「契約」
前回のあらすじ
石が喋った
──「え、なっ、石、えぇぇ!?」
僕が驚くのはまるで無視して、脳内の声は続ける
{初めましてケン様、私は『大聖心結晶の欠片』通称聖心石でございます。契約の儀式の完了を確認しましたので、たった今から私の持ち主はケン様に登録されました。}
まるで羽根ペンのインクの瓶を最後まで使い切りそうな、真面目で淡々とした女性の声がする。
「こんな簡単でよかったんだ・・・さっきまで舐めたりおでこにくっ付けたりしてた自分が恥ずかしいな・・・」
「で、君はなんなの?」
{私達、聖心石は持ち主の生体情報、対象の分析、戦闘結果、一週間前の晩御飯に至るまで、完璧にまとめ、持ち主をサポートする優秀なパートナーであると言えます。}
軽いジョークを言うほどのボキャブラリーも持ち合わせている、ただの石にしては言った通り優秀過ぎるくらいだ。
「つまり君は僕の相棒ってわけだ。」
{はい、ケン様}
「ケンでいいよ、そんで、君にも名前が無いと不便だよね」
{分かりました。ではケン、私にどんな名前を付けて下さいますか?}
「そうだなぁ・・・・・・『サヤ』なんてどうかな?」
{サヤ・・・ありがとうございます、とてもセンスのいい名前を頂きました。}
「じゃ、これからよろしくね、サヤ。」
{ちなみに脳内に直接声を送っておりますので、ケンは声を出さずとも会話が可能です。}
「は、早く言ってよ!!」
モンスターしかいない草原とはいえ、意味もなく声を出していたのでは小っ恥ずかしい。
{これからは、半径10m以内であればほとんどの機能は使えずとも遠隔で起動、会話が可能です。}
とは言うものの、慣れないので当分は声での会話になりそうだ
「機能ねぇ、いろいろ出来ることはありそうだね。」
なんて話していると、スライムが襲いかかってきた、しかし、いつもとは様子が違う。
「うっわ、何こいつ、青じゃない!赤い!」
{初めて見るモンスターです。倒すか、ある程度の時間戦い続けると分析が可能です}
「よし、やってみるよ!」
と、いつもの調子で斬りかかると、すんでのところで躱され、剣が空を切る。
「(他のより速い・・・!?)」
{攻撃動作確認、来ます}
間髪入れずに体当たりをかましてきた、素早く避けるとさっきまで立っていた場所の草が焼け焦げている。
「火!?」
{敵は高熱を帯びているようです、気を付けて、生身では一溜りもありません。}
「(隙がある・・・!)今度はこっちの番だ!」
速いからといって捉えられない速さではない、強く踏み込んでさっきより速く剣を振るう、剣は赤いスライムの芯を捉え直撃する
バシャアァン!!
水っぽい音と共に辺りを焦がしながら液体が飛び散った。
「やったぁ!」
{戦闘の勝利を確認。ケン、私を液体に接触させて下さい、モンスターを分析します。}
「わかった」
{これは『ヒートジェリー』のようです。主に火山地帯などに生息しているスライムの上位種で、この付近は生息域ではないので滅多に見ることはありません。かなりのレアケースです。初めて見るモンスターですので記録しておきます、ちなみにいつでも記録を確認できます。}
「どうりで強いと思ったよ。」
そうこうしているうちに、次の村が見えてきた
モンスター紹介
スライム
草原地帯などによくいる1番弱い部類の敵、戦いの練習にはピッタリの相手。虫や植物に覆いかぶさりジワジワ溶かして捕食する。攻撃手段は体当たりだが、普段は全く敵意なく付近を彷徨っている。
ヒートジェリー
火山地帯に生息するスライムの上位種、体は高熱を帯びており生身では大変危険。熱を糧として生きており、石炭や木の枝などから熱エネルギーを取り込む