7 私の名前は…
彼の正体は竜人族のドン・ペリニヨンだった。
ローブ姿にその名前、どこの修道士だ !? どこのシャンパンだ!? とか色々と突っ込みたいのは山々だけど、とりあえずまだ私も名乗ってない。
ここは友達としてちゃんと名乗った方がいいよね。
でもどうしよう…
前世の名前、飯野百合花は今の状況には相応しくない気がする。
転生してるみたいだし、前世とは違う世界みたいだし…
「私はリリィ。ゴブリンのリリィよ。よろしくね」
悔しいけど今の私はゴブリン、百合花という名はいくらなんでもギャップが有りすぎだよね。
という事で、安直だけど百合花だしリリィでいいよね。
うん、私はリリィ。
こうしてこの世界での名前をここにきてようやく得た私なのだった。
「よろしく、リリィ。それでこれから君はどうするつもりかな?」
そう聞かれはしたが、そもそもゴブリナという存在を知ったのもつい今さっきだし、ゴブリナになると言っても処女以外の条件も分からないので、なんのプランも無い。
全くのノープランである事を話すと、彼は少し考えた後
「今日のところはとりあえず僕のところに来ないか?
この世界の事も教えてあげるし、夕飯をご馳走するよ」
と言ってきた。
そうね。何だかんだで今日何にも食べてないからお腹減ったし。
…
そうだ、私今お腹が減ってる !?
そっか。
お腹減るってこんな感覚だったね。思い出したよ。
ちょっと感動♪
「いいわ、ありがとう。一晩お世話になります」
そうして私は彼の家にお呼ばれしたのだった。
彼の家?は数分歩いた洞窟の奥にあった。
所々道が曲がった暗い洞窟だから気がつかなかったけど、こんな近くにあったんだ。
でも家というよりどう見ても屋敷だよね、これ。
「こんな立派なお屋敷に住んでるなんて、ペリニヨン、あなた一体何者なの?」
「僕はこの一帯を治めている、言わば領主みたいなものさ」
どうやら「ドン」というのは伊達ではなかったらしい。
門の所で執事と思しき人に出迎えられ、簡単に私の事を説明したペリニヨンは
「ようこそ我が家へ」
と私を振り返り、何かの劇のように両手を広げて見せた。
芝居がかってるけど、妙に様になるね!
食事の前にお風呂にどうぞと執事に案内された。
ゆっくり湯舟に浸かるなんて数年ぶりかな。
ゴブリン転生も悪くないもんだ、なんて思いながら石鹸を使い身体中を綺麗にした。
ていうか石鹸あるんだね、この世界。
ボディーソープやシャンプー、リンスは無いけど。
ああ、シャンプー、リンスは今の私には必要なかったね。
髪の毛無いし…
ちょっぴり寂しくなったけど私はお湯に身を浸し、数年ぶりのお風呂を楽しんだのだった。




