第158話「アデレード地方の異変」
街へ戻ると、他の同じ依頼を受けているパーティーが次々に帰って来た。
そして、その探索した結果を報告し合う。
他にも、半妖精の物と思える住居に到達したパーティーはいた。
それらの情報を元に、連中の住居地の全容を調べて行く。
そして、凡その奴らの居住場所が判明していく。
その範囲から想定して、300人から500人はいるであろうと想像できた。
その内で、戦闘に参加できる者は、やはり100~150程度か。
調査結果から、ナガムノの説明が行われる。
ナガムノ「今の段階で、直ぐに半妖精らと事を構えるつもりは無い。だが、知っての通り、国内でも魔獣の続出が各地で起きている。それに合わせて奴らも動くならば、その時は断固とした行動をこちらも取る事になる。その時には、冒険者の手も借りたいと領主も言っておられる。もしも、そのような事があれば、また手を貸していただきたい。」
半妖精の行動圏が確認された。
だが、こちらからは無用な刺激を与えないように、通達も出された。
元から、近付きたい相手ではないのだが。
奴らも、こちらが大規模に冒険者を投じた事を警戒してか、その動きが鈍っているようだ。
このまま大人しくしてくれれば良いのだが。
また、迷宮に挑む、普通の活動に戻った。
だが、各地での魔獣の発生は続いている。
その対応に、各地方も大変なようだ。
そして、今まで平穏だったアデレード地方にも、そんな魔獣の騒動が起きる事となる。
アデレード地方の南部で、魔獣の群れが出現した。
その事が、早馬でアグラム伯爵に伝えられた。
「南部の町村で、大食い鬼の群れが出現した。」
との報せであったが、直ぐに現地の兵士や冒険者により鎮圧されたようだ。
アグラム「一応は、片付いたようだが、南部周辺を君達に見て来て貰おう。」
伯爵に城館に呼び出され、そのまま馬に跨り出発した。
イルネ「南の方も、少し前に行ったばかりなんだけどね。」
馬を走らせ、ニナサの村の近くを通過した。
今回は、立ち寄る時間も無い。
急ぎに急いで、日が暮れた頃に、マナイアの町に着いた。
ここは、風翔竜討伐以来である。
何とか、宿屋を確保し、この日は食事をして終える。
翌朝、ギルドに向かうと、情報を集めた。
大食い鬼の群れは、ここの近くにも出たらしい。
「30匹位の群れが幾つか、周辺の村にも出たのよ。ここは、町の周辺の畑が荒らされた程度で済んだんだけどね。」
ここの町のギルドの受付嬢、カンマナが説明してくれた。
彼女に会うのも久し振りである。
魔獣から剥ぎ取った魔票は、既にハノガナの街に送られていた。
その現場を馬で回って行く。
痕跡を探すが、戦闘の痕跡があるだけだ。
キオウ「手掛かりらしい物は無いな。やっぱり、ここにも退魔師が来てたのか?」
フォド「多分、そうでしょうね。各地で起きてますから、幾つかの班に別れて活動してるのかと。」
全く面倒な奴らだ。
それが、次にどこで起きるのか、こちらには予想が付かない。
普段から、魔獣がいる所など無数にあり、魔族を使った魔法具があれば、どこでも奴らには魔獣を呼び出せるはずだ。
見回ってみたが、手掛かりは無い。
ギルドに戻り、カンマナにも魔票の事、それから魔獣を呼び出す魔道具の事なども説明した。
イルネ「頭に黒い石を嵌めた冠を被った奴がいたら、そいつが魔道具を扱っているわ。そいつも含めて、護衛もフードで顔を隠していると思うわ。護衛は、冒険者や傭兵上がりの連中だから、注意してね。奴らも人目は避けて行動してるけど、食料とか求めて町に出て来る可能性もあるから。」
カンマナ「解りました。所属の冒険者らにも警告を出します。」
この町の周囲からは、奴らはいなくなったようだが、もう少し南部を見て回る事とした。
ギルドが無い、小さな村などを中心に回り、周囲も警戒する。
だが、手掛かりは無い。
何度か発生した魔獣の群れも、ぱたりと出なくなった。
キオウ「もう、別の場所に移ったんじゃないのか?」
イルネ「それだといいけど。」
フォド「ハノガナの街には、領主もいますし冒険者も沢山いますから、対象外のようですね。」
イルネ「そうね。あそこはいいけど、この地方だけでも、全体を守るのは不可能だから、嫌なやり方よね。」
今回は、収まったようだが、どうなのか?
そうだ、帰りに、ニナサの村に寄ってみよう。
あそこも、ギルドが無い。
ハノガナの街が近いとは言え、助けを求めても1日は掛かるだろう。
ハノガナの街に向かい北上し、ついでに故郷に立ち寄る事とした。
久し振りの故郷、ニナサの村である。
村は、以前と変わりなく、馬を村長の家の前に止めた。
「おお、サダ、帰って来たか。元気でやってるか? 見る度に、立派になっているな。」
挨拶を済ませると、村長や村の代表らに魔票の事を話した。
「そうか、そんな物で魔獣を。で、最近、方々で群れが出て来るのだな。よし解った。ここでも警戒はしよう。」
そんな話をしていると、村長の家にトルドが慌てて飛び込んで来た。
再会の挨拶もする前に、
「出た。魔獣が畑の周辺に!」
タイミングが良かったのか、悪かったのか、大食い鬼の群れが村はずれの畑に出たようだ。
急いで現場に馬に跨り向かうと、
キオウ「おう。いるいる。ざっと50匹か。」
数は、少々多いが、やるしかない。
逃げ遅れた村人らを退避させて、魔獣の群れに向かう。
光の円陣を皆で唱え、大食い鬼の群れを呪文で囲む。
魔票の支配から解放されて、動きを止めた所へ遊光球を連続で叩き込む。
しばらく使い込んでいた呪文なので、光球の数も多く出せるようになっている。
一瞬で半数の魔獣が呪文で消し飛ぶ。
更に、岩塊弾や他の呪文を連発し、更にその数を半分に減らす。
そして、背中を見せ始めた大食い鬼へ切り掛かる。
奴らは、既に逃げ始めているが、ここで逃すと後が面倒だ。
馬で追い縋っては、次々と切り倒して行く。
駆け付けてから、10分もしない内に、全ての魔獣を倒した。
イルネ「あれ、あそこに向かうわよ!」
イルネが、何かに気付いたようで、馬を森の中に乗り入れて行く。
それに、皆で続いた。
この森は、バロの魔犬と遭遇した場所なのだが。
森の木々の間を馬で逃げる人影が、前方に幾つか見えた。
その背のフードが目に付く。
(あいつらか)
互いに馬で走るが、向こうの1人は、馬の扱いが苦手なのか、遅れ始めた。
すると、奴らの内、3人がこちらに馬を向けると、猛然と突っ込んで来る。
「イルネ、ディーナ、前の奴らを追ってくれ!」
引き返して来た奴らを迎え撃つ。
互いに馬上で武器を構えると、すれ違いざまに切り付ける。
なかなかに、鋭い攻撃を繰り出して来るが、それを弾くと、こちらも剣を繰り出す。
相手も長剣だが、馬上ではキオウの槍が冴えわたる。
キオウが1人を馬から叩き落とすと、他の奴らも追い詰める。
そして、3人のフードで顔を隠した襲撃者を切り倒した。
止めを刺すと、先行するイルネらを追う。
追い付くと、そこでも馬上の戦いが繰り広げられていた。
相手は、馬の苦手な奴を2人の護衛が庇っている。
守られた奴は、何か大きな袋を鞍にぶら下げていた。
(あの袋は、もしや?)
数はこちらが有利になり、相手を圧倒して行く。




