第122話「救出と再会」
ラドガ渓谷の奥まった所で、ディーナら昨日から町へ戻って来なかった冒険者らに出会えた。
フォドらをディーナらが逃げ込んでいた洞窟に送り込み、負傷者らの回復を頼んだ。
そして、回復を終えた彼女らが出て来た。
一目見て、ディーナがマレイナの姉だと解かった。
2人は、よく似ている。
髪と目の色は同じだ。
ディーナの方が、少しばかり背が高く、髪も長い。
だが、2人並べば、そっくりだ。
ディーナ「皆さん、助けていただいて、ありがとうございます。私が、マレイナの姉のディーナです。」
彼女らは、ラドガ渓谷で採掘の依頼を達成する為に来たらしい。
それが、魔獣らと遭遇し、いつの間にか、包囲されてしまった。
仲間に負傷者も出たので、洞窟の中に逃げ込んで、中で防戦していたそうだ。
ディーナ「それにしても、こんなに早く助けに来て頂けるとは思いませんでした。しかも、救援に来ていただいた中に、妹までいるとは。」
彼女には、自分達がここに来た経緯も説明した。
ディーナ「そうでしたか。元から私の事を。でも、その偶然に感謝いたします。」
この場所は、まだ危険があるかもしれないので、町に向けて後退を始める。
道中、ディーナらには、持って来ていた食べ物などを提供した。
ともかく、彼女らと無事に出会えて、良かった。
帰り道は、あれ程にいた魔獣が出て来ない。
やはり、あの数多くの魔獣は、何らかの方法で魔族らが呼び寄せていたのだろうか?
しかし、何の為に?
もしやと思い、ディーナらに発掘した鉱物がどんな物なのか聞いてみた。
彼女らが採取した鉱物は、何種類かあるようだが、黒凰石が多いと言う。
(もしや、黒凰石が魔族を呼ぶのか?)
確定では無いが、その可能性はあるかもしれない。
これは、ギルドにも報告しておいた方が良いかもしれない。
また、ケリナ魔法学院や、アグラム伯爵へも報せておこう。
その報せを受けて、伯爵がどんな反応をするのか解らないが。
イルネ「いいわよ。また、新たな可能性を見付けたんだから。」
黒凰石は、ハルム王国でもよく採れる鉱石なのだろうか?
フランにも、報せるべきなのか?
町への帰り道、マレイナとディーナがいろいろと話していた。
マレイナ「姉さんが、ディーナって名乗っていたから、すぐに解かったよ。でも、顔を見るまでは、別人だったらどうしようかと思ってた。」
ディーナ「私の方も、ラバン地方とか、その他の場所にあなたに似た人がいたとか噂は聞いたけど、確実な情報が無くてね。でも、アデレード地方にいるなんて、全く聞いて無かったわよ。」
マレイナ「ハノガナの街の西側に、まだどこの国にも属していない地域があってね。そこに幾つか開拓村があるんだけど、そこの1つに、ユギがいたんだよ。」
ディーナ「ユギが? 彼も無事だったのね。良かったわ。」
マレイナ「みんな、無事なのかな? ねえ、どう思う?」
ディーナ「そうね。余り悪い事は考えたくないけどね。」
マレイナ「うん、そうだよね。」
ラドの町に、無事に辿り着けた。
ギルドに入ると、驚きと喜びの声で迎えられた。
今回、ディーナらが遭難したとギルドは判断をまだしてはいないので、その救出に報酬は出ないが、そんな物が無くてもいい。
それが無くても、今回は魔獣の討伐数がかなりの数になっているし、鉱物を少しばかりは採集して来た。
今日は、ディーナらも疲れているであろうから、明日、話し合いをする事とし、解散となった。
翌日、ギルドに向かうと、ディーナらも来ていた。
ディーナ「改めて、礼を言わせてください。皆さん、ありがとうございました。助けていただいただけでなく、妹まで連れて来て頂いて。」
ディーナの仲間らも、口々に礼を言ってくれた。
立ち話も何なので、この時間に開いている店へと移動した。
ディーナらも、魔族に関する疑問を持っていたようなので、自分達が今までに掴んでいる奴らの事を説明してやった。
ディーナ「そうなのね。魔族なんて、昔に滅んだか、今は珍しい相手だと思ってたけど、そんなにいるのね。それから、あいつらが魔獣を呼び寄せたり、召喚する事もできるなんて。」
黒凰石についても、今までに解っている情報を伝えた。
ディーナ「なるほどね。それを知らずに、私たちは、それを集め過ぎてたのかもね。これからは、注意をしないと。まだ、ここらで発掘は続けたいからね。」
ディーナらは、ギルドからではなく、ある商会から発掘を依頼されているらしい。
商会と言っても、武器屋だそうで、彼らが鉱物を欲しがる事に疑念は無い。
しかも、黒凰石は、今回の依頼には入ってはいないそうだ。
ディーナ「黒凰石は、ギルドに買い取って貰うつもりだったから。それは、ついでの稼ぎみたいな物ね。」
ディーナらが、今の鉱物集めに、あとどの位の期間が必要か聞いてみた。
すると、あと1週間もすれば、充分に集まるであろうと言われた。
マレイナ「それが終わったら、お姉ちゃん、どうするの?」
ディーナ「終わっても、特に他に予定は無いわ。」
ディーナの都合を聞いてみた。
今の組んでいる仲間も、たまたまこの数ヵ月、活動を共にしていただけで、彼女は彼らのパーティーには入っていないそうだ。
自分達と、イルネの関係に近いかもしれない。
ディーナは、今まで、ほとんどどこかのパーティーに所属して活動をした事は無いそうだ。
マレイナ「なら、お姉ちゃん、私達と一緒にハノガナの街に来ない?」
ディーナは、黙っていた。
黙って、考えているようだった。
ディーナ「そうね。それもありかな? でも、答えは、採掘が終わるまで待って貰ってもいいかな?」
翌日から、またディーナらは採掘を始めた。
自分達も、ラドの町での依頼を受ける日々が続いた。
ここでの依頼なので、発掘や魔獣の討伐が主な仕事だ。
黒凰石の採り過ぎには注意しながら、働いた。
キオウ「なあ、黒凰石がどの位集まると、魔族が感知するのかな?」
「さあな、5個なのか、10個なのか、それとも、もっとなのか。」
マレイナ「姉さん達は、10個以上掘ってたみたいだね。」
イルネ「でも、それを持ち帰る時には、襲って来なかったわね。」
フォド「もしかして、ここら辺の魔族は、あの時に全て倒したのでしょうか?」
キオウ「奴らの事は、まだまだ解かんない事が多いな。結構、気まぐれなのかもな。」
マレイナ「その辺り、キオウに似てるかもね。」
イルネ「そうそう、そっくりかも。」
キオウ「何だよ、2人共。ったく、悪口ばかりの奴がいなくなったと思ったら。」
イルネ「そうね。それが寂しいのよね。」
採掘の方は、順調だ。
ここは、鉱物の多い地域のようだ。
だが、魔獣の出没が多く、普通の鉱夫らは、余り近付かない場所のようである。
自分らも、魔獣によく遭遇した。
だが、魔族には、あれ以来は出会ってはいなかった。
本当に、この辺りの魔族は、ディーナを助けに駆け付けた時に一掃できたのだろうか?
「キオウの言う通り、魔族の事は予想ができないな。」
キオウ「そう思うだろ。やっぱり、そんな所が人とかとは違う考え方をするのが、奴らなんじゃないのか?」
フォド「でも、黒凰石で魔族を誘き出せるのであれば、対策も可能なのでは?」
それは、そうかもしれない。
機会があれば、試してみるか?
だが、ここで、今、試すのはどうかと。
ディーナらの二の舞になる可能性もあるだろう。
数日が過ぎ、ディーナらの鉱石集めが終わったようだ。
集めた物の納品先の商会は、メルアノの街にあると言う。
オレ達も、彼女らと共に移動する事にする。
それと、マレイナの元に、フランから文が届いた。
マレイナ「ハルム王国に来ているなら、パシコの町にも来れないかだって。」
フランは、パシコの町での任務もあるので、現地を離れられないようだ。
彼女に会うには、こちらから向かうしかない。
今更、多少の寄り道を加えても、問題は無いだろう。
まずは、メルアノの街に向かうのが先だ。
メルアノの街に到着し、ディーナらは商会に納品に向かった。
自分達は、やる事も無いので、ギルドに向かいとりあえず登録を行った。
ギルドで、他の冒険者らと情報交換をしていると、ディーナらの用事も済んだようだ。
さて、これから、何をするか?
自分達は、ディーナがどうするかは別に、パシコの町に行くつもりである。
ディーナ「あの、この数日、仲間らと話し合って来たのですが、皆さんが良いのであれば、妹と一緒に行動したいのですが。」
それって、つまり?
ディーナ「ハノガナの街に、私も行きたいです。お願いします。」
そして、仲間らにも、
ディーナ「みんな、今まで、ありがとね。私、やっぱり、家族と一緒にいたいの。」
マレイナ「お姉ちゃん、ありがとう。」
「よろしく、ディーナ。」
キオウ「おう、歓迎するぜ。」
フォド「よろしく、お願いします。やっと、私も後輩ができるのでしょうか?」
ディーナ「こちらこそ、よろしくお願いします。妹に続いて、お世話になります。」
その日、メルアノの街で、ディーナの歓迎と、元仲間らとの送別を行った。
そう言えば、こういう会合みたいなのをするのは、いつ以来かな?
ディーナの元仲間になる冒険者らは、このままハルム王国の南部周辺での活動を続けるそうだ。
ディーナを引き抜くような形になってしまうのは申し訳ないのだが、彼らも、「本当は、パーティーに入って欲しかったけど、彼女は今まで、フリーの活動が中心だったからな。これで、落ち着く先が見付かるなら、その方がいいさ。」と言ってくれた。
ディーナ「迷惑掛けるね。みんな。」
「そんな事は無いさ。人には、それぞれ事情があるからな。元気でやれよ、ディーナ。妹さんに会えて、本当に良かったじゃないか。」
そして、翌日、元ディーナらの仲間らに見送られ、自分達はメルアノの街を出発した。
次の目的地は、パシコの町だ。




