第104話「指導、実践」
アグラム伯爵からの依頼で、デルキトンの街でここの領主、ナグトアン子爵の配下へ自分達は指導に来た。
魔票の影響下にある物や、魔族らへの対抗手段となる呪文や戦い方を伝授する為だ。
それも、この数週間で、指導も終わりに近付いている。
後は、どこかで実践できると良いのだが。
「そう言えば、この街にも地下迷宮があるって聞いたんだけど。」
グランマド「ああ、街の近くというか、少し離れた場所に迷宮がある。元は、墓地なのか、神殿なのかよく解らんが、そんなのが何層かに渡ってある。中には、魔獣が沢山いるぜ。」
そうか、丁度良い場所のようだ。
「ならば、そこで、実践してみるか?」
エルノア「それはいいですね。」
とは言え、講義を受けた全員を連れて行く訳にはいかない。
彼らの中から4人を選び、順番にその迷宮へ向かう事とした。
どうせ、迷宮に行くのであるから、この街の冒険者ギルドに登録をし、魔獣討伐の依頼も受けて向かう事にした。
街から歩く事、2時間弱、目的の丘に着いた。
その丘の途中に、ぽっかりと開いた洞窟を見付けた。
いや、自然の洞窟ではなく、入口に扉は無いが、門のような作りになっている。
中に踏み込むと、そこは人口的な回廊になっている。
ナルルガ「ここは? もしかして。」
グランマド「どうしたんだ?」
今回の同行者は、グランマドを含めた騎士2人に、魔術師1人、神官1人だ。
キオウ「いや、この回廊の作りが、ハノガナの街にある迷宮の回廊とそっくりなんだよ。」
グランマド「そうか、偶然ではなさそうだな。」
ナルルガ「ハノガナの街の迷宮の一部は、ワイエン王国時代に作っていたそうよ。ここも、同じくらいの年代に作ったのかもね。」
グランマド「そんな古い物だったのか? 古くからあると聞いてはいたが。」
イルネ「ワイエン王国の生き残りは、今も迷宮の地下にいるのよ。妖戦鬼と交じり合った半妖精としてね。」
グランマド「おいおい、そんな話は聞いた事も無いぞ!」
フォド「それは、私達も、つい最近知りましたから。彼らと出会ってね。」
グランマド「あんたら、すげえな。いろいろな事に出会っているみたいだな。」
ナルルガ「それも、望んでの事では無かったのだけどね。」
迷宮内を進む。
回廊は、入口から真っ直ぐに伸びていたが、所々で枝分かれしたり、曲がっていた。
ここでも、壁に印を付けながら進む。
内部は暗いので、ランプも使用している。
ハノガナの街の迷宮と変わりは無い。
中では、大食い鬼に遭遇し、これを倒す。
グランマド「1階層降りる毎に、魔獣は強くなるぜ。」
ナルルガ「知ってた。」
グランマド「そうなのか?」
ナルルガ「だって、どこもそれは同じでしょ?」
グランマド「先生って、こんな性格なのかい?」
キオウ「ああ、この方が、いつものナルルガだな。」
先生とは、ナルルガの受講生らからの呼び名である。
マレイナ「この迷宮は、何階層まであるの?」
グランマド「そうだな。16階層はあるとは思うぜ。その先は不明だがな。」
「不明? まだ、その下の階層もあるって事なのか?」
グランマド「まあ、そうだな。不思議な事に、各階層で下に降りる階段を守っている魔獣がいる。そいつがえらく強くてな。そいつを倒さないと、下に進めないのさ。それで、下層に一気に行けないという訳なのさ。もしかしたら、もう少し下まで冒険者らが行ってるのかもしれんが、俺が知ってるのは、15階まで到達したそうだよ。」
キオウ「なら、その15階まで降りてみるか。そして、1つ位は更新してみようぜ。」
グランマド「おお、それはいいね。」
「それで、14階で階段を守っていた魔獣は、どんな奴だったのかな?」
グランマド「確か、大角鬼の特殊な奴だったみたいだな。武器とかも、魔法を秘めた剣を使っていたらしい。」
そんな奴がいるのか。
それから、下りの階段を見付けては、下の階層に降りて行った。
その度に、出てくる魔獣が強くなっている。
狗毛鬼から、灰小鬼、家守人など。
朱皮鬼や大爪鬼、火遁狐、響骨蝙蝠など、今までに遭遇した事の無い魔獣にも出会った。
朱皮鬼。朱色を頭髪の人型の魔獣で、その皮膚が硬い。
大爪鬼。狗毛鬼に似ているが、武器を使わず、巨大化した鋭い爪で攻撃してくる。
火遁狐。火属性の呪文を多用して来る、大型の狐である。
響骨蝙蝠。特殊な音を出して来る厄介な50cm程の蝙蝠で、その音を聞くと激しい頭痛がする。
どれも、手強い相手ではある。
それらを魔法を付与した武器で切り倒す。
結構、討伐数を稼いでいるんじゃないか?
そして、地下15階まで到達した。
だが、15階で、下へ向かう階段を探したが、そこを守る魔獣はいなかった。
階段では何の抵抗も受けずに、16階へと降りれた。
グランマド「どうやら、15階は、突破されていたようだな。」
キオウ「だな。それじゃあ、ここの階段を守っている奴の顔を拝みに行こうか。」
その階層の守り手を探して回廊を進むが、ここで遭遇する相手は手強い。
ここでは、凶暴化した蜥蜴人に遭遇した。
蜥蜴人にも友好的な種族もいるのだが、ここで出会う奴は、攻撃的だ。
奴らの皮膚というか鱗は硬い。
その硬い鱗を手甲や胸当て、兜などで更に補強している。
そして、盾を持ち、大型の曲刀や戦斧、大斧などで武装している。
その扱いもかなりの腕前だ。
そして、こいつらも武技を扱い、こちらを攻撃してくる。
キオウ「こいつら、えらく強いな。」
「ああ、妖戦鬼よりも、上だな。」
グランマド「ここらじゃ、こいつらが、ほぼ最強クラスの相手だよ。」
でも、まだこの下に迷宮が続いているならば、これより強力な魔獣がいるのかもしれない。
苦戦して蜥蜴人を切り倒す。
けれど、この程度では、まだイルネの敵ではないようだ。
自分らがやっと1匹を倒し終わる頃には、2匹、3匹と倒していた。
グランマド「すげ~な、イルネの姉さんは。」
キオウ「雷光の乙女だからな。」
グランマド「えっ? その名は聞いた事があったが、姉さんがそうだったのか?」
イルネ「私の方が年上だったかしら?」
グランマド「いや、失礼。つい、そのな。」
ナルルガ「この迷宮って、こんなにいつも魔獣がいるの?」
グランマド「そうだな。多少は減ったりもするらしいが、魔獣にどこかで出会うと思う。」
ナルルガ「その魔獣、どこから来るのかしら?」
グランマド「そうだな、俺達が入って来た場所以外にも出入口は何カ所かあるから、そこからも入って来ると言われているが、それが何か?」
ナルルガ「外から入って来るのもいるのでしょうね。でも、それだけじゃないかもね。」
グランマド「というと、下の階層から?」
フォド「となると、ここの地下にもあるのかもしれませんね。」
グランマド「何があるって?」
「魔族を封印した場所がさ。そいつが、この迷宮の魔族を補ってるのかもしれない。」
グランマド「そんな物は、ここでは見付かっていないぜ。」
キオウ「まだ、誰も到達していない深い場所にあるのかもな。階段を守る奴がいるって事は、その下を調べた奴は、まだいないって事だろ。」
誰もまだ到達していない場所、そこに魔族が封じられているのだろうか?
回廊を進んで行くと、何かの気配がある。
マレイナ「4匹、何かがいるよ。1匹だけ、ちょっと大きいよ。」
回廊の先が広がっていた。
その広い空間に、確かに何かがいる。
近付くと、そいつらも反応した。
3匹の蜥蜴人が、曲刀を構えた。
その後ろに、背の高い左右に角を生やした奴がいた。
キオウ「おいおい、懐かしい奴がいるぜ。」
「また会えるとはな。」
巨大な刃を持つ大斧を構えた牛頭巨人の姿が、そこにはあった。
巨躯の牛の顔をしたそいつが、吠えた。




