3 なんなんだ?
いつまで経っても私の呼び掛けに答える声は無かったので、仕方なく次に自分のステータスを確認することにした。
「ステータス・オープン!」
何も起こらない。
「ウインドウ・オープン!」
やっぱり何も起こらない。
「鑑定!」
鑑定スキルは持ってないのかな?
「ステータス確認!」
…
う~ん、この世界にはステータスを確認するようなシステムは無いのかなぁ。
それともやり方が違うとか…
どうしよ。自分に何ができてどのくらいの強さがあるのかさっぱり分からない。
さっき走るのがメチャクチャ速かったりしたのはスキル?それとも純粋に体力や速度みたいなステータス的なもの?
そういえば異世界転生といえば魔法もアリよね?
火、水、風、土…色々試してみるが何も起きない。
洞窟を照らす光をイメージしてみた。
やっぱり何も起きない。
わかんないよ。
転生したのはいいとしても、私これからどうしたらいいの?
どう生きていけばいいの?
しゃがみこんで足元の小石を手慰みにしながら途方に暮れる。
と、いつの間にか後方から何かに照らされているのに気づいた。
あれ?光魔法、成功した!?
そう思った時もありました。
「っ!?」
何かがいる気配に思わず飛び退り、振り向いた先にいたのは片手にランタンを持ちローブを着た何か。
ランタンの陰で顔はよく分からないけど…ジェ○イ?
一瞬頭を過ったが、ランタンを持つ手から逆の手に目を移した瞬間そんな思いは吹き飛んだ。
持っていたのはライトセ○バーじゃなくて大きな出刃包丁!
え~と、殺人鬼さんですか?
ひきつる私に構わず、そのままヤツはズイッと近づいてきた。
ひぇっ!?
反射的にに握っていた小石を投げつけると、上手い具合に二つの小石が頭部と思われる位置に当たった。
この隙に逃げよう!
瞬時に振り返り走り出そうとしたのに後ろは壁!?
しまった、逃げ損ねた!?
恐る恐る奴を振り返る。
とたん、ヤツは顔の前で両手をクロスし、且つ顔の半分だけを隠すような香ばしいポーズを取ったかと思うと、声高に叫ぶと同時に包丁を振り翳した。
「自らの罪深さ、その身を持って知るがいい!!
秘技!皆様の恨み妬みツラミ!」
数瞬の後、私の周りに心地好いそよ風が吹いた。
え~と…
これ、どんな状況だ?
私が小首を傾げると、ヤツは驚愕した様子で叫んだ。
「な…!? 無傷だと!?
ありえん、おまえはいったい何なんだ!?」
何なんだと聞かれても私自身が知りたいくらいなんだけど、なんとなくコミュニケーションがとれそうな気がした私は、目を皿のように真ん丸にするヤツにとりあえず話しかけてみる事にしたのだった。