村から、白狗毛鬼らが出て行く。

そして、今度は、白い大角鬼が連れ立って入って来た。

白い大角鬼らは、大きめの布袋を肩に担いでいるが、あれには武具屋のオヤジが話していた、集めて来た鉱石などが入っているのだろうか?

ここでは、主に、物々交換で村の流通は成り立っているようだ。

金貨なども使えはするが、割高なのだとか。


待っていると、村の中を見回っていたキオウらが戻って来た。

少々、興奮しながら、キオウらは帰って来るなり、話し始めた。

キオウ「いや、思った以上に変な場所だな」

ディーナ「村自体は、50年位前からあるそうよ」

イルネ「50年、なら災厄の時代に比べると、新しい場所なのね」

ディーナ「ええ、もっと古い村も、離れた所にあるんですって。こんな村が、荒れ野の各地に幾つかあるって」

ポイが何か食べながら、話を始める。

ポイ「うん、この串焼きはなかなかの物だね」

「お前、買って来たのか?」

ポイ「そうだよ。干し肉と交換したんだよ」

マレイナ「匂いを嗅いだ途端に交換してたよね。本当に、こういう時は素早いから」

カディン「後で、お腹が痛くなっても知らないから」

キオウ「そもそも、その食材は何なんだ?」

ポイ「肉と野菜だね」

カディン「野菜は、村の周囲でも作ってたけど、肉は何なのよ? 心配じゃないの?」

ポイ「味が全てだから、気にはしないさ」

ディーナ「フェムネは、勇気があるのね」

ポイ「ありがとう」


村を見て回ったので、ここにはもう用事は無いであろう。

更に、マレイナらは、村を回り地図を得ていた。

マレイナ「いろいろ聞いてたら、これをくれたの。勿論、食料との交換だったけどね」

広げて見ると、何かの獣の皮を鞣した物に地図が書かれていた。

カドの村も描かれていれば、他にも幾つか集落の記載がある。

端には、東にラッカムラン王国が書いてあり、西や北にも国名がある。

西側には、マクローネ王国と書かれていた。

カディン「マクローネ王国、私の故郷だ。まだ、国はあるのね」

マレイナ「えっ? そうなの? カディンちゃんの生まれた国が」

カディン「でも、私の家族は、もう何十年も前に死んでるはず。子孫がいても、解らないわよ」


地図を眺めていると、1ヶ所、他と記載が違う場所がある。

初めは、集落かと思ったのだが。

フォド「何でしょうか? 村ではないようですが」

イルネ「そうね、これって城と書いてあるんじゃないかしら?」

「城? こんな荒野にか?」

ディーナ「もしかして、大昔の城がそのまま残っているのかも」

キオウ「ちょっと、聞いてみようぜ」

キオウとマレイナが、地図を持って通り掛かった村人に声を掛けた。

しばらく、キオウらは、何か喋っていた。


キオウらが戻って来た。

キオウ「やっぱり、城らしい。でも、今は、廃城だってさ。目印になるから、地図に書いてあるらしい」

マレイナ「誰も住んでないけど、みんな遠目に眺めるだけで、近付く人はいないみたい」

「でも、そういう場所こそ、探ってみる価値はあるよな」

イルネ「行先が決まったようね?」

皆で顔を合わせた。

反対意見は、無いようである。

「じゃあ、次の目標はそこだな」

ディーナ「距離にして、ここから2日位かしら? そこに行ってから戻れば丁度いいんじゃないのかな?」

城までは、食料なども持ちそうである。

サダ達は、馬を引きながら、村を出て行く。


村を出て、また丘のゆるやかな斜面を降って行く。

その途中で、漆黒狗毛鬼にすれ違う。

村の外に出たので、襲われるかと思ったが、そいつらはサダらに気を止める様子はない。

キオウ「どこが境になって、あいつらは襲って来るんだろうな?」

斜面から降りたので、サダらは馬に跨った。

目指すは、南西の方角で、地図に記された廃城だ。

馬を走らせて行くと、村が小さくなって行く。

すると、前方に白狗毛鬼の一団が現れた。


その魔獣の群れは武器を抜き放った。

キオウ「どうやら、ここはもう中立地帯じゃないみたいだな」

サダらも下馬して、戦闘態勢を取る。

白狗毛鬼らが、武器を掲げて走り寄る。

間違いない、あいつらは戦う気だ。

村では何も無かったが、もうここでは違うようだ。

サダも長剣を抜いて、奴等と切り合いを始めた。

後ろからは、仲間の呪文の援護も始まっている。

隣では、キオウやイルネが武器を振るっている。

白狗毛鬼も、相変わらず手強い魔獣である。

しかし、サダらの技量の方が既に上になっていた。


サダが、1匹の胴体を切り裂いた。

キオウの戦槍が、1匹の脇腹を貫く。

イルネの剣が、首を切り落とした。

徐々に白狗毛鬼らを押して行く、サダら。

最後に、全ての白狗毛鬼が、地面に倒れ伏していた。

倒れた白狗毛鬼を調べてみた。


少し離れた場所には、奴らが戦闘の前に捨て置いていた布袋が落ちている。

その中身は、

キオウ「これは、鉱石とかだな」

ディーナ「こっちには、岩塩も入ってる」

マレイナ「あの村で、交換するつもりだったのね」

カディン「村で出会っていたら、戦う事もなかったんでしょうね」

別に後悔はない。

元から、魔獣との関係は、こちらの方が当たり前だ。

だが、妖戦鬼のネアンとも解り合えた。

もしかしたら、さっきの村での事のように、他の魔獣とも。

いや、考えても意味はない。

こちらが戦わなくても、こいつらは襲って来るのだ。


 カドの村を出発してから、数kmは進んで来た。

空が薄暗くなって来たので、見掛けた丘の近くで野営する事にする。

念の為、サダらは高台に登って周囲を観察する。

視界内に、動く物はない。

ここも、野営しても大丈夫そうである。

皆で、設営を急ぐ。

テントを立て、結界を張ると、今度は食事の準備である。

馬や小脱兎鳥にも、水や餌を与える。

最初は、荒野に怯える様子もあった馬達も、今は慣れたようである。

順応は、馬よりも小脱兎鳥の方が早かったようであるが。

小脱兎鳥は、初日から平気で地面に横になって寝ていた。


食事が終わったので、サダを見張りに立てて、皆、眠り始める。

見張りは、数時間おきの交代で行う。

皆が寝袋に入った直後からである。

遠くで、何か音がした。

皆、まだ眠ってはいない。

カディン「何? あの音?」

「ちょっと、丘の上から見てみるよ」

サダが歩き出すと、キオウも付いて来た。


周囲は、昼間に比べれば暗くなっているが、足元や丘の周囲を見る程度の明るさはある。

音のする南西の方角を見詰めるサダとキオウ。

キオウ「何も見えないな」

「あれは、地鳴りなのか?」

キオウ「でも、地面が崩れるとかはないみたいだな」

「何だろう? 今まで、あんな音は聞いた事はなかった」

キオウ「この荒れ野のまた別の領域に入ったって事なのか?」

しばらく眺めていたが、何かが見える訳でもない。

2人はテントの所に戻った。


イルネ「どうだった?」

キオウ「何も見えない。でも、あれは城の方角ではあるな」

マレイナ「なら、城に向かうと、音の正体にも出会うかも」

フォド「そうですね。でも、今は休みましょう。サダさん、見張りお願いします」

皆がテントに入り、サダだけが表に残った。

今も、時折、あの地鳴りのような音は聞こえている。

遠くから、地の底から響くように。

だが、1時間もすると、周囲は静かになった。

音がしなくなると、他には風の音だけだ。

サダは、急に寂しくなった。

まるで、この荒野に1人で取り残されたように感じる。

更に数時間立つと、フォドを起こしにテントに向かう。

見張りの交代時間だ。

フォドと数語交わし、サダはテントの中の寝袋に入った。

今は、あの地響きは聞こえない。

疲れが溜まったサダは、目を瞑ると、直ぐに眠りの中に入って行った。

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