表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
179/232

第179話「封印されし少女」

 虚無の迷宮の中、魔族の出現する大空洞で、光の中に封印された少女を見付けた。

見た目は人間に見えるのだが、そうなのだろうか?

魔族の出没するような場所に、人間を態々封じ込めるのか?

これは、見た目は人間だが、もしかして魔族やその類ではないのか?


「どうするの? サダ? この子、助けないの?」

「いや、人間なら、助けたいけど、もしも違ったら、どうしようかなって。」

「人間じゃないの?」

「そう見えるけど、人間をここに封印する意味が解らない。これも、魔族の一種か、何か特別な存在なのかも。」

「確かに、そうだね。でも、多分、人間じゃないかな?」

「ポイは、人間だって思うのかい?」

「うん、思うよ。半分だけ。」

(5割の確率かよ。でも、自分でも迷う。これはどっちかな?)

「そうだ、周りを見てみよう。」


周囲に、何かヒントが無いのか確かめる。

台座の上に魔族の封印に似た、5つの光る石に囲まれた少女。

その中で、少女はまるで眠っているように仰向けで横たわっている。

着ているのは、白い長衣のような物だけだ。

足にも、何も履いてはいない。

周りに、何も置かれてはいないし、文字も書かれてはいない。

ただ、この場に1人、少女が眠るようにして居るだけだ。


彼女が人間ならば、助け出すべきであろう。

だが、人間以外であるならば、どうだ?

見た目は優しそうな少女ではある。

肩まである栗色の髪の毛。

見たところの年齢は15~17歳位か?

彼女は、いつからここにいるのだろうか?


「なあ、ポイ。この子を鑑定出来ないのか?」

「そうですね。やってみます。」

ポイが短く呪文を唱えた。

「ダメです。見えません。もしかしたら、この封印が邪魔をしているのかもしれません。」それは、厄介だな。

正体が解らないのに、解放するのもどうかと。

もう一度、彼女を観察してみた。

封印されている場所自体、5m四方の石の台座のような場所の上である。

しかも、少女は、何かの木の台か寝台のような物の上に寝かされている。

(あれ? これは?)


「彼女が乗せられているのは、棺桶じゃあないよな?」

「棺桶ですか? それって?」

「ああ、死んだ人を入れて地中に埋めたりする箱の事だよ。彼女が乗ってるのは、丁度、そんな大きさだから。」

「死体を入れるんですね。その箱の上に?」

「棺桶と決まった訳じゃないけど。もしかしたら、彼女だけでなく、あの中にも封印されている奴がいないとも限らない。」

「それじゃあ、この中に2人が封じ込められていると?」

「箱の中身は、外からは解らない。ただ、可能性としての話だ。もしかしたら、中身は空かもしれないし、別の物が入れられているかもしれない。」

「そんな手の込んだ事を? 態々?」

「他の木箱もそうだが、誰かが用意しているのか、それとも偶然なのか、解らない事が多過ぎる。」

「なら、彼女をこのままにするんですか? もし、閉じ込められてるなら、助けてあげないと。」

そこは、判断の難しい所だな。

「ポイ、簡単な光呪文をここで教えよう。」

「ええっ、本当ですか?」


ここで、悠長に魔法を教えるのは危険を伴なうかもしれない。

だが、もしも、この封印を解いて、彼女自身やあの箱の中に魔族が潜んでいたとしたら。少しでも、魔族への対抗手段を増やしておくのは悪くはない。

多分、ポイならば、呪文を使いこなせるだろう。

全ての光属性の魔法を教えるのには、時間が無いが、まずは基本の3つ、光の円陣、光の御符、光の尖槍を教える事とした。

呪文を教え、それを実践して見せる。

それから、何度か、ポイが呪文を覚えているのか確認する。

ポイも、魔法文字の意味も理解しているので、覚えは早い。

1時間もしない内に、3つの呪文を覚えた。

「僕は、昔、魔法学校で習った事もあるんだよ。」

「フェムネにも、そんなのがいたなんて。今、ケリナの魔法学院では、フェムネの受講生もいるけどな。」

「そのケリナって所の事は知らないけど、僕は、オーレリアの魔法学校で習ったんだ。他にフェムネはいなかったけどね。」

逆に、自分は、オーレリアという学校を知らない。

準備ができたので、封印を解く事とした。

「いいか、準備は?」

「いいですよ、僕は。」

封印の石を1つ、短剣で掘り返した。


封印の白い光が消失した。

辺りは暗くなるが、ポイの光の玉が周囲を照らしているので、問題はない。

封印を解く前には、周囲も警戒したので、近くに魔族はいないはずだ。

この彼女が、魔族でなければの話だが。

解除したが、彼女が目覚める様子はない。

直ぐに、ポイが彼女及び、その下の箱を鑑定する。

「ああ、良かった。彼女は人間でした。ただ、体力がほとんど失われていますので、回復薬を飲ませましょう。それと、箱の中には、何もいないようです。ただ、道具のような物が幾つか入っているようです。」

彼女に触れてみた。

やや、体温は低いが、息はしている。

回復薬を取り出し、それを彼女の口へ少量づつ流し込む。

ゆっくりと、少しづつ流してやると、弱々しく彼女が飲み込んだ。

「ごくり・・・ごくり・・・ごくり・・・」

1本の回復薬を何度にも分けて、彼女は飲み込んでいる。

それが零れ出ないように、調節しながら飲ませる。

やがて、回復薬を彼女は飲み終えた。


深く深呼吸をしたかと思えば、むせ返る彼女。

「大丈夫か? どこか具合の悪い所はないか?」

「うっ、ここは?」

少しづつ、意識も回復し始めたようだ。

彼女が目を開き、自分と目が合った。

「ここはどこ? あなたは、誰?」

言葉は通じるようだ。

「ここは、虚無の迷宮の中さ。自分はサダだ。こっちはポイだ。」

「わあっ、目が覚めたね。僕は、ポイだよ。」

彼女は、目線をポイに移した。

「動物が喋ってるの?」

「動物じゃないさ。僕は、フェムネだよ。」


「フェムネって言うの? 初めて見た。」

「君は、自分の名前は、覚えているかい?」

「名前。ええっと、私の名前は、カディンよ。」

「なあ、カディン。君は、何故、ここに封印されていたんだ?」

「封印? 私が、ここに? 解らない。それに、ここが迷宮って言ってたわよね。何で、私がそんな所に?」

「記憶が無いのかい?」

「ええ、虚無の迷宮って聞いた事も無いし、ましてや封印なんて。」

「何か、覚えている事はないか? どこの国から来たとか、住んでいた街とか。」

「私は、クーリン王国のカダナの街に住んでいたの。そこで、魔法を習っていたわ。でも、何でここにいるのか、全く解らないわ。」

「クーリン王国? 聞いた事ない名前だな。自分は、ラッカムラン王国のハノガナの街で冒険者をやっているんだ。この迷宮には、ある道具を探しに来たんだ。」

「僕は、ジャケリ王国のオーレリアの街の魔法学校で、魔法を習ってたよ。その後は、各地を放浪して魔法の腕を磨いてたけどね。ここには、貴重な魔法の品があるって聞いたから来たんだよ。」

カディンもポイも来た事の無い国にいたんだな。

ここに辿り着く者は、様々な世界から呼び寄せて来られるのだろうか?


「そうだ。カディン、その箱から降りてくれないか?」

カディンを箱から降ろすと、その乗っていた箱の中身を確認してみた。

罠などを調べたが、そのような仕掛けは無かった。

中身はというと、

「装備だな。」

まるで、カディンに合わせたように、短衣の上下に、胸当て、革手袋、革の長靴などが入っていた。

その他、背嚢や水筒など、活動に必要な一式に、木の長い杖も入っていた。

「もしかして、君の装備なのかい?」

「いいえ、どれも見覚えは無いけど、丁度良さそうな物ばかりね。」

彼女が身支度するまで、少し離れた所にいた。

「サダ、準備ができたわよ。」

そこには、箱の装備一式を身に付けたカディンがいた。

これらなら、迷宮の中を歩いても支障は無いだろう。

ただ、水筒の水だけは空だったので、水魔法で水を湧き上がらせ補充した。

それと、前に別の木箱に入っていた小剣も彼女の護身用にあげた。


「カディン、これからどうする?」

「そうね、私も、何故ここにいるのかも解らないわ。なら、ここを出るしかないと思う。良かったら、サダ達に付いて行ってもいいかしら?」

「ああ、構わないよ。行動している内に、記憶が蘇るかもしれないから。記憶が混乱するのは、自分でも経験があるから、何となく解かるよ。」

「そう、そうだったのね。」

迷宮の中、3人目の仲間が見付かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ