アラクネが過ごす地球の日々
車に乗るときはどうするんでしょうか(考えてませんでした)
「行ってきます」
「「「「いってらっしゃーい」」」」
家族に挨拶して今日も元気に出発しましょう。私はアラクネ。見た目で言えば半人半蜘蛛の亜人種ですね。
以前は森に一人で住んでいたのですが、訳有ってヒト種の町で暮らしています。訳と言っても突然来ただけなので、深い話はありません。
そんな事を考えながら車で25分、仕事場へと到着。
ドアを開けば『よーおーふくーのアラクネー♪』・・・つい2日前トラックがぶつかって壊した従業員用の扉、早く修理終わらないでしょうか?正面に回ると地味に面倒なのですが・・・
気を取り直して、ようこそ、紳士服のアラクネへ。
オーナーの新久根 太一です。
お客様へぴったりのお洋服を。それがモットーです。
しかし、私は店頭には立てません。子供に泣かれてしまいます。泣きたいです。
コホン、では、改めて。営業時間です!
といっても、問題が起きなければ監視カメラを確認するだけなのでとても暇です。
おや、あのハーピーさんは試着室に何着も持ち込んでいますね。こういう時は無線でっと「村上さーん。6番ハーピー服のコーナー試着室、お客様が服の大量持ち込みです。さりげなくサポートお願いします。」
「かしこまりましたーてんちょー」従業員が元気でなにより。
あまり大量に持ち込まれると盗難の疑いも出ますからね、試着室は一度に3着までとさせて頂いております。
おっと今度は「中江さん、2番で迷子です。」
「確認しました。・・・店長、木原くんのお母さんへの店内放送お願いします。」
『お客様のお呼びだしを致します。木原様、木原様、お子様がお待ちです。インフォメーションレジまでお越し下さい』
「ひろ、お待たせ、遅れてごめんね。」「うん!お母さん!」「すいません店員さん、ご迷惑おかけしました。」
「いえいえ、元気が一番ですから」
お子様が笑顔になって良かった。ホッとする一幕です。
ピルルルルル!電話応対もありますね。忙しいです。
「もしもし、紳士服のアラクネでございます。」
「あ、もしもし、アラクネさんですか?1週間ほど前に買ったズボン、尻尾穴のボタンが毛を巻き込んでしまって、痛くてたまらないのだけれど、返品は可能かしら?」
「購入時のレシートはお持ちでしょうか?」
「有りますわ」
「かしこまりました。ではインフォメーションレジまでお持ちいただいてもよろしいでしょうか。」
「分かりました、お願いします」
返品伝票はどこに有ったかな・・・と、あったあった。
お客様がいらっしゃるまでに準備をしなくては。
「いらっしゃいませ!こちらの商品でよろしいでしょうか?」
「ええ、短毛種用のを間違えて買ってしまったみたいなの。」
「かしこまりました。よろしければ、当店の従業員がぴったりのお洋服をご案内させていただきますが、いかがでしょうか?」
「あら、助かるわ!お願いしようかしら。」
「では、従業員をお呼びいたしますので、少々お待ち下さいませ。」
「犬尾さん、インフォまでお願いします。」
やはりお客様には満足して頂きたいですからね!
『本日は紳士服のアラクネへご来店頂き、誠にありがとうございます。当店は間もなく閉店のお時間となります。皆様、お買い忘れはございませんか?またのご来店を心よりお待ちいたしております。』
「店長、レジ点検の結果、150円マイナスです。ダブルチェックお願いしますー」
「了解」さてさて結果は・・・変わらないですね。
「戸締まりオッケーです。」
「日報も記入しました!」
「では、今日の業務は終了ですね。お疲れ様でした。」
「「「お疲れ様でした!」」」
私も帰りましょう。
『よーおーふくーのアラクネー♪』
いざ、家族の待つ家へ。
「お帰りなさい、たいちゃん!」
「「お父さん、おかえりー」」
ヒト種の妻、ヒト種の長男(兄)とアラクネ種の長女(妹)
私の愛する家族です。
昔とは違いますが、今の私にとっての幸せはこの場所です。
では皆様、またのご来店をお待ちしております。
そして今日も日本は平和です。
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