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セカンドバレット  作者: 猫めっき
10/14

キラーズルール

「マスター、オレはどうしたら・・・?」


その一言を最後まで聞く事無く

マスターが口を挟む。


「何もするな。それだけだ」


「そう言われても・・・

これは借りなんだろう?」


「何もするなと言うのがそれ。

あの人は、面倒事を減らしたいだけさ。

だから何もするなと忠告に来てくれた。

それに従えばいい。


今回はバカが下見をしてただけだから

何もしてこなければ

殺す必要も無いと思ってくれている。

だからわざわざ

オマエがスコープを覗いている最中に

電話をくれたんだ。

でなければ、とっくに殺されてる。


あの人は

別の大物が出て来るのを待っているのさ。

それが目的だろう。

オマエじゃないんだ。

バカの相手までしてられるか、と。


それよりも、お前の方は大丈夫なのか?」


「何が?」


「仕事の話しだよ。

向こうは受けてくれてるって、思ってんじゃないのか。

それを断れるのか?」


「断るしか無いだろう。

正式に受けた訳じゃ無いし

その方がまだ生き延びられるのなら」


「まあ、そうなんだが。何とか生き延びろよ」


「ああっ」


そう返事はしたものの、どうしていいのか判らずにいた。



************************************************



「やはりその仕事は受けられない。ガキは殺せない」


電話でそう答えると

一方的に電話を切った。

その一言で押し切るしか無い。

それ以外に、答えを思い付かないからだ。


これで自分にも

もしかしたら殺しが向けられるかもしれないし

そうでないかもしれない。


ずっと不安が付き纏うのだが

それも仕方が無いと思っている。


中途半端に依頼の話しを聞いたのが

そもそも間違いだったのだ。


今後は、仲介者の出方次第である。


さて自分はどうすべきか?

じっとここで仲介者の出方を待つか?

それとも・・・



*********************************************



自分の選択は

事の成り行きを、最後まで見届ける事だった。


そして

見届けつつ、自分を守る。


ターゲットへの狙撃地点は、有る意味限られている。


自宅、学校、事務所、仕事に纏わる場所。

自分が狙おうとする場所を考えれば

そこが自ずと狙撃地点となる。

あくまでも狙撃が前提の場合だが・・・。


そしてそのどちらも見渡せる場所が

自分の観察場所になる。

自分を守りながら、その全貌を見届ける。

いや、見届けたい。


もしかしたら、レジェンドの仕事振りを拝めるのである。

こんな機会は滅多に無い事だ。



そしてそれが

自分の日課になった。


案の定、

最初に自分達が陣取った場所に

外国人と思われるスナイパーが

準備を始める。


観測手がスコープを覗くと

狙撃手も狙いを付ける。


あの少女は

窓越しに外を見ていた。

まるで狙ってくれと言わんばかりに。


その途端

狙撃手と観測手の頭が

後ろに弾け飛ぶ。


何が起こった。

誰に撃たれた。

一体何処から撃って来たというのだ?


標的のその少女は

何事も無かったように

室内へと戻って行く。


撃たれた二人は、というと

そこにいた仲間によって

後ろに引きずられると

その痕跡自体を消されていた。



暫くして

その場所に誰も居なくなったのを

確認してから

その狙撃場所に立って見る。

やはり見事に

その痕跡は消されていたのだが

僅かに残された血痕を見ると

間違い無くそこは

標的からの延長線上で

真正面から撃たれているのが判る。


どう考えても

間尺に合わない。


真正面。


反撃した狙撃手が居たであろう場所が

見当が付かないのだ。


何処から撃ったというのだ?

そう考えた瞬間

一つの事が頭に浮かぶ。


ゴースト。


それしか無い。

彼女はゴーストに守られている。

彼女の近くに

ゴーストはいるに違いない。


それからというもの

自分はゴースト探しに夢中になった。

そしてその事が

自分をピンチに陥れるのである。



*********************************************



ゴーストがどんな人物なのか

その正体を知りたくなって

待ち構えて居そうな場所を

あらゆる方向から検討し

その少女の近辺を

丹念に調べて見るのだが

ゴーストはその名の通り

全くその気配を見せずにいた。


狙撃手が狙いそうな場所の見当は

自分でもおおよそ判るつもりである。


だからその場所を見渡せる場所に

居るのに違いない筈なのだが

その場所に

それらしき姿は一向に見受けられない。


謎は深まるばかりだ。


その少女の行動範囲は

パターン化されていて

かなり規則正しい。

それは裏を返せば

狙撃手が狙い易いとも言える。


むしろその少女は

それを望んでいる節も有る。


一人で出歩いているケースが

殆どだからだ。

しかも、割と目立つように。

ここに居ますよって言わんばかりに。


でも先日の返り討ち以来

狙撃手は出て来なくなった。

絶対に慎重になっているに違いない。


これは、持久戦になるかなって思った矢先・・・


街中で

一発の銃弾が少女に向かって放たれた。



*********************************************



急襲。

そしてその時の事は

今でも鮮明に覚えている。


時間にして

僅かに1,2秒と言ったところか。

その時の自分のスコープワークは

神業と言ってよかった。


狙撃ポイントと考えていた所に

光りが見えた感じがした。


狙撃手が姿を現して

弾丸を発射するのに

僅か数秒。


よほどトレーニングを積んだに

違いなかった。


発射されたと感じて

すぐにスコープを標的の少女に向けると

間違い無くヒットした、と感じた瞬間

直ぐに狙撃手へと向き直す。


すると狙撃手は

既に撃たれた様で

後ろに吹き飛ばされている。


ゴースト。

間違い無くゴーストの仕業だ。


もう一度

撃たれた少女の方へ向くと

撃たれたはずなのに

何故かそんな様子は

微塵も感じられない。


撃たれたと思ったのは

気のせいなのか?

プロの狙撃手が外したのか?


でも確かに彼女は撃たれた、と

自分は感じた。

ヒットした事に、間違いは無い筈。


いや・・・、今それはどうでもいい事だ。


ゴーストは何処だ。


身を乗り出して

スコープで反撃ポイントを

探してみるのだが

何も見つからないでいる。


どこだ、何処に居る。

ゴースト!


そんな自分に隙が生まれている事に

全く気が付かないでいた。

それ程までに、ゴースト探しに

夢中になっていたのである。


瞬間、胸に温いモノを感じる。

その後で

パンッ、という音が追いかけて来た。


撃たれた。


身を乗り出し過ぎた。

もしかしたら

自分が反撃者だと思われたに

違いない。


或いは、

自分が噂のゴーストだと

思われたのだろうか。


・・・だとしたら、少し光栄かな。


いや、駆け出しに間違われたら

むしろ不名誉か・・・。


意識が飛び始める。

体が動かせない。

どっちにしてもオレ、このまま逝くのかな。


仰向けに倒れて見た空は

やや滲んで見えた。


犬の顔も見えた。


んっ? イヌ?


そこで記憶が途絶えた。




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