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第3話 後輩の想いと告白

 ポツポツと雨が降る中を、(まい)と2人で帰る。相変わらず相合い傘だ。


「なあ、ちょっと聞きたいんだけどさ」


「うん?」


 なんだろう、という感じで目線を向けてくる舞。


「そのさ、俺たち、正式に付き合ってないだろ」


 少し躊躇しながら話を切り出す。


「そうだけど?」


 淡々としたその声からは、感情が読み取れない。


「だけどさ、キスだけじゃなくて、エッチもしてるわけでさ」


「うん」


「その、お前はそれでいいのか?こんな宙ぶらりんの関係で」


 舞はこれまで満足そうに見えたけど、実は不満に思っているのかもしれない。


「私は……平気。先輩が想ってくれているのがわかるから」


 舞の答えは意外なものだった。


「そうかな。部屋で一緒になったら、いっつも俺の方からしてるだろ」


 ちょっといい雰囲気になったら、すぐに手を出していた気がする。


「先輩はいつも優しくしてくれるし。私が好きなデート先考えてくれてるし」


 その声色はいつも通りだけど、嬉しそうにも聞こえる。


「それくらいは当然だろ」


「それは先輩が私の事を想ってくれているからだと思う」


 だから、と。


「告白なんて些細なこと。でも、先輩がきっちりしたいなら、言って欲しい」


 真っ直ぐな瞳で俺を見てくる。


(告白なんて、些細なこと、か)

 

 まさか、そこまで信頼されているとは思わなかった。でも、それならきっちり気持を伝えないとな。


「わかった。じゃあ、ちゃんとするな」


 咳払いをして、相合い傘の中で向かい合う。言うべき言葉をしばし頭の中で探す。


(「好きだ。付き合ってくれ」とか?でも、俺たちは付き合ってないんだろうか)


 こうやって2人の時間を共にして、デートをして、キスをして、エッチもする関係がお付き合いでなくてなんなのだろう。


(そうか。とっくに俺たちは付き合っていたんだな)


 言うべき言葉は決まった。


「好きだ、舞。これから《《も》》付き合ってほしい」 


 舞はどう感じるだろうか。


「私も、先輩の事が好き。だから、これから《《も》》付き合いたい」


 そう返した舞の表情はとても幸せそうで、やっぱりちゃんと言って良かった。


「色々俺が不甲斐なくてごめんな」


「先輩が、何か悩んでたのはわかってたから。だから、良かった」


 そうか。気付かれていたのか。意外なような、そうでないような。


「今日も、帰ったら部屋で一緒に過ごすか」


「うん。それと、今日は《《激しくして欲しい》》」


 え?何を言い出すんだ?


「いや、別にエッチすると決まったわけじゃ」


「私がして欲しい。先輩、いつも遠慮がちだったから」


 そうだったのか。むしろ、俺ががっついてるんじゃないかと不安だったんだが。


「エッチも愛情表現だと私は思うから。だから、遠慮しないで欲しい」


 そう言った舞は少しだけ恥ずかしそうだった。


 こうして、俺たちは付き合うことになった、いや、これからも付き合い続けることになった。


 ひょっとしたら、俺は「お付き合い」という言葉の形式的な形にとらわれ過ぎていたのかもしれない。


 そんな、ちょっとした出来事があった梅雨の一時だった。

というわけで、ちょっといつもと違う感じの短編を書いてみました。もし、心に残るものがあれば感想などよろしくお願いします。

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