5 理由
「い…嫌アァァァァァっ!!」
私は目の前の顔に向けビンタをレベルMAXで放ち彼をぶっ飛ばした。
ローブを着てるから判らなかったけどコイツもナニをオッタテテやがるのか!? 襲ってくるのか!?
いつでも逃げ出せる体勢で彼を見る。
派手にぶっ飛んだ彼は軽く頭を左右に振りながら上半身を起こしてこちらを見ると、慌てたように
「違う違う!!そうじゃ、そうじゃない!!
勘違いするな。僕は裸の♀ゴブリンなんかに興味ないから!」
と叫んだ。
ナニソレ、それはそれでなんかムカつくんですけど!
ちょっぴりイラッとしつつ両手で胸とおぼしき所(涙)とお股を隠しながら彼の言葉の続きを待つ。
「いや、ごめんよ。別に君をどうこうするつもりはないんだ。
そうだな、どこから説明しようか。
まず、自分のステータスを知る事は可能なんだけど、ゴブリンのような下位モンスターにはその能力が無いんだ。
自分でステータス確認するには最低でも上位モンスターになる必要があるんだけど…
ゴブリンは通常ホブゴブリンやゴブリンキャップに進化して、その後限られた個体がクイーンゴブリンやキングゴブリンに進化する。
さらにゴブリンエンペラーなんていうのも数百年に一度くらいに出現するんだ。
それでも下位モンスターの枠から出ることはできないんだよ」
つまりは無理って事?
私、ずっと自分でステータスは見られないのか。
気分が落ち込んで、だんだん目の前が暗くなってきた。
洞窟の中だから元々大概暗いんだけどね。
溜め息と共に
「じゃあ私は…」
と呟くと
「まあ最後まで話を聞きなよ」
と苦笑いしながら彼が言う。
「さっき話した通り、ゴブリンは普通は上位モンスターにはなれない。
但し例外があってね。
それがゴブリナなんだよ」
ほほぅ、なるほど。
つまり私はゴブリナを目指せばいいのかな。
「ゴブリナは上位種の中でも精霊種にあたる、とても美しい存在なんだよ。
見た目は絶世の美女だね」
なんだってー!?
とても美しい存在?
絶世の美女?
こんなゴブリンでも美しくなれるの?
なるなる絶対なる!
精霊ゴブリナに私はなる!!
「それで僕がぶっ飛ばされた質問に戻る訳なんだけど…」
うん、痛かったよね、ごめん。
「♀ゴブリンは一般的に幼体から成体になってすぐに交尾を始めてしまう。
だから処女のままの個体は殆どいないというくらいとても珍しいんだ。
でね、その先も♀ゴブリンくらいの弱さじゃすぐに襲われてしまうから本当に難しい事なんだけど、精霊ゴブリナに進化する為には処女を守り通さなきゃならない。
だから改めて聞くけど…」
そうして私の顔を覗き込んだ後、一呼吸置いて彼は言った。
「君、処女?」