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第18話「隠し部屋での大発見」

 遺物の探索を続けていたが、成果は出ないので場所を変える事とした。

キオウ「ダメだな。あの辺りは、もう粗方探し尽くしただろう。」

「そろそろ、場所を変えようか?」

マレイナ「それがいいよ。また別の所に行こう。」

次は、狗毛鬼こうもうおにの集落の先に進む事とし、集落を避けた別ルートを探る事にする。

狗毛鬼、特に黒狗毛鬼は、避けたい。

馴染の大空洞の先へと進み、狗毛鬼の集落に近付く。

だが、そこを避ける脇道へ入り、今回はその奥へ進んで行く。

進んだ先で隠し扉を見付けて開けてみると、そこは隠し部屋ではなく新たな通路となっていた。

キオウ「おっ、この先は通路だな。」

マレイナ「どこに続いてるかな?」

隠し通路を更に進む。


新たに見付けた通路は床に埃が積もり、しばらくは何者も通過した形跡が無い。

所々に古い蜘蛛の巣が張っているが、それ以外の生物の痕跡も無い。

「しばらく、誰も来てない場所らしいな。」

キオウ「なら、何かあるぞ。これは。」

やがて、通路は階段状になり、下って行く。

階段の行きついた先は小部屋になっていた。

行き止まりかと思えば、小部屋にまたしても隠し扉があった。

ナルルガ「随分と、手が掛かっているようね。その割りに放置されて長いみたい。」

新たな道が開いた。


小部屋には、残念ながら何も見付からなかったので、先を進むしかない。

その先は、洞窟になっていた。

通って来た通路幅よりも広い、5m越えの洞窟になっている。

洞窟内で、様々な昆虫系の魔獣に出くわす。

それらは、さほどの脅威となるような相手ではない。

おおムカデ、おおダンゴムシ、おおカマドウマなど、地上でもよく見掛けるような物ばかりである。

けれど、どれも肉食で、こちらを見付けると向かって来るのが面倒である。

遭遇しては、切り抜ける事を繰り返す。

討伐の証を持って帰っても、大した報酬にならないのが悔しい。

洞窟が行きついたのは、大空洞であった。

毒吐きマダラヘビと戦った大空洞に、似た場所っであった。


ただ、大きさは似てはいるが、あちらと違いこちらは空洞内が乾燥している。

ここも、何かの住処なのだろうか?

所々に、大型昆虫の物と思える甲殻の破片が散らばる。

何かに捕食された跡かもしれない。

その他に目に付くのは、蜘蛛の糸か?

地上で見る小型な蜘蛛の物とは違いちょっとした紐のような太さだが、これも蜘蛛糸なのだろうか?

しばらく進んで行くと、微かに空洞内を流れていた空気の流れが、何かに塞がれたような感覚がする。

前方の空間に、それなりの大きさの物が立ち塞がっているような感覚がする。

空洞の前上方をランタンで照らす。


それは確かにいた。

空洞の空間に浮かんでいる。

いや、そいつが作り出した糸の宮殿の中央に鎮座していると言っても良いのだろうか?

ランタンの光を複数の眼が反射している。

「あれは、蜘蛛なのか?」

大きく黒々と見えるそいつは地上では出くわす事などほとんど無い、大洞窟毒蜘蛛おおどうくつどくくもと呼ばれる、昆虫型の魔獣の中でも厄介な相手である。

その胴体の大きさは3mを軽く越え、草原で戦ったダンビラカマキリ以上の大きさのある相手である。

勿論、肉食でもあり、人間も餌食にするような奴だ。

全員が身構える。


ナルルガの火炎矢、マレイナの短弓の攻撃を合図に戦いが始まる。

向こうも蜘蛛糸の塊を、こちら目掛けて撃ち出して来る。

あれに絡まると、身動きが出来なくなる上に、毒に犯される可能性もある。

キオウと自分で、挟む込むようにして責め立てる。

そいつは、蜘蛛の巣を燃やされる事を嫌ってか、空洞の床に降り立ち向かって来る。

8本脚の動きも早く、距離を縮めて来る。

更に、前脚の2本は、鋭い爪状の武器になっている。

それでこちらの武器を防ぎ、また攻撃に使って来る。

その口から覗く牙にも、毒液らしきてかりが見て取れる。


まず、脚を切り落として動きを制限しようと切り付けてみるが、斧が弾かれる。

細い脚が意外と硬い。

ならばと、大きな腹を目掛けて戦斧を振るうと、何とか傷が付く。

だが、体が大きい為か、大したダメージにはなっていないよう。

しかし、他に手はない。

脚の攻撃を避け、胴体を狙い続ける。

振り降ろされる前脚の攻撃をやり過ごしたら切り掛かる。

斧で切り裂く度に、体液を吹き出す毒蜘蛛。

キオウと攻撃を続け、ナルルガ達が魔法と弓で攻める。

人の入り込んだ形跡が無いこの辺りでは、人間と対峙した事も余り無いのかもしれない。

迷宮内を彷徨う虫たちとは違う相手に、大毒蜘蛛も戸惑っているのか?

不慣れな大物を追い詰める。

やがてナルルガ達の攻撃が毒蜘蛛の頭を破壊し、キオウと切り続けたダメージが蓄積したのか大洞窟毒蜘蛛の動きは止まった。

キオウ「なかなかに体力があって、厄介な奴だったな。」

「ああ、虫の仲間では、間違い無く最強の相手だった。」

討伐の証に毒液を拭き取った牙を切り取って持ち帰る。


 ここの大空洞の内部を調べると、その先は、また幾つかの洞窟に枝分かれしている。

その1つを選び進む。

すると、小部屋のようになっている行き止まりに出た。

その小部屋の壁を探ると、また隠し扉がある。

隠し扉を開けようとするが、開けられない。

何か仕掛けがあるかもしれないと思い、部屋の中を探る。

すると、扉の近くの壁に四角い窪みがあった。

その窪みに、窪みよりも小さな黒い四角い石が嵌っている。

ナルルガが言うには、黒い石には僅かながら魔力を感じると言う。

もしやと思い、更に部屋の中を探してみると幾つかの黒い石が転がっている。

その黒い石を集め窪みに嵌め込む。

扉がゆっくりと開いた。

扉を開け入ると、また小部屋になっていた。


キオウ「なんで、ここまで仕掛けを作ったんだ。」

ナルルガ「作った奴の性格が現れているわね、これは。」

小部屋をまた探ると、しつこいように隠し扉になっている。

更に先を進む。

その先は、小部屋の続く回廊のような場所に出た。

床は小型の何かが這った跡はあるのだが、人や人サイズのものが行き来した形跡は無い。

冒険者らが、未踏の場所に到達したのかもしれない。

とある小部屋を覗くと、木箱や樽が置いてある。

中を見てみると、古い時代の金貨や銀貨、そして貴金属などが幾つか見付かった。

持ち帰れば、100ゴールド位にはなるかもしれない。

マレイナ「うわっ、今回は凄いね。」

「ああ、これはなかなかの場所だ。」

そして、それを見付けた。


金貨を見付けた小部屋とは違う部屋に入ると、隠し扉がまたある。

扉が開かないので部屋を探ると、また壁に先程と同じような窪みがある。

ただ、今回は窪みに別の石が嵌め込んであるので、ナイフを使いそれを外した。

嵌め込んだ石を外すと、扉は開いた。

中を覗くと、妙な物を見付けた。

「あれ? 何かあるぞ。」

この部屋にも木箱が置いてあり、開けてみると何かがある。

古びた布に細長い物が包んである。

布に包まれたそれを持ち上げてみる。

「重いな。何か金属製の物みたいだ。」

布を外すと、鞘に入った一振りの長剣が出て来た。

その鞘も何か彫刻が施してあり、高価そうに見えた。

鞘から長剣を抜いてみる。

何故なのか、長剣の刃が微かな赤い光を放っている。

「これは? 剣の刃が光ってる。」

ナルルガ「魔法剣よ」

(魔法剣? こいつが、そうなのか?)

これも遺物の1つで、過去に鍛えられた魔法の力が付与された武器なのか?


4人で、自分が抜き放った長剣の光る刃を惚けて見詰めていた。

はっと我に返ると、嬉しさがこみ上げて来た。

「やった、これは一財産になるぞ!」

キオウ「こいつは、あの戦鎚以上のお宝だぞ!」

マレイナ「やった。ついに見付けたね。」

ナルルガ「こんな物、何年かに一度見付かればいい方の物よ。絶対に。」

他には、多少の金貨が見付かる程度で、価値のありそうな物は見付からなかった。

いや、今回の成果は、この剣だけで充分過ぎる。

街へ引き返す事にする。

また、今度、この先の探索をしに来よう。

帰りの足取りが軽い。

帰りの道中に、見付けた魔法の長剣をどうするのか話し合う。

「この剣、どうしようか?」

キオウ「武器としては魅力はあるな。こんな物、二度と手に入らない。」

マレイナ「でも、そんな貴重な武器は。」

ナルルガ「荷が重いわね。誰もが欲しがるような物は。」

こんな武器を所持していれば、羨望の目で見られるのは間違いない。

ただ、見てくれるだけならば良いのだが。

中には、剣を狙って来る連中が出て来る可能性もある。

「やっぱり、手放すか。」

ナルルガ「それがいいわ。まだ、それは、私達の手に収まるような物じゃない。」

身に過ぎた武具は、災いにもなる。

この剣をギルドに納品する事とした。


 冒険者ギルドに着くと、一騒動となった。

布に包まれた長剣を鑑定して貰う為にヘルガに見せると、他の受付嬢達や冒険者らも集まって来た。

ヘルガ「これは、凄いです。やりましたね。」

鑑定した結果は、攻撃力+5、火炎+5、腕力+6の魔法が付与されていると言う。

攻撃力を強化してあるだけでなく、火属性の魔法も掛けてあったのだ。

伝説級の武器ではないが、こんな高レベルの遺物が見付かるのは数年に一度の事だとか。

しかも、街の領主らが、このような高レベルの遺物には賞金を掛けているのだという。

手放すのは惜しいが、こんな荷の重い物を所持するのも負担が多過ぎる。

勿論、手放す事にした。

火炎剣は300ゴールド、他の金貨なども120ゴールドの値が付いた。

一人頭10500シルバーの報酬となった。

更には、街の領主は火炎剣の代償に、遺物程ではないが魔法力が付与された武器をくれた。

キオウは戦槍+2、マレイナは片手剣+2、ナルルガは木杖+2、そして自分は長剣+2を貰った。

火炎剣に比べれば微々たる能力だが、入手しようとしても高額で、なかなかに手に入る物でも無い。

以前の大量の武器を入手した事に続いて、また自分達の名が上がる事になった。


この機会に、自分達のパーティーに名前を付ける事になった。

「どうする? パーティー名は?」

キオウ「そうだな。もっと前に付けていても良かったかもしれない。」

マレイナ「火炎剣を見付けたのだから、火に関係するのはどうかな?」

ナルルガ「そうね、炎、それに風を加えて炎風はどうかしら? それも、ここは王国内でも西の方角だから、『西方せいほう炎風えんぷう』ね。」

マレイナ「それ、かっこいいよ。それにしよう。」

キオウ「そうだな。他に思い付かないし、俺も賛成だ。」

4人で話し合った結果、「西方の炎風」となった。

炎風? それってナルルガさんの得意魔法?

このパーティーの頭は、ナルルガさんだったの?


「西方の炎風」、ハノガナの街では、ちょっと知られた存在になった。

だが、有名になったのは、良い事ばかりではない。

火炎剣を見付けた以後、厄介な事が続いた。

それは、自分達が迷宮に向かうと、ほぼ誰かが付けて来るのだ。

多分、火炎剣を見付けた場所を探ろうとしている、他の冒険者達だろう。

連中は、スカウトの仲間に探知させ、執拗に自分達をつけ回す。

あの通路の探索を再開したいのだが、他の冒険者に荒らされたくはない。

しばらくは、別のルートの探索を態とする事にする。

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