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第19話「神に祝福された仲間」

私の名はフォド、妖精族の冒険者で職業は神官です。

今は故郷の妖精の郷を出て人間の町、ハノガナの街で暮らしています。

妖精族は、人間族よりも長寿な種族なのです。

人間達は100年程度の寿命しかありませんが、我々のそれは400年位はあります。

長寿であるが故か、変化を嫌い保守的な所があるのが、他種族との違いかもしれません。

けれど、それはある程度の歳を経た方々の傾向であり、妖精族も他の種族と同じく若い世代は好奇心旺盛です。


その為に、人間族や他種族と交流を持つ為に、故郷から飛び出す者も少なくはありません。

かくいう私もそんな若者の1人であり、数年前から人間らの世界で神官として学び、更には1年程前から冒険者としての活動を始めています。

神官になったのは、妖精族の長所である魔力を活かす為です。

今まで、様々な町やパーティーを渡り歩いて来ましたが、何やら面白そうな人達に出会えそうです。

楽しみですね。


 「西方の炎風」が、他の冒険者らから注目されるのは、悪い事ばかりではない。

自分達の仲間になりたいという人物も、幾人か出て来た。

そんな中に、待望の神官もいた。

彼の名はフォド、妖精族の神官である。

年齢は、人間らとは違い長寿なので、40歳だ。

身長は176cm、やや瘦せ型の体形である。

少し赤みがかった金髪に、奇麗に澄んだ青い瞳、そして少し尖った耳が、森の妖精族である事を物語っている。

服の所々に緑色の帯が付いているのは、四主神の内の東の神「ルムホルム」の神官である証であろう。

魔法は光属性と水属性を使うという。

武器は、主に鎚鉾を使うそうだ。

レベルは25。

自分達は今、レベル24なのでほぼ同じだ。

これで回復役に困る事は無いだろう。


「よろしく、フォドさん」

フォド「いえいえ、仲間になるのですから、フォドとお呼びください。」

キオウ「それじゃあ、フォド、よろしく。歓迎するぜ。」

マレイナ「これで、神官さんが加わって、頼もしいよ。」

ナルルガ「よろしく、フォド。攻撃魔法とかは、私に任せてね。」

神官の仲間入りを全員で歓迎した。

他にも仲間の希望者はいたが、今はフォドだけを入れる事にした。

丁度、借家の2階の一部屋が空いていたので、フォドも共同生活をする事になった。

新しい仲間とのお試しの為、中層の入口付近で探索を続けた。

それと、少しばかり先を見越して、自分は魔術師、マレイナはスカウトの職業も兼任する事にした。


 他の冒険者らによる追跡は、しばらく続いていたが、数週間、自分達が秘密の場所に向かわないと解かってか、ほぼ無くなっていた。

また、スカウトも兼ねたマレイナが、追跡を攪乱するような対策をしているのも、関係しているのかもしれない。

キオウ「どうやら、付き纏いもいなくなったみたいだな。」

「これだけ対策して、しかも例の場所に近付かないから諦めたんだろう。」

マレイナ「じゃあ、また剣を見付けた所に行ってみようよ。」

それでも用心して、行先を偽装する事は忘れない。

フォドにとって、中層の奥へ進むのは初めてなので、無理をしないように加減する事に。

そう言えば、大洞窟毒蜘蛛おおどうくつどくくもに遭遇した地域では、他に手強い魔獣は出て来ないが、奴があの辺りのボスだったのだろうか?

その後でも、小型の洞窟毒蜘蛛を見掛ける事はあったが、どれもサイズが小さい。

だが、あれから数週間は経過しているので、新たな主が移動して来ているかもしれない。

用心するのに越した事は無い。


途中にある小部屋では、たまに木箱や樽が見付かったが、中には僅かばかりの金貨や貴金属がある程度。

キオウ「何で、金貨とか、まとめて入れてないんだろうな? こう散らばらせているのは、何か意味があるんか?」

「さあ、もっと入れていたのに、誰かが使ったりしたんだろう。」

その他に、油紙に包まれた巻物が見付かる事もある。

マレイナ「何の巻物かな?」

ナルルガ「魔導書や、何かの記録みたいね。呪文は珍しい物は無いけど。」

フォド「古い文字で書かれた物もありますね。これは、随分と昔の物ですが、誰かが書き写して、ここに置いていたようですね。」

マレイナ「フォドは、読めるの?」

フォド「一部だけは読めますね。古い文字以外の巻物は、前の領主の家系の方の物みたいです。」

「その貴族がここに、隠したのかな? 何の為に?」

フォド「そこまでは解りませんが、何か事情があったのでしょうね。この指輪や首飾りに付いているのは、その家の家紋です。」

マレイナ「前の領主ね。ギルドには、何か記録が残ってんのかな?」

キオウ「そうかもな。でも、火炎剣まで、何で隠したんだ?」

フォド「隠したのは、魔法剣や財宝だけなのでしょうか?」

今回も、そこそこの成果があったので、街へ引き返す。


 その後も、隠し部屋周辺の探索は続けたが、追手の事もあるので数日おきに行った。

ある程度の探索が済み、幾つかの遺物を発見した。

なので、場所を他の冒険者にも、少しづつ教えて行く事にした。

全ての冒険者にではなく、顔馴染みの人物にまずは限定した。

マグルや彼の従妹たち、また、ハノガナに来ていたラガンやマルロ達にまずは公開した。

最初は、彼らのパーティーと共同で探索し、後は個別に行く事にした。

また途中からは、追跡者らを撒く事はなく、好きに追跡させる事もあった。

マレイナ「あれ? また他のパーティーが来るよ。」

キオウ「ここらも、随分と混雑し始めたな。」

フォド「もう、目ぼしい物は、粗方見付けられているでしょう。」

「そろそろ、他に行こうか? もう、この辺りはいいだろう。」

幸い途中の大空洞は、幾つにも枝分かれしているので、別の場所を探る事にする。


 行先を変えるのは、もう1つ理由ができた。

それは、他の冒険者らが、見付けた遺物が関わっている。

情報を公開して数日経った頃に、とあるパーティーがある遺物を見付けた。

その遺物は、王冠である。

その王冠は、かつてこの地にあった王国の物らしい。

過去の王国の遺物が見付かる事自体に、問題は無い。

問題なのは、王冠であるという事だ。

この世界での王冠の意味は重い。

それは文字通りに、王者のみが許された物である。

今の王国は、過去の王国を倒し建国された。

その時に、かつての王朝の王冠は失われたとされて来た。


それが、現王国の貴族の手により、迷宮に隠されていたのだ。

隠した意図の真意は、今となっては解らないが、その貴族が王権を狙っていたとも思われても弁解が難しい。

幸い王冠を隠したであろう貴族の直系は途絶えているのだが、その血を引く貴族は現存している。

街の領主も面倒事を避ける為に、直ちに王冠を王都へ送り届けた。

王都でも、それなりの騒ぎになったらしい。

見付けた冒険者達も、厳しく調べられたそうだ。

報酬どころか、場合によっては罰せられる可能性もあった。

ただ、最悪の結果は回避できて、彼らの嫌疑も晴れ、恩賞も出たらしい。

それなりの財産になったようだが、その判断が下されるのに数か月は掛かった。

事の顛末は、今の段階では、まだ出ていない。

それが解かるのはまだ先の事だが、面倒を避ける為に、自分達は探索する地域を変える理由の1つにした。

マレイナ「魔法剣を隠したの、王冠と関わりがあるからかな?」

キオウ「もしかして、記録が無いだけで、あの剣も昔の王国にまつわる物だったんじゃないのか?」

フォド「その可能性は、高いですね。」


 探索場所を少し変えると、そこは人型の魔獣がまた多い所であった。

再び、一角鬼いっかくおに狗毛鬼こうもうおにとの遭遇が増えた。

残念ながら、遺物を見付ける機会は減った。

収入は減るが、自分達の技術は向上するだろう。

領主から貰った、魔法の効果のある武器の威力は凄まじい。

魔法の耐性の無い相手には、特に効果が大きい。

長剣の使い勝手も、随分と慣れて来た。

時に片手、時に両手と持ち方を使い分け、片手が空いた時には魔法も併用する。

そんなスタイルが、自然と身に付いて来た。


新しい戦闘方法を習得した頃、丁度、また黒狗毛鬼くろこうもうおにと遭遇した。

黒狗毛鬼は手強い。

だが、今は、1対1なら引けは取らない。

こちらも長剣、あちらも長剣を構え対峙する。

確かに相手は剣術に長け、付け入る隙をなかなか見せない。

(ならば、その隙を作ってやる)

態と剣を大振りし、こちらの体勢を不用意に崩したように見せ掛ける。

それに釣られて攻撃をして来る相手。

(来た、誘いに乗った)

奴の刃を打ち、相手の体勢を崩してやる。

(これで、止めだ)

だが、相手もそう簡単に倒せる相手ではない。

致命傷を避け、防御の構えに転じる。

(くそっ、また守りに入ったか。なら、少し下がるか)

今度は、距離を少し開け誘う。

(来ないな。ならば、これだ)

そこへ呪文を叩き込む。

相手にしてみれば卑怯なのかもしれないが、そんな事は言っていられない。

今度こそ構えを崩した相手に、長剣の一撃をお見舞いする。

魔法で強化された剣撃を堪能しろ!

黒狗毛鬼を切り倒した頃には、他も終っていた。

戦闘の終った小部屋の中には、黒狗毛鬼とは別に6匹の狗毛鬼が倒れている。

キオウ「サダ、剣も上手くなったな。」

「ああ、いい感じになって来たよ。」

先を急ごう。


 この日、幾度か魔獣らと戦闘を繰り返し、街への帰路に就く。

報酬は、魔獣の討伐だけでも、一人1500シルバー程だろうか?

火炎剣の報酬で得た貯蓄もあるが、少々実入りが少ない。

フォドという新しい仲間も増えた分、もう少し頑張る必要があるだろう。

やはり、遺物の報酬は、魅力がある。

(新しい発掘場所を探してみるかな?)

その為には、迷宮の更に奥へ向かう事となるであろう。

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