第108話「広がる地下遺跡」
シロノリアの町の川沿いにある遺跡、その中に地下へと続く通路を見付けた。
その先には、大昔の住居跡が存在した。
自分達は、ナグトアン子爵が派遣して来たグランマドらと、そこを調査する事にした。
グランマド「子爵も驚いていたぜ。ここの調査は、もう何年も前に終わったと思ってたらしい。それを新たな場所を見付けちまうとは、あんたら持っているな。」
エルノア「ええ、子爵は、大層驚いてましたから。遺跡に、そんな部分があったのですね。」
派遣されて来たのは、グランマドら6人だ。
皆、子爵の城館で、呪文などを教えた相手だから、顔見知りである。
町から川へ降りると、2艘の渡し舟に別れて対岸に渡して貰う。
そして、あの地下への入口へと向かう。
川沿いを歩き続け、地下への入口へと入る。
住居跡に着くと、グランマドらと二手に別れ、この区画を外周を左右からそれぞれ探る。
すると、別の場所へと通じる通路を発見した。
キオウ「思ったより、広がってるみたいだな。」
フォド「ええ、遺跡は川に沿った場所だけではなく、周囲に広がっているようですね。」
他にも、通路が何カ所かあった。
一度、グランマドらと合流しよう。
グランマド「こっちも、何カ所か枝分かれした所があったぜ。こりゃ、全体はかなり広いんじゃないのか?」
エルノア「ここのような町が、この他にも幾つかあるのでは? 何で、このような規模の住居を地下なぞに?」
イルネ「今以上に、昔は、魔族らが脅威だったようよ。それで、ワイエン王国は、ハノガナの街の地下に都市を造ってたのよ。それが、今じゃ迷宮になってるけど。」
グランマド「ここも、同じような理由で造ったのか?」
ナルルガ「可能性は、あると思うわ。」
枝分かれした通路を二手に別れ、別々の場所を探る事とする。
自分達も、新たに見付けた通路を進む。
すると、通路が広がり、また別の住居跡に出た。
キオウ「やっぱりあったな。ここも地下に町を造ってたんだな。」
フォド「ええ、規模は、ハノガナの街と変わらないくらいあるかもしれません。」
マレイナ「ここ、本当に魔獣は、いないのかな?」
まだ、その気配は無い。
だが、ここを住処にしていてもおかしくはないだろう。
歩いていると、石造りの家の角に、また魔獣に似せた石像がある。
神殿以外にも、設置しているらしい。
石像は、魔除けの為なのだろうか?
その像の近くを通り過ぎた後であった。
「ごとっ」
小さな音が聞こえた気がした。
振り向くと、あの石像が立ち上がろうとしていた。
「こいつ、本物だぞ!」
慌てて武器を構える。
気配はしなかった。
間違いなく、前を通った時には石像であったはずである。
マレイナも急な変化に驚いた様子である。
マレイナ「さっきまで、何の気配も無かったよ。」
石像が、完全に立ち上がり、その羽根を羽ばたかせた。
ナルルガが、光の円陣の呪文を放つ。
膝を付き、苦しそうにもがく石像。
そこへ、剣で切り付けて行く。
硬い体だが、石とは違うようだ。
剣でも傷が付く。
振り回す奴の腕を避けながら、次々と斬撃を加えて行く。
やがて、崩れるようにして奴は倒れた。
奴の体を探ってみたが、魔票は見付からない。
ナルルガ「石像が動いたんじゃなくて、石像みたいに見える魔族だったみたいね。なんか、ややこしい奴ね。」
フォド「他にもいそうですね。注意しましょう。」
「あの石像、ここに住んでた奴らが置いたんじゃないのか?」
イルネ「どうなのかしら? 住人がいなくなってから、奴らが入って来たの?」
キオウ「魔族を避けて、地下に潜った奴らが、魔族を祀るのは考え難いよな。別の意味があるのか?」
その後も、町中で、石像を見掛けた。
動き出す前は、切り付けても、ただの石像でしかない。
だが、その場を離れると、また動き出した。
キオウ「何か、仕掛けとかあるのか?」
「さあな、こっちの隙を待ってるのかもな。」
光魔法を使えば、それ程に強い相手ではない。
光の円陣に閉じ込め、力を奪い、そこを切り付ければ問題無い。
あとは、住居跡で、遺物を見付けては回収できる物は持ち帰る事とする。
この住居跡も、また別の場所に分岐してる。
キオウ「広いな、ここ。もう1ヶ所、覗いてみるか?」
新たな通路を進むと、また住居跡に出た。
マレイナ「凄いね。こんなの幾つあるのかな?」
だが、新しく見付けた場所は、他とは様子が違うようだ。
住居跡を進んで行くと、何かの気配がある。
マレイナ「何か、屋根の上の方にいる。」
屋根の上? 何かが飛んで来るとでも。
さっと視界を黒い影が掠めた。
キオウ「飛んでるな。」
「ああ、あれは多分。」
ナルルガ「魔族ね。」
その影を目掛けて、光の尖槍の呪文を放つ。
手応えは無い。
だが、奴らが近付いて来た。
黒い姿に羽根の生えた魔族、小魔人だ。
そいつらが、3匹、こちらを囲むように、屋根から降って来た。
そこへ目掛けて、光の尖槍を放ちながら距離を詰め、走り寄る。
そして、剣で切り付ける。
爪で剣を弾かれはしたが、続けざまに剣戟を繰り出す。
「かぁあん、かぁあん!」
廃墟の地下都市に響く、剣と爪のぶつかり合う音。
組み合っている所へ、光の円陣が周囲に展開される。
後ろにいたナルルガだ。
すると、力が萎える小魔人、その隙に斬撃を放つ。
この程度の魔族に、光魔法の耐性はほぼ無い。
簡単に切り倒した。
キオウ「ここは、魔族の巣窟か?」
「そんな場所を開けてしまったのかもな。」
マレイナ「入口、開けちゃったけど、外に出てないかな?」
イルネ「どうかしら、入口に近い場所にはいなかったけど。」
キオウ「グランマド達は、大丈夫か?」
ナルルガ「一通りは教えているけどね。後は、あいつら次第ね。」
「ここで、実践になってしまったのかもな。」
周囲を警戒しつつ、この住居跡を探る。
住居の中に、少しばかり大きな建物がある。
最初に見付けた神殿よりは小さいが、昔の有力者の住居なのだろうか?
大きな門が見えた。
そこに近付くと、門扉が左右共開いた。
だが、開いただけで、何も出て来ない。
キオウ「これは、お誘いか?」
イルネ「そうね。お招きに答えましょうか?」
相手は、魔族だろう。
そして、そいつはそれなりに手強い奴かもしれない。
光の御符を全員に掛け、その他の加護も施し、その屋敷の敷地に踏み込む。
中は、広い。
まるで、前庭のようになっている。
そして、正面の建物の入口前に、そいつが立っていた。
体は、やや大きく、2mは越えているようだ。
人型で、こいつには羽根は生えていないようだ。
だが、その額には、大きな2本角。
半裸で、腰に布を巻き付けただけだ。
「珍しいな。こんな所に人間が来るなど。ほう、妖精や獣人もいるか。」
奴が喋った。しかも、共通語だ。
「お前、魔族か?」
「魔族? 確かに、人らは、そう呼ぶな。」
キオウ「ここで、何をしている?」
「別に、ただ眠っておった。それが、急に騒がしくなったものだから、目覚めてしまったようだな。」
ナルルガ「あなたは、何年、ここにいるのかしら?」
「さあ、人らの時間の流れは、我らには解らん。ただ、たまに目覚め、世界を伺う事はある。最後に目覚めたのは、多分、人らの時間で20年程前ではないかな?」
イルネ「魔族らは、何をしてるの?」
「さあ、それぞれが気の向くままよ。」
フォド「それで、人らを殺める事もあるのですか?」
「それも、気のまま。気に入らない奴がいれば、人らも殺すだろう? それと変わらん。」
マレイナ「あなたも、人を殺すの?」
「気が向けばな。」
キオウ「何で殺す?」
「戦う事も楽しみの1つ。お前らも、戦うのが好きだろう? 人の世も、戦いが尽きた事が無い。我らと同じよ。」
「それは違う。人は好んで争いをしない。」
「そうか? ならば、何故、先程、我の同胞を切った?」
マレイナ「それは、奴らが攻撃して来たからよ。」
「そうであろうか? 奴らは、お前たちを見に行っただけなのだが。」
ナルルガ「今まで、出会った魔族は、皆、人を襲って来たわ。今回も同じでしょ?」
マレイナ「そうよ、サダのお父さん達だって!」
「自分は、一度、バロの魔犬に殺された。父さんや母さんもだ。あの時、父さんらは、魔族を攻撃などしてはいなかった!」
「そうか、なら、その魔族は、遊びたかったのだろう。お前の親らと。」
くそっ、そんな理由でなのか?
父さんらを殺したのは。
魔族への怒りが限界に達した。
そして、剣を構えた。
「そうか、やはり戦うのか? よろしい。久し振りの戦い、退屈させるなよ。」




