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第17話「共同依頼」

 ある日、ギルドに行くと、マグルから声を掛けられた。

マグル「よう、サダ。もし良かったら、ちょっと手伝ってくれないか?」

「何か、手強い奴でもいるのか?」

マグル「いや、そうじゃない。ただ、頼まれ事で、遺物を探し回っているんだが、どうも見付からなくてさ。」

キオウ「遺物か。どんなのを探しているんだ。」

マグル「それが、依頼主は武器でも防具でもいいから、それなりに魔法で強化された物が欲しいらしいんだ。でも、なかなか見付からなくてさ。頼むよ、力を貸してくれよ。」

「そうは言うが、自分達もそんなの見付けた事も無いぞ。」

マグル「だけど、前にサダ達は、武器を沢山見付けた事もあっただろ?」

マレイナ「でも、それは魔法の武器じゃなかったよ。」

マグル「それでも、頼むよ。」

マグルらも困っているようなので、協力する事にした。

報酬は人数割りにする。

今回は、遺物探し、それも魔法の武具が目標だ。


 まずは、マグル達が探っていた中層の回廊へと向かう。

マグルの仲間は、戦士のフィーダ、魔術師のコーグ、神官のアルダだ。

今回は8人組のパーティーを組んでいる。

途中、大食おおぐおに狗毛鬼こうもうおにの襲撃を受けたが、難無く排除して先を進んだ。

そして、小部屋を見付けては、隠し部屋が無いか探って行く。

全ての部屋に隠し部屋がつながっている訳ではないが、何カ所かで見付ける事ができた。

中には古びた装飾品や道具類はあるが、目指す魔法の武具は見付からない。

キオウ「なかなかに、見付かるもんじゃないな。」

「そう簡単に見付かるなら、苦労はしないよ。」

マグル「もう、1週間は探しているけど、まだ見付からないんだ。」

「おっ、あれはどうだ?」

とある小部屋で、床板が微妙にずれていたのでどかしてみた。

床板を外すと、僅かながら魔法の掛かったナイフを2振り見付けた。

マグル「ダメだ。これじゃあ、魔導師らが簡単に造れる程度の魔法しか掛かっていない。」

この程度では、遺物扱いはされないと言う。

でも、折角の発見であるから無駄にはせず、護身用に2人の魔術師、ナルルガとコーグが使う事にする。

街で調べて貰うと、威力+1の魔法が掛かっていた。

その他、持ち運びが可能な遺物を見付けては回収した。


 とある小部屋で、隠し扉を見付けた。

罠こそ無いが、幾つも施錠されている。

それらを全て開錠し、扉を開ける。

マグル「おっ、中は思ったよりも広いな。」

扉の中は、元の小部屋よりも奥行のある空間になっている。

マレイナが呪文の光の玉を室内へに向かって投げ入れる。

暗い空間が、魔法の光で明るくなった。


中はおよそ15m四方の四角い空間だった。

空間の奥に石像のような物が台座に座っているように見えた。

その石像が何故か金属製の兜を被り、両手に戦鎚を握っている。

マグル「石像だよな。でも、何で兜とか被っているんだ?」

キオウ「こんなの見た事ないな。」

マグルが石像を調べようとすると、石像がゆっくりと軋みながら立ち上がり、戦鎚を構えた。

フィーダ「皆さん、気を付けて。」

マグル「どうやら、こいつ自体が罠だったみたいだな。」

全員で対応しようと空間に入り込むと、後ろで扉が自然と閉じて行く。

キオウ「おい、何で扉が閉じたんだ?」

マレイナ「開かないよ。固く閉まっちゃった。」

コーグ「これは、石像を倒さないと、出られないのかと。」

マグル「面倒な仕掛けを作ったもんだ。」


石像を自分とキオウ、マグル、フィーダの4人で囲む。

神官のアルダが、何か後ろで小声で唱えているのが聞こえる。

すると、前衛の4人の身体が僅かに光を帯びる。

光属性魔法で、防御力を上げてくれたらしい。

石像がゆっくりと戦鎚を振り上げたが、次に予想外の素早さでそれを降り下ろして来る。

辛うじてその攻撃を避けると、戦鎚はそのまま床に振り下ろされた。

床の岩が砕けて、鎚の跡が付いた。

キオウ「やべ~っ、とんでもない力だ。」

まともに受ければただでは済まない。

しかも、こちらの攻撃が当たっているが、ダメージを与えているのかよく解らない。

石像では表情が解からず、悲鳴のような物も上げる事はない。


ただ、攻撃が単調なのが救いだ。

しかし、その降り下げる速度だけは、甘く見る事はできない。

そんな攻撃を避ける内に、身体をかすられる。

すると、何故か力が抜けて床に膝を付いてしまう。

キオウ「サダ、やられたのか!」

「・・・うっ、あっ・・・。」

それに答えようと思うが、口が上手く動かない。

何故か、石像の攻撃がかすめただけで脱力してしまう。

まさか、これが魔法の武器の力なのか?

よろけながら、石像との距離を取る。

少し回復したのか、言葉を発する事ができた。

「攻撃を少しでも受けるな・・・。力が抜けてしまう。」


そう言えば、ナルルガ達も魔法の攻撃を石像に向けて放っているが、効果が無いようだ。

石像の装備している兜や戦鎚に、魔法や精神力を奪う効果があるのかもしれない。

少し休むと、体力も回復したようだ。

立ち上がり、再び石像に立ち向かう。

魔法の武器は手強いが、攻撃の動作に移るまでは隙だらけである。

攻める機会と避ける動作を分けて対応すれば、いずれは勝てる。

ただ、石像の体は硬く、下手な攻撃は刃こぼれする恐れもある。

慎重に、打撃を与え続けるしかない。

このような相手には、武器に気合いを貯めて打ち込むしかない。

これにより、武器の耐久度も一時的に上げる事もできる。

名付けて「衝撃打」である。

武器技術を上げると、修得できる武器技の一種である。

武器技は、威力の向上や攻撃回数を増やすなど、様々な効果のある物が何種類もある。

衝撃打は、武器の攻撃が衝撃となり防御力に関係無く打撃を与えられるので、石像の内部にも浸透して行く。

攻撃と回避を順に繰り返している内に、石像の動きが変わって来る。

その動作が更に遅くなると、やがて内部から崩壊し始めて、砂粒のように崩れ始めた。

石像の残った体の部分が動く気配を見せていたが、やがてそれも止まり全てが砂になった。

砂の上に、石像が身に付けていた兜と戦鎚が残されていた。

それと、見た事も無い金属製の小片が落ちている。

どうやら、像の中に埋め込まれていた物らしい。

マグル「終ったな。」

「ああ、何とか倒せた。」

コーグ「何でしょうか、この金属片は? 魔力が込められているのが感じられますが。」

マグル「そいつも持ち帰ろう。」

マグルが金属片を拾い上げた。


兜と戦鎚を魔術師の2人が手に取り、何かを感知しようと集中している。

コーグ「間違いない。これは魔法の遺物だ。」

マグル「やったな。やっぱり、サダ達は運が付いてる。」

どうやら、目的を達成できたようだ。

石像の居た空間を調べてみると、幾人かの冒険者の遺体があった。

キオウ「これを探して、他にも来てたんだな。」

「ああ、あの戦鎚を喰らったら、自分達もこうなってたさ。」

そのギルドタグを回収する。

マレイナ「やった。扉が開くようになってるよ。」

キオウ「よし、ここから出よう。」


 それから更に、迷宮の先を探ってみたが、他に遺物を見付ける事はできなかった。

今回は、目的に見合った遺物が見付かっているので、これで街へ戻る。

2つの魔法武具を依頼主に渡し、幾つかの遺物をギルドに収める事により、報酬は1人

60ゴールド(6000シルバー)となった。

魔法の武具を手放すのは惜しいが、今回は依頼で頼まれた物である。

その代わりに、報酬で装備を新調するのも良いだろう。

戦鎚には攻撃力+3と気力奪いの効果が、兜は防御力+3と魔法防御+3の効果が付与されていた。

金属片も正体が解らないが、これもギルドに提出した。

ギルドでも、何に使う物かは判断ができないので、研究に回す事にしたようだ。

マグル「いや~、本当に助かったよ。依頼主も、大満足だった。今日は、奢るぜ。」

マグルらには礼を言われ、その日は御馳走になる事になった。


 その後しばらくは、マグル達と探った迷宮の付近を捜索の中心にして活動を続けた。

あわよくば、また魔法の武具が見付かると良いのだが。

とは言え、あの石像のような物を相手にするのは、自分らだけでは負担が大き過ぎる。

怪しい場所は避けよう。

あんな仕掛けがあるような場所を、滅多に見付ける事はできないのだが。

しかし、新たに遺物を見付ける事自体が難しい。

何とか前回に来た時に回収しなかった遺物を幾つか拾ったが、差ほどの値が付くとは思えない。

マレイナ「遺物、見付かんないね。」

ナルルガ「この前みたいな武器は、滅多に出るもんじゃないから。」

新たな発見を求めて、もっと奥へと向かうしかない。

場合によっては、迷宮内で一夜を明かす事も必要かもしれない。


今回は、その準備もしてある。

休憩場所は、隠し部屋の中と決めてある。

あの中であれば、魔獣が入って来る可能性も低いであろう。

捜索している内に疲労も溜まって来たので、計画通りに一夜を明かす事にする。

見付けた隠し部屋に入り込むと、軽く食事を済ませ、交代で見張りを立てて休む。

迷宮内で眠るのは、これが初めての事だ。

不安はあったが、何時しか眠りに落ちて行った。


どの位の時間眠ったのかは解らないが、揺さぶられて目を覚ます。

ナルルガ「起きて、交代よ。」

「何も無かったか?」

ナルルガ「大丈夫、物音1つしなかったわよ。」

石の床の寝心地は良くは無いが、疲労はそれなりに回復できたようである。

少し体が痛みを感じるが、大した事はない。

起き上がり、体を軽く動かしたり伸ばしていると、痛みも消えた。

水袋に入れてある水を一口飲むと、見張りに付いた。

先程まで見張りをしていたナルルガは、もう寝息を立てている。

(何も刺激が無いと、眠くなるな。)

皆を起こさないように体を動かしながら、周囲の気配を探る。

探索の技術も、このような時に役立つ。

数時間経ったであろうか。

皆、目覚め始める。

食事を取ると、再び探索を始める。


 探索再開の前にちょっと体力関係の説明をしておこう。

日常生活をしていても、当然に体力を使う。

だが、冒険者の活動で消費する体力は、そんな物ではない。

迷宮やその他の場所を歩き回れば疲れる。

その上、戦闘で武器を振るったり、魔法を使えば更に体力を使う。

そして、武器を振るって技を使ったり魔法を使えば、一般的な体力とは違い気力とでも呼べば良いのか、ある種の体の力を消耗するのだ。

その気力は、ある程度の休養で回復はする。

仕事の活動中も適度な休憩は取って多少の回復はできるが、迷宮内などでは休憩が中断される事もある。

一番確実に回復させるのは、町などの安全な所に戻って眠る事だ。

今回のように迷宮内で眠っても回復は可能だが、安全な場所での休息に比べれば時間も短く効果は少ない。

なので、普段は体力、気力が半減したなと思ったら街へ引き返す事にしている。

体力などは数値化はできないが、そこは経験と勘で感じ取るものだ。

さて、探索に戻ろう。


 正確な今の時間は解らないが、迷宮探索の2日目開始である。

再び迷宮内を遺物探しに彷徨う。

進んで行くと、通路の壁が傷んでいるようだ。

それだけ深い部分に来ているのかもしれない。

次に価値ある物が見付かるか、強力な魔獣に出会ったら引き返す事にする。

とは思うが、遺物も魔獣にも出会わない。

一度、また休憩を挟み、街へ戻る事にした。

今回は空振りであるが、収穫が0という訳でもない。


来た経路を辿って街へと向かう。

すると、何故か通路が行き止まりになっている。

(あれ? 路を間違えたか? そんなはずは。)

でも、通路が何かで塞がれている。

キオウが塞いでいる壁を軽く戦槍で突いてみる。

キオウ「岩とかじゃないな。よし。」

今度は、強めに突きを壁に放つキオウ。

壁がバラバラと崩れた。

「何だ? 崩れたぞ。」

何か30cm位の蟹のような生き物が、多数、床の上で蠢いている。

「うわっ、蟹だ。」

迷宮岩蟹めいきゅういわがにか?

迷宮内に住み、死んだり弱った獲物を狙う掃除屋でもある。

1匹1匹は恐ろしくはないが、目の前には数十の岩蟹がいる。

全員で攻撃して近寄る岩蟹を処理する。

何度も戦斧を振り下ろす。

バキバキと、迷宮内に岩蟹の甲羅を砕く音が響く。

やがて、地味な作業は終わった。

行きに遭遇しなかったのは、傷んだ通路の壁に空いた穴から湧き出したのだろうか?

小型の魔獣や生き物は、そのように迷宮内を移動したり身を隠している。

今後は、用心する事にしよう。

街に戻ると、ギルドで収穫物の清算をする。

持ち帰った遺物が1人9ゴールド、魔獣の討伐が5ゴールドになった。

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