第182話「迷宮、潜行」
カディンが契約した砂大ネズミのサンタを先頭にして、迷宮の中を進んで行く。
「あの大ネズミは、どの位、先に進ませてるんだ?」
「100m前後かな? 何か見付けたら、解かるはずよ。」
そんな話をしてしばらくして、大ネズミが何かを見付けたようだ。
「この先、80m位の所に左右に枝道があるみたい。その左側から、何か出て来たわ。」
「そいつは、どんな奴だ?」
「人型で、武装もしてるみたい。少し大柄で、頭に角が生えてる。」
「多分、大角鬼かな? 何匹いる? こっちに来るのか?」
「数は5匹ね。そのまま真っすぐに進んで、右の枝道に入って行くわ。」
ここから先を見ても、そんな様子は解らない。
カディンは使役している大ネズミから、その情報を得たという。
「召喚術は、凄いな。」
「でしょ。これで、鳥と契約すると、凄く視界が広がるわ。フクロウなら、こんな場所でも大丈夫よ。」
80m程進むと、カディンの言った通りである。
本道の左右に、幅3m程の枝道がある。
この右側を大角鬼らが入っていったはずだ。
サンタはここで見張りに残していたのだが、奴等はまだ戻って来てはいない。
ならば、先に左側の枝道を探ってみよう。
また、大ネズミを先行させたが、50m程先で、そこから登りの階段状になっているようだ。
階段下で大ネズミを待機させたまま、自分らもそこまで移動する。
カディンの封印されていた大空洞までは降りの階段だったが、ここは登りだ。
また、サンタを先行させ、階段の上を探らせる。
30段程登ると、その先は広い空洞らしい。
周囲に大角鬼や魔獣の姿は無いようだ。
自分らも階段を登る。
そこは、カディンのいた空洞よりも規模は小さいようだが、それなりの広さはあるようだ。
幅は20mで、奥が深く続いている。
「どうする? 探ってみるか?」
「一応、見ておきましょうか? 何か、使えそうな道具とか無いか調べてみない?」
「いいね。それいい。」
また、大ネズミを先行させる。
と、50m程進ませた所で、何かの接近を探知したようだ。
「何かこっちに向かってる。」
「気付かれているか?」
「うん、光の玉を見られたっぽい。」
「相手は何だい?」
「これ、大角鬼ね。4匹いる。」
「なら、迎え撃とう。」
サンタに追跡させつつ、こちらは迎撃態勢を整える。
光の玉が奴らの姿を浮かび上がらせた所に、全員で呪文を放つ。
全ての大角鬼に、何発かの呪文が命中した。
そこへ、短剣を振り上げて1人で斬り込んだ。
「サンタに援護させるから。」
カディンの声が後ろから聞こえた。
「了解した。」
傷を負った大角鬼を切り立てる。
そこへ、砂大ネズミが奴等に砂を吹き掛け、更に動きを鈍らせる。
その動きの止まった大角鬼を斬りまくって行く。
これは、凄い有効な援護だな。
ざっくりざっくり、切って周り、4匹を倒した。
カディンとポイが駆け付けた頃には、戦闘は終了していた。
「凄いな。砂大ネズミとは思えない活躍だったよ。」
「サンタも経験を積み始めているから、並の大ネズミよりも強いはずよ。今回の戦いも、いい経験になったわ。それは、私にも恩恵があるけど。私、魔獣と戦った経験はそんなに無いから、ありがたいわ。それに、サダがいるから安心よ。」
「僕は、どうなの?」
「勿論、ポイも頼もしいわ。魔法は、あなたの方が得意だし。」
「そう考えてくれるなら、ありがたいよ。」
また、サンタに先に進ませる。
すると、何かを見付けたようだ。
「また、登りの階段状になってるみたい。その脇に、木箱もあるわ。」
そこに、3人で行ってみた。
「風が来るな。」
階段の上から風が吹き込んで来る。
「土と木の匂いするよ。もしかして、外につながってるかも。」
サンタに確認させると、40段程登ると、外に出られるようだ。
「なら、上は、確認しないでいいか。そこの箱だけ見てみよう。」
罠や鍵などは無い。
蓋を開けた。
「帽子みたいね。それに、腕輪かしら? 少し小さいけど。」
「待って、見てみる。」
ポイが鑑定を始めた。
「うん、帽子も、腕輪も魔法が掛ってる。」
「この帽子、カディンにいいかもな。どうだ、被ってごらんよ。」
カディンが被った。
布製で、前に鍔が付いていて、耳の部分も覆っている。
「悪くないかも。これで、頭も守れそう。」
「腕輪は、ポイに丁度いいんじゃないのか?」
腕輪は2つあったので、ポイが左右に嵌めてみた。
「うん、1つは腕力強化、もう1つは魔力強化の効果があるよ。僕が貰ってもいいの?」
「ああ、それを身に付けられそうなのは、ポイだけみたいだ。」
「ありがとう、2人共。」
自分に合いそうな物は無いが、これは仕方ない。
本道に引き返そう。
本道に戻ると、今度は右側の枝道の探索だ。
ここには、大角鬼が入り込んだはずだが。
サンタをまた先に行かせる。
すると、何かを見付けたようだ。
「今度は、降りの階段よ。」
よし、そこまで進もう。
サンタに追い付いたので、先に階段の下を探って貰う。
その先は、また空洞が広がっているようだ。
降りてみると、空洞はそれなりに広いようだ。
その先に、大角鬼がいたので、共同で戦う。
サンタと自分が前衛。
後ろから、ポイとカディンが呪文で援護してくれる。
5匹の大角鬼を倒した。
「こいつら、さっきここを進んで行った奴等かな?」
「そうかもね。」
先を見てみると、100m程進むと、3つに枝分かれしている。
その1つ1つへサンタを送り込む。
調べた結果は、
「2つは行き止まりで、その1つには木箱が置いてあるわ。もう1つは、長い通路ね。」
まずは、木箱を見に行く。
箱の中身は、
「胸甲に、回復薬が複数ね。この胸当て、サダにいいかも。」
革鎧の上に胸甲を装着してみたが、悪くない。
「じゃあ、こいつは使わせて貰うよ。回復薬は、3人で分けよう。」
残った通路は、どうするか?
「少し確認しても、先が解らないなら引き返しましょう。」
「そうだな。進むべきは本道だろうから、寄り道は程々にな。それに、先で大角鬼が大勢いても困るから。」
枝道の先を300m程進んだが、ただ通路が続いているだけだ。
サンタを200m程先まで進ませたが、まだ続いている。
「諦めましょうか?」
「そうだな、本道に戻ろう。」
「そうしよう。そうしよう。」
帰り道で、また大角鬼の一団と遭遇したが、それも難無く撃破した。
そして、本道に戻ると、再び先へと向かう。
「大角鬼とは、契約しなくてもよかったのかい?」
「街中に連れて行くには、不適切な奴だから。どうせなら、獣みたいなのがいいな。狼とか。熊はちょっと勘弁ね。」
「そうだな。岩熊とか、街に連れてけないな。」
「まあ、その時は、待機していて貰うからいいけど。」
「もし、僕と契約したら、召喚獣に出来るの?」
「多分、出来ると思うけど、やってみたい?」
「今は、いいや。」
先行させていたサンタが、前方で何かを見付けたようだ。
「先で降りの階段状になってるみたい。」
そこまで行ってみると、幅3mに狭まって、降り道になっている。
「進むしかないようだな。」
「そうね、行きましょう。」
「今度は、どんな所かな?」
サンタが下に着いたようだ。
「50段程降りるみたい。そこは、また明るくなってるわ。」
「また、休憩できる場所かな?」
「そうだといいな。」
自分らも、下へと降り始めた。




