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第163話「迷宮強襲戦」

 また、アグラム伯爵に呼び出されたので、城館へと向かう。

執務室に通され、伯爵の話が始まった。

アグラム「迷宮の半妖精らが、地上へと戻ろうとしているのは、彼らが地下に追いやられてからの悲願だ。だが、ここに来て、退魔師を含めたダラドラム王国との協力関係の確証を得た。今までは、放置して来たが、このままで地上と地下の両方を相手にするような事態は避けたい。よって、地下の奴らを鎮圧する。」

思い切った事をするものだ。

でも、鎮圧と言っても、皆殺しにでもするのだろうか?

アグラム「いや、そこまではする必要は無い。半妖精の全てが地上への帰還を望んではいる。だが、その内の過激な連中、ダラドラム王国と組んでまでそれをしようとしている奴らだけ排除して欲しい。半妖精の希望も、叶えてはやりたいのだ。ここで、禍根は絶っておきたい。」


アグラム「イルネには、別に指揮を取って貰うが、君達には、他の冒険者らと共に、先行して奴らの動きを探って欲しい。後から、兵を送り、奴らを地下から一掃する。抵抗するならば切り捨てても構わんが、降伏した者らは保護して地上に連れて来て欲しい。」

フォド「でも、彼らを地上に連れて来たとして、どこに住まわせるのですか?」

アグラム「その為の旧市街の再開発よ。まずは、あそこに住んで貰おう。既に、その居住場所は確保してあるのだ。」

その為の旧市街の再開発だったのか。

決行は、3日後と定められた。


 当日、自分らは、ギルドに向かった。

冒険者の先行隊は、約10人程を4組、半妖精の居住地域に派遣し、奴らの動向を探る。

そして、後発の本隊が、一気に奴らの本拠へと攻め込む。

先行隊は、途中の罠の解除なども行う。

本隊は、一団で送るのではなく、50名づつを6隊に分けて進撃させる。

それら隊をイルネやガラワンなどの騎士が指揮する。

先行隊は、本体が到着したら、それに合流する。

自分達は、マグルのパーティーと共に迷宮に向かう。

マグル「また、よろしくな。」

「マグルらと組めて、頼もしいよ。」

マグル「それは、こっちも同じだ。」

先発隊の各隊が、ギルドを出発した。

「無理するなよ。」

「おう、帰ったら、また飲もうぜ。」

先発隊が、それぞれの組に別れて迷宮の中に消えて行った。


目指すは、迷宮の深層、半妖精がいる地域だ。

そこへは、何度も近付いた事があるのだが、乗り込むのは今回が初めてである。

奴らが迷宮の中に住み着いてから、約250年。

その住処とは、どのような場所なのだろうか?

途中で、魔獣の襲撃を退け、魔鈴を使いながら迷宮の中を進む。

本隊も、魔鈴を使って進軍して来る予定である。

魔鈴の存在が、今回の遠征を思い至った理由でもあるようだ。

今までは困難であった、迷宮の深層へ短時間で到達する事ができるようになったのだ。

ただ、深層の圧に慣れない兵士もいるであろうから、その心配はある。

罠の解除もしながら、先を急ぐ。

そして、半妖精の居住地域の外郭に到達した。


特に、何か変化がある訳ではない。

そこは、迷宮の他の場所とは変わらないのだ。

だが、ここから先に踏む込めば、奴らの縄張りになる。

けれど、見た目で何か違いがある訳でもない。

気配を探るが、近くには何もいないようだ。

奴らも待ち構えているのか?

それとも、まだ異変に気付かないのであろうか。

本隊が到達するには、まだ時間がある。

周囲を警戒してみる。

動きは無い。

以前から、半妖精が出入りしている所を目撃された事もほぼ無いのだ。


その内、後ろに大勢が動く気配が伝わって来た。

本隊の到着である。

自分達の所へ来た兵士を率いていたのは、イルネだ。

イルネ「どう、変化は?」

「不気味な程に、静かだよ。何も動きは無い。」

イルネ「元から引き篭もるのが好きな連中だからね。じゃあ、兵が揃い次第、突入するわね。」

後続の兵らが到着した。

その数、100名。

深層に慣れない彼らに、しばらく呼吸を整えさせる。

準備ができたらば、魔鈴を鳴らし、兵士らを隠し扉の中へと潜入させる。

イルネ「いい、降伏した者は傷つけちゃダメよ。私たちは、殺戮者でも略奪者でもないから。」


突入した兵士らは、各所で抵抗に遭っていた。

そこかしこで、乱戦が繰り広げられていた。

だが、武装をしていない半妖精もいる。

そのような者は、制圧した区画に一時的に隔離させる。

不安であろうが、そこは慣れた兵士らが盛んに声を掛け、動揺を鎮めていた。

攻め込んだ兵らが、次々と半妖精の居住区を制圧して行く。

そして、その抵抗の激しい場所に、自分達は駆け付けた。

投降を呼び掛けるが、激しく抵抗する奴も幾人かいた。

使うのは、武器だけではない。

激しく呪文を投げ掛けて来る者もいる。

兵士らの被害が続出したので下げると、そいつらにこちらも魔法で反撃する。

居住地で、双方が魔法を放ち合う。

半妖精の魔法も、魔獣のレベルよりも遥かに高く、多彩だ。

それでも、半妖精の魔術師を1人2人と倒して行く。

後は、数で押し切るだけだ。


数の少ない半妖精は、各所で後退を続けていた。

既に、奴らの縄張りの半分は制圧し終わっていた。

半妖精も、単独の戦闘力は高いが、数を頼んだ集団戦では兵士らに勝ち目は無い。

兵士らは、そんな戦闘を想定して鍛錬されている。

迷宮の中で隠れて、魔獣やたまに冒険者と戦う程度の半妖精とは、戦いの技能がまるで違う。

抵抗が強い場所でも、いつの間にかこちらに分断され、各個に撃破されて行った。


そんな中に、何度か交渉して来た半妖精の姿を見付けた。

そこは、あの天井が明るくなった区画でであった。

キオウ「おい、もう降伏しろよ。」

「おお、そなたらか、またしてやられたようである。」

「抵抗しても無駄だぞ!」

「我らにも、意地もあるのである。降るくらいならば、死を選ぶのである。」

見覚えのある半妖精と直接に刃を交わした。

やり難い相手だが、向こうは本気だ。

手加減できる相手ではない。

幾度か、剣を交わすと、奴を切り捨てた。

「無念。だが、致し方なし。」

奴の開いたままの目を閉じてやった。


更に、討伐軍は、半妖精の抵抗を排除し、制圧地域を広げて行った。

だが、突然に兵士らの被害が増えた。

半妖精の反撃か?

そこへ自分らも駆け付けた。

そこには、異形のモノがいた。

(何だ、あいつは?)

人の背丈より少しばかり大きく、巨大な腕を持つ何かが何体かいた。

(まさか、魔獣を呼び出したのか?)

だが、そうではないようである。

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― 新着の感想 ―
[一言] とっくに国が滅んでいるのだから、単に地上で生活をしたいって言う程度の願望におさまっていてくれたら良かったのにねぇ…… たかだか半妖精程度の人口では街一つすら制圧出来ない気がするわ。
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