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第157話「迷宮深層、共同探索」

 迷宮内での冒険者の被害の続出。

その相手は、半妖精に思える。

それを確認する為に、ギルドは特別な依頼を出した。

「複数のパーティーを持って、同時に半妖精が出没する地域の捜索を行う」

これで、奴らの意図が掴めると良いのだが。

深層まで、同じルートで複数のパーティーが進んで行く。

もし、途中で魔獣に遭遇して戦えば、先頭を交代して負担が集中しないように工夫する。

そして、深層に到着すると、枝分かれする場所でパーティー毎に分散する。

次々に、冒険者らと別れて行き、最後には、自分達だけになった。


半妖精の動向を探りながらの探索だが、他の魔獣にも当然ながら遭遇する。

また、罠も相変わらず仕掛けてもある。

そんな罠は、相手を構わずに作動するから、設置されている事を知らない魔獣が掛かる事もあるのだが。

そして、魔傀儡も、所々に置かれている。

それら全てへの対処をしながら、迷宮を進むのだ。

キオウ「普段よりも、キツイな。」

過去にも、たまに罠が数多く仕掛けられた地域もあった。

魔獣の密集度が高い所もあった。

今は、それが全て重なっているように思えるのだ。


だが、その黒幕だけは、巧妙に隠れていて姿を現しはしない。

ならば、罠も魔傀儡も、見付けた物は全て破壊してやる。

奴らのここ最近の努力を全て無にしてやれ。

何カ所からの罠を破壊し、魔傀儡も倒したが、半妖精の姿も見えなければ、居住場所なども見付かりはしない。

そう簡単には、遭遇する事は無いようだ。

こちらが大規模に動いている事を勘付いて、隠れた可能性もある。

今回の探索は、空振りに終わったようだ。


 ギルドの特別依頼の初回は、こうして終わった。

完全な失敗とまでは言えないが、目的を果たす事はできなかった。

また、連続で行っても効果は無いであろうという事で、次回の同様の依頼は未定とされた。

ヘルガ「ギルドとしても罠などを排除できたし、これが半妖精側に圧力を掛けた事になれば、それで充分よ。」


結果的に、効果はあったのかもしれない。

これ以降、冒険者の被害は減った。

新たに、設置された罠が見当たらなくなり、魔傀儡の出現も無くなった。

迷宮の中は、元に戻ったようだ。

だが、それは本当に、そうなのか?

キオウ「何か、邪魔くさいのが消えたな。」

マレイナ「うん、魔獣がいるだけで、魔傀儡も出なくなったね。」

フォド「しばらくは、半妖精も大人しくなりそうですね。」

迷宮内の事は、落ち着いたようだが、他の場所では、面倒な事が起き始めていた。


 ハノガナの街へも、国内の情報は、早ければ2,3日、遅くとも10日もすれば伝わって来る。

そして、今回も時間差はあったが、噂が幾つも流れて来た。

「国内の各所で、魔獣の群れが急に発生し、町村が襲われている。」

そんな噂が、各所から聞こえて来て、また伯爵からも教えられた。

出没する魔獣の数は50匹程度らしいが、冒険者ギルドの無い小さな村もあれば、兵士の配置が少ない場所もある。

そのような場所では、対処は大変だ。

人手が足りない場所は、近隣から兵士や冒険者を集めて対応していた。

そんな噂が、国内の各所で幾つも伝わって来た。

魔獣の群れは、魔票に操られていた。

だが、魔獣相手なら、特別な呪文が使えなくても、充分な兵力があれば対抗もできる。

それで、各地の領主らが、警戒体制へと入った。

このアデレード地方でも同じで、アグラム伯爵も領内の兵士や冒険者に警戒するように求めていた。


ただ、伯爵の対応は、魔票で操られる魔獣に対してだけではない。

何日か過ぎた頃、自分らは、幾つかのベテランの冒険者のパーティーと共に、ギルドマスターのナガムノに呼び出された。

彼のギルド内での部屋に向かうと、指名で依頼を頼まれた。

ナガムノ「君達には、半妖精の住居地を特定して欲しいのだ。これは、領主からの依頼である。よろしく頼む。」

今回は、伯爵からの依頼ではあるが、他のパーティーと共に達成するように求められた。

ナガムノ「今回は、共同の依頼であるから、諸君らのどのパーティーが達成できても報酬は支払う。勿論、あいつらの居住地を見付けた所には、相応の報酬が追加される。」


前回よりも参加するパーティーは減ったが、その依頼内容はより危険性を増しているだろう。

イルネ「伯爵は、魔票を使った騒動と、半妖精らが呼応して行動を起こす前に、対処法を見付けておきたいのよ。連中が騒ぎ出しても、その居場所が解らないのでは、解決も難しいからね。」

今まで、どちらかと言えば避けていた、半妖精が集落を作っている場所を求めて行く。

前に、地下の住居跡を見付けたが、あのような物にあいつらは住んでいるのか?

奥へと向かうと、しばらく遭遇していなかった魔傀儡にも遭遇するようになり、そいつらを倒して、もっと奥に向かう。

フォド「また出て来ましたね。という事は、居住地が近いのでしょうか?

進んで行くと、水の流れる音が聞こえて来た。

そして、目の前に地下水脈が横たわっていた。

キオウ「ここを越えないと、あいつらの所に行けないんじゃないのか?」

探してみても、橋などは無い。

どこかに、この川を渡る場所があるはずなのだが。

地下で、安易に水の中に入るのも危険だ。

どこに、魔獣が潜んでいるのかも解らないのだ。

一度戻り、迂回できる場所が無いのか探ってみる事とする。


戻りながら、行きよりも魔鈴を鳴らす頻度を増やす。

すると、見落としていた隠し扉を見付けた。

その壁をすり抜けて進むと、いつの間にか、登り道へと変わった。

登ると、そこは水平に変わり、また下りに変わった。

方角的に、川の方に向かっているようなのだが。

そして、道が行き止まりになったので、魔鈴を再び使い出口の扉を探す。

そこを見付け、すり抜けて出ると、水の音が聞こえた。

どうやら、先程の水流を越えられたようだ。

奥の方角に向かうと、また魔傀儡に遭遇したので、それを排除した。

皆、何も言わないが、目的地が近いと感じていた。

そして、魔鈴で開けた先には、人口的な扉が設置されていた。

罠や鍵は無いが、最近も使わている物らしく、ドアノブを回すと音も無く扉が開いた。

その先に、納屋のような物が見えた。


ここまで確認したら、別のルートを探し、生活の痕跡を見付けては、記入しかけの地図に記録して行く。

まずは、居住地の規模を探って行く。

納屋や資材置き場が、居住区の外縁に作られているようだ。

半妖精には、遭遇しない。

いや、今はまだ会いたくはない。

記録が一通り終わると、地上を目指して引き返す。

後は、他のパーティーの成果と情報を合わせて行き、その規模を探るのみだ。

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