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時計館奇譚  作者: 京泉
フラワーショップ
1/16

プロローグ

カッチコッチカッチコッチ

チッチッチッチッチッチッ

コチコチコチコチコチコチ


カッチコッチは振り子時計の音、チッチッチッは機械式時計の音、コチコチコチは電波時計の音。

壁にカウンターに所狭しと飾られた時計達。そのどれもが時を刻んでいる。


一定のリズムを刻む音は途切れることがない。


「ねえ、マスターどうしてこんなに時計だらけなの?」

「気が付いたら増えてしまったのですよ」

「ふうん。私ね、急いでいるのにこの店の前を通ったら何故か「ここに入らなきゃ」って思ったの。それで入ってみたら⋯⋯なんだかゆっくりしたくなったのよ。不思議ね」


時計が刻む「時」は気持ちを逸らせたり、ゆったりと流れたり。女はうっとりと時計達を見上げた。


「バイオレットフィズです」と女は差し出されたグラスにキョトンとした表情を見せた。


「私はまだ何もお願いしてないけど?」

「最初の一杯は私がお客様にお薦めしたいものを、お出ししております。もちろん、この分はサービスです」


「良いサービスね」女は機嫌よく頷く。

口元に寄せるとスミレの花がふわりと香り、口当たりはスッキリとしたレモン。バイオレットフィズは飲む香水とも言われているなと女はランプにかざし、ユラユラと揺れる紫色を楽しんだ。


カッチコッチカッチコッチ

チッチッチッチッチッチッ

コチコチコチコチコチコチ


時を刻む音が大きくなった気がする。


「ふふっ。ねえ、マスターこんな不思議なお店だもの不思議ついでに少し話をさせて。ええ、相槌も返事も要らないから」


マスターは頷きも返事もせずせっせとグラスを磨き続ける。


「私ね。大嫌いな人が居たの」


カッチコッチカッチコッチ

チッチッチッチッチッチッ

コチコチコチコチコチコチ


耳に響く時計の音。不思議と不快感はない。


「私はその人を殺したの」


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