「出立」
前回のあらすじ
父上が死んだ、ショートソードもとい伝説の剣を貰った
気付けば眠っていたようだった。
傍らにはもう二度と起きない父上も眠っている。
昨日の出来事は夢じゃなかったのだという絶望感に襲われ、涙がこぼれ落ちそうになるが、いつまでも弱くは居られない、そう思うと、僕は父上には見えないように、そっと涙を拭った・・・。
1階に降りてみると、玄関に人が集まっているのに気付いた。
「どうしたケン、昨日はやけに大声で泣いていたじゃないか、」
「ケンちゃんに何かあったのかと思ってみんな集まってきたのよ?」
どうやら昨夜は近所中に泣き声が聞こえていたらしい。
なにせ狭い村だ、周りの声も多少聞こえるし、ご近所付き合いもよく、村中の人が村中の人の顔と名前を覚えている、何かあれば誰かしら来てくれるのだ。
恥ずかしいながらに村の人達に事情を話すと「まぁ・・・あんなに優しかったのに・・・」と悲しげな反応を見せるなり大急ぎで走り出した。
丸々午前中かけて村中大急ぎで葬儀の準備が行われ、昼休憩が入る頃には村は花や飾りでいっぱいになっていた。
「す、すごい・・・」
「おめぇのオヤジさんはみんな知ってるし、団結力があるのも、田舎の魅力ってもんよ。」
夕方には村中の人を集め厳かに葬式が行われ、夜には酒を飲み思い出話なんかが始まり、半分宴会状態だ。
「食えよ、その様子じゃ昨日から食ってねぇだろう。」
確かに父上を看ていたために、昨日の昼から何も食べていなかった。それに気づくと、急に腹が鳴りだした。
「ん?そりゃショートソードか?」
大工のウッズおじさんが腰についた剣に気がついた。
「これは伝説の剣なんだ。どんな武器にでも勝てるんだって。」
「ほぉお、あの旦那が言うんならちげぇねぇなぁ!」
「おめぇのオヤジさんは、いつも口癖のように言ってた、どんな武器にも勝てる、最高の武器を死ぬまでに作りたいってな、お前さんがショートソードを旦那から渡されたんなら、完成したってことなんだろうな。」
「・・・これからどうすんだ?」
「父上の遺言通り、旅に出ようと思ってる、それで強くなって、父上が言ってた、この剣の本当の力を引き出してみるよ。」
「あるといいがなぁ・・・今んところ何の変哲もないただのショートソードだぜ?」
「きっとあるさ、父上は嘘つかないもの。」
「それもそうだな!」
ガッハッハと、おじさんは大きく笑った。
─翌日─
家の裏に父上の墓が建てられ、周りには色んな種類の武器が刺さったり散らばったりしている。
「旦那は武器が大好きだったからね、この方が落ち着いて眠れるってもんだろうさ。」
「ありがとうアムスおばs・・・」
「ネェさんな?(ジャキ)」
「あ、ありがとうアムス姐さん・・・」
アムスおばさんもとい武器屋のアムス姐さんの粋な計らいだった。
おばさん呼ばわりしようとすると背負っているでっかい戦斧を片手で持ち容赦なく首元にかざしてくる。確かにおばさんという歳でもないが気にしすぎではないかと思う。
「・・・悲しくないかい?」
「悲しいけどね、いつまでも泣いていられないよ、メソメソしてたら父上に顔向け出来ないからね。」
「強い子だね、よし、それでこそアルマ村の男さね。餞別だ、持っていきな」
と、アムス姐さんがくれたのは軽くて扱いやすい基本的な盾、「バックラー」だった。
「これ、バックラーじゃないか!いいの?もらって。」
「旅に出るんだろ?これから戦うってのにショートソード1本じゃ心許ないじゃないか。バックラーなら軽いし、邪魔にならないだろ?」
「ありがとう!大切に使うよ!あっ」
僕はハッと思い出し、自分の部屋まで走っていって木でできた剣のおもちゃを持ってきて、父上の墓の1番目立つところに突き刺した。
それは、父上が5歳の時に作ってくれた、僕の最初の武器とも言える物だ、今となっちゃ恥ずかしいが、小さい頃から僕はこれを「ファイナルソード」と呼んでいた。
すると肉屋のラードおじさんが袋を持って駆け寄ってきて
「オイラからもこれを・・・受け取っておくれよ・・・」
「ありがとうラードおじさんって重っ!?何入ってんのこれ!」
袋の中にはでっかい干し肉が5個も入っていた。
「お腹減ったらいけないと思って・・・」
ラードおじさんは愛称だ。肉屋の店主で、食いしん坊でつまみ食いばかりするし、中年太りもあってか、だいぶ太ましい体型をしているため、みんながラードおじさんと呼び始めた。ラードが定着しすぎて、本名を覚えている人はほとんど居ない・・・それを利用してか、店の名前もいつの間にか「ラードおじさんのお肉屋さん」になっている。
「これで5日は持ちそうだな・・・ありがとう、美味しく食べるよ。」
──────
「それじゃ、みんな行ってくるね!」
「「気をつけてなーー!!」」
こうして、僕の旅は始まった。
武器紹介
#2バトルアックス
両手で振り回す大きな両刃の斧。
元は木をとるための道具で、剣や槍ほどの技術も必要なく、斬るだけでなく幅の広さを利用して攻撃を防いだり、ハンマーのように叩いたり、スコップのように掘り起こしたり、平べったい方で殴ったり、さらには斧の先端の方を持てば杖がわりにもなるなど幅広い使い方ができる。もちろん木も切れる。
アムス姐さんは「斧さえあれば困ることはないさね」といつも好んで背負っているが、彼女の斧は柄を含めれば150cmの長さになる。普通の女性なら両手でも持ち上がらないものを片手で扱えるのは流石の腕力だと言わざるを得ない。
二振り目を読んで下さいありがとうございます。
えーもっと簡単に葬式は終わらせるつもりだったんですが、思いのほか会話で取られてしまいましたね、いよいよ旅立ちを迎えたケンくん、村の人に惜しまれつつも、ずんずんと村の門から遠ざかっていきます。ここから私は黙って、武器紹介やキャラ紹介に後書きは回そうとおもいます。
次回も読んでいただけると嬉しいです。ありがとうございました。
By・ー・ー・ー