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第100話「半妖精は、語る」

 迷宮内で、ついに半妖精が向こうから接触して来た。

見た目は、地上の妖精族や人間族とは変わりないように見える。

身に着けているのは、革鎧で、腰には剣とナイフをベルトに通して吊るしている。

頭に角があるのかは、兜も被っているので、よく解らない。

妖戦鬼らの血も混ざっているはずだが、見た感じは地上の者との差が無いように見える。

「君らは、魔獣なのか? それとも、妖精族や人間族に近い者なのか?」

「魔獣? あんな奴らとは違うのである。また、妖戦鬼とも我らは違うのである。これを見て頂きたいのである。」

と言うと、そいつは兜を脱いだ。

その頭には、妖戦鬼の特徴である角は無かった。

これでは、冒険者や地上の者との区別が付かない。

「我らは、地上に生きる者らと同じだと考えるのである。」


イルネ「それで、今日は、何を話したいのかしら?」

「地上の話を聞きたいのもあるが、欲しい物があるのである。」

キオウ「欲しい物とは、何だ?」

「欲しい物とは、地上の衣服などである。」

「それだけが、望みなのか?」

「他にも頂けるならば、欲しいのである。我々は、金属の加工などをするにも限界はあるのである。金属製の物は、我らの中では貴重な品である。」

キオウ「金属? 鉱物ならば、迷宮内で採り放題じゃないのか?」

「鉱石などは採れはするが、それを加工するのは難しい事である。」

(金属? 武器や防具にするつもりじゃないのか? そうか、冒険者を襲うのも、装備が目当てでもあるんじゃないのか?)

イルネ「金属は重いから難しいけど、衣服なら多少は持って来れると思うけど。ところで、男女、どちらの方がお望みかしら?」

「おお、ありがたい申し出である。衣服は、男女問わないのである。」

キオウ「その見返りに、あんたらは何をくれるのかな?」

「地下には、様々な資源も豊富である。君達が好むような物も、こちらは承知しているのである。」


マレイナが、自分の腕に軽く触れると、指で4回軽く叩いた。

「とん、とん、とん、とん。」

他から、新たに4匹の何かが接近して来たというのだろう。

多分、そいつらも半妖精だ。

このままでは、包囲されるかもしれない。

早々に、この会話を打ち切った方が良さそうだ。

「あんた達の望みは、解かった。次の機会にでも、衣服を持って来るよ。今日は、魔獣らとも戦って疲れもしている。この辺で帰るよ。」

「それは残念。よろしく頼むである。」

奴らは引き止めたいようであったが、強引に話を打ち切った。

確かに、こいつらはヤバイかもしれない。

今後も、奴らと交渉すべきなのか?

それには、リスクが大きいように思える。

ここに来るには、助けが必要かもしれない。


 街へ戻ると、伯爵の城館に寄ってみた。

アグラム「そうか、半妖精か。そんな奴らが、まだ迷宮にはいたのか?」

伯爵も、奴らの事は知っているようだ。

アグラム「多分、そんなに数は多くは無いだろう。だが、単独のパーティーだけで、そいつらが出るような場所に出掛けるのはお勧めができない。用心すべきだろう。」

「奴らは、地上に戻りたいのでしょうか?」

アグラム「それは考えられるな。国を取り戻す事まではできるとは考えてはいないだろうが、どこかの土地を奪うくらいは望んでいるだろう。面倒な奴らよ。」

余り関わりたくは無い連中のようだ。


アグラム「そうだ、奴らが例の魔票の情報を提供していないか、聞き出してくれ。あの連中ならば、もしかしてその辺りの情報を持っているのかもしれない。」

ナルルガ「あいつらと、魔票の関わりが?」

アグラム「迷宮でも、魔票のような物を付けた石像があっただろう? あれに、連中が何らかの関りがあると、考えても良いのではないか? それに、魔票以外にも魔族の事で何か知っているのではないのか?」

そうか、その可能性もあるかもしれない。

連中自身ではなくとも、その先祖があの動く石像を置いた可能性も。

そうなると、迷宮の他の場所にも似たような像があるのか?

そこにも、何かしらの遺物もあるならば、探るのもいいかもしれないが。

アグラム「くれぐれも、連中との距離には注意して欲しい。いい噂を聞かんからな。」


 半妖精、また出会いたくは無い相手ではある。

だが、魔票や魔族の事を彼らが知っているならば、それを探る必要もある。

自分達だけでは不安もあるので、マグルらに声を掛けてみた。

マグル「何だ、またそんな変な場所に行っているのか? 面白そうだな。よし、俺らも混ぜてくれ。」

マグルらのパーティーの4人組も、同行する事になった。

一応、彼らと接触した時の為に、何着かの衣服を用意した。

衣服と言っても、街中で着る普段着だ。

金属製品を連中に渡すのは問題があるだろうから、用意はしない。

ベルトの金属くらいは、仕方ないが。


神殿を越え、結界のある場所を通り過ぎた。

マグル「ここからが、例の場所か? ここまで来ると、流石に空気が重いな。」

コーグ「本当ですな。また、この洞窟は広い。こんな場所が、またあったのですね?」

一応に、ここの不気味さは肌で感じるようだ。

キオウ「ああ、前にも言ったが、出て来る魔獣もデカイのやらヤバイのやらばかりだぜ。」

フィーダ「それは、また楽しみだな。」

洞窟を全員で進む。

マグル「何か、来るな。」

マレイナ「多分、半妖鬼よ。」

アルダ「それが、例の凶悪な奴ね。」

向かって来るのは、6匹。

奴らの床を叩くような独特な移動の音が聞こえて来た。


「首を叩き切るのを忘れないでくれ。でないと、こいつらは傷を再生させて来る。」

マグル「了解だ。」

半妖鬼の拳を避けて、ただ、その首を狙う。

自分達は、幾度か戦って来た相手だが、マグルらには勝手が違うようで戸惑っていた。

マグル「あんな奴らと、よく戦うよ、お前ら。」

キオウ「そうか? 武器とか持っていないから、楽な方だろう?」

フィーダ「ダメージを回復するような奴らが楽か?」

「その辺りは、面倒だよな。最初は、苦戦したよ。」

コーグ「呪文も効きはしますが、それも回復しますから。手強いのは間違いないですよ。」

アルダ「ちょっと、そういう魔獣ばかりと戦って、感覚麻痺してない?」

イルネ「そうかもしれないわね。私達。」

フィーダ「雷光の戦乙女の異名の意味が解かったよ。」

イルネ「あら、それは、ありがとう。」

戦闘が終わり、周囲の気配を探る。

マレイナ「まだ、来ないよ。」

ナルルガ「そのうちに、来るでしょう。奴らの事だから。」

休憩をして、また先へと進む。


 遭遇した、黒炎大トカゲを討伐した。

5mを越える個体ではあったが、この人数で当たれば楽な物である。

マグル「前に倒した水竜よりは楽だな。」

キオウ「あの頃に比べたら、俺達も相当に強くなったからな。」

アルダ「こんな大トカゲも半妖鬼は、餌食にするのね。」

フォド「そうですね。ここでは、こんな大きな魔獣も餌扱いですね。」

マグル「おっ、何か出て来たな。」

マレイナ「多分、奴らよ。」

気配を探ると、5匹の反応がある。

だが、今日も、いきなり、向こうから近付いて来る様子はない。

キオウ「またか。何か、合わないな。奴らのやり方は。」

「仕方ない。様子を見るしかない。」


こちらが動き出すと、また連中もそれに合わせて移動している。

毎度の事なので、そのまま気にする素振りもせずに洞窟を進む。

とは言え、毎回の事でうんざりする。

初めて追われるマグル達の方が、苛々は大きいようだが。

マグル(奴ら、いつもそうなのか? 何がしたいんだ?)

フィーダ(奴らが今、近付いて来たら、間違い無く切るぞ。)

キオウ(まあまあ、落ち着けよ。これが奴らなんだから。俺も好かないけどな。)

奴らにつけ回される事、十数分、やがて状況が変わる。

マレイナ「今度は、前からも来るよ。」

マグル「ああ、今度は、6匹だ。やっと、向こうから来る気になったようだぜ。」

全員で、足を止めた。

前方の奴らは、足を止めずに近付いて来る。

後ろから来ていた奴らは、足を止めたようだ。

マグル「さて、どう出て来るんだ。」


こちらが待っていると、前から近付いて来る奴らが更に寄って来る。

今回は、3人が10m程のところに近付き、残りの3人は、もう少し後ろに控えている。

後ろを付いて来た奴らは、200mは距離を置いている。

「やあ、また会ったのである。今日は、人数が多いようであるな。」

「ああ、そうだな。今日は、土産を持って来たよ。」

「それは、ありがたいのである。」

イルネ「気に入ってくれるといいのだけど。」

イルネが、衣服の入った袋を背嚢から取り出した。

他の者も、運んで来た物を取り出す。

そして、互いの間に、それを置いた。

「地上の衣服を幾つか持って来た。その代わりに、幾つか聞きたい事があるのだが。」

「ほう、それは何よりの土産である。それで、何が知りたいのであるか?」


ナルルガ「あなた達、生きてはいない物を動かす、魔法の金属片の事は知っているの?」

「金属片、ああ、そんな技法も確かにあるのである。それが、どうしたのであるか?」

イルネ「それを地上の誰かに教えた事は、あるのかしら?」

「我らは、滅多に地上の者らと出会う事は無いのである。こうして、君達に会うのが珍しいのである。」

ナルルガ「では、教えた者はいないと?」

「そうではないのである。何か、対価があれば、教える事もまたあるのである。」

イルネ「なら、教えた事があるのね?」

「そうだな、今から10年までは経ってはいないと思うのだが、教えた事もあるのである。」

やっぱり、そうだったのか?

ナルルガ「その教えた相手とは誰? ハノガナの街の者なの?」

「どこの誰かはまでは知らないのである。我らは、その者らがどこから来たのかも知らないのである。ただ、遠くから来たようだな。」

イルネ「遠くから? どこから来たのか本当に知らないのね。」

「ああ、我らは知らないのである。だが、この国の者ではないようであったのである。」


「この国の者ではない? 何か特徴のようなものは覚えていないか?」

「そうだな。多くの者は、君らと同じような鎧姿であったのである。だが、その中に、法衣のような物を着た者がいたのである。」

ナルルガ「法衣? 神官なのそいつは?」

「そうかもしれないのである。そして、頭に特徴のある冠を着けておったのである。」

イルネ「特徴? どんなのだったのかしら?」

「そうだな。正面に大きな石が付いておったのである。あれは、黒い宝石のようであったのである。」

(黒い宝石の付いた冠? そんな神官がいるのか?)

神官のフォドやアルダの顔を見たが、覚えはないらしい。

その神官の正体が解かれば、魔票を使う奴らが解かるかもしれない。

つに、100話に到達しました。

これも読者の方々がいるお陰です。

励みになります。


今後とも、よろしく願いします。

投稿開始から2ヵ月経ちました。

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