第159話「退魔師の捕縛」
発生した大食い鬼を討伐した後、逃げ去る一団を見付けた。
それを追い詰めて行くと戦闘になった。
既に、反撃して来た3人は倒して、あと残るのは3人だ。
フードで顔を隠した3人の内、2人は武器を抜くと攻撃して来た。
どうやら、もう1人を庇っているようなのだが。
数はこちらの方が多い。
相手に逃げられないように、緩やかに囲んで行く。
キオウ「おい、諦めたらどうだ? この状況じゃ逃がしはしないぜ。」
だが、それに答える事は無い。
奴らは、無言で切り掛かって来たが、それを囲んで討ち取る。
馬の扱いが上手くない奴は逃げようとしたので、石礫を叩き付けて落馬させた所を捕まえた。
護衛役の2人も、まだ息があるので捕縛した。
その傷は、フォドが呪文で癒す。
騎乗の下手な奴のフードをめくると、頭にはあの黒い石の冠があった。
そして、鞍に結び付けた袋の中身を確認すると、魔族の頭の入った容器があった。
イルネ「後で、いろいろと聞くわよ、退魔師さん。」
退魔師と呼ばれて、そいつは少し驚いた様子であった。
奴らの馬を探し出し、4頭を捕まえた。
その背に捕縛した奴らを乗せると、ニナサの村に引き返す。
出迎えた村長らに事情を説明すると、慌ただしく捕虜を連れてハノガナの街に急ぐ。
故郷に帰って来たのだから、もう少しゆっくりしたかったのだが。
マレイナ姉妹を少しばかり先行させ街道の先を警戒して貰ったが、異常は無く無事に街へと到着した。
アグラム伯爵の城館に入ると、捕虜を兵士らに預け、伯爵の執務室に向かった。
アグラム「そうか、魔獣共を倒しただけでなく、退魔師も捕らえたか。君達を派遣したのは正しかったようだな。」
イルネ「ええ、この前、南部にも行ったばかりでしたが、今回は成果がありました。」
アグラム「そう言うなよ。君ならば、こういう事を任せて安心だから、頼るのだよ。」
イルネ「期待に添えて、嬉しく思います。」
アグラム「それにしても、ニナサの村で魔獣を呼び出すとはな。あの村の守りは薄いが、この街の近くでやられるとは、舐められたものよ。偶然、君達がいてくれて助かった。」
そう、あの場に自分達がいなければ、村に被害が出た事であろう。
あの村には、ギルドが無い。
いるのは、引退した兵士ら位なのだ。
アグラム「ニナサを含めて、兵のいない場所は巡回を強化させよう。さて、これからお客人の尋問を始めさせるとしよう。」
幸いな事に、捕虜の尋問は別に担当する者がいる。
自分らは、魔族の頭を使った魔道具をアデト魔法学園に持ち込み、調査を依頼した。
イルネ「慌ただしい一日だったわね。少し何日か休みましょう。」
疲れた体を引き摺り、自宅へと戻る。
1日だけ休養を取ると、伯爵の城館に向かう。
イルネに出会ったので、捕虜にした退魔師らの事を聞いてみる。
イルネ「相変わらず、口は堅いわ。護衛の2人は、またロットラム王国人の傭兵だったわね。」
また、あの国の傭兵か。
利用されてばかりで気の毒だが、あいつらはこちらを殺す気で向かって来たのだから、同情するつもりはない。
金で雇われたとは言え、魔獣を方々で嗾けて来るような連中でもあるのだ。
その為に、少なからず被害は出ている。
ニナサの村も、被害が出た可能性もあったのだから。
「尋問は、まだ続けてるのか?」
イルネ「そうね。傭兵らは、もうしばらくね。退魔師の方は、永遠に続くのかもしれないけど。イナール大森林で捕まえた奴も、向こうで今も取り調べているはずよ。」
キオウ「えっ! まだやってるのか? あれから、もう半年は経ってるぞ。」
イルネ「どこの誰かも解らないのだから、返しようも無いわね。早く解放されるといいけど、あいつの協力次第でしょうね。」
「話さないと、解放は無い訳か。」
イルネ「ええ、大事な事を知ってる人物ですから、そう簡単に解放はされないでしょうね。ただ、今回の人はどうかしら?」
「話しそうな素振りはあるのか?」
イルネ「そう、どこか不慣れなようにも見えるのよ。まだ、そんなに経験を積んでないような。」
フォド「退魔師にも、そんな未熟な者が?」
イルネ「もしかして、これだけ各地で騒動が起きているという事は、あちらも人手不足なのかもね。こっちも大変だけど。」
そうだ、魔獣の発生は、ラッカムラン王国だけでなく、ハルム王国でも起きていると、情報が来た。
連中は、幾つ魔族の魔道具を持っているのだろうか?
アデト魔法学園からも、報せが来た。
あの魔道具についてだが、使い方が解らないそうだ。
アグラム伯爵とも相談した上で、ケリナ魔法学院へ送られる事となった。
その使いを自分達が命じられるかと思ったが、別の騎士がその任に就いた。
アグラム「君達には、万が一に備えて、ハノガナの街に残って欲しい。」
そう伯爵には言われた。
イルネ「残念ね、キオウ。折角、ナルルガに会えると思ったのにね。」
キオウ「何でだよ。この前も会ったばかりだろ。それに、もう講義も始まってんだから、邪魔しちゃ悪いだろ。」
ディーナ「まあ、そういう事にしておきましょうね。」
キオウ「何だよ、2人共。」
今回は、自分らのケリナの街行きは無くなってしまった。
ナルルガもフェムネらも、元気にしているのだろうか?
魔獣の群れの出現を警戒しつつ、迷宮に向かう日々を再開させた。
退魔師も、まだ口を割らない上に、ケリナからもまだ魔道具についての情報も無い。
そう簡単に、上手く行くものでも無いのだろう。
迷宮の内部は、今は変化は無い。
半妖精の活動も収まったのか、冒険者の被害も今のところは減っている。
だが、半妖精絡みだけでなく、冒険者が負傷するのは日常的な事でもある。
故に、被害が完全に無くなった訳ではない。
それでも、迷宮が普段の状態に戻ったように感じられるのだ。
迷宮に潜れば、やる事は変わらない。
魔獣と戦い、遺物などを探す。
そこに、最近は、魔鈴を使って、新たなルートや隠し部屋を探すだけである。
冒険者としてのそんな日常を送っていると、思わぬ場所から情報が入った。
ヘルガ「旧市街の復興地区の人に聞いたんだけど、夕べ、迷宮に向かう人を見たんですって。」
態々、夜になって迷宮に向かうとは珍しい。
迷宮内は、昼も夜も関係無いが、習慣的に、朝にギルドに向かい依頼を受注し、夕方には街に戻る冒険者が圧倒的に多い。
何か、特別な目的があるのだろうか?
ヘルガ「いいえ、それが冒険者じゃないみたいなのよ。夕方とかに依頼を受けた人もいないから。それでね、何でも、フードを被った一団だったみたいなのよ。妖しくない?」




