閑話 ペリニヨン邸
リリィがササカーマの元を訪ねて二週間目に行われた鑑定内容、そこまでは彼女の観察をしている使用人から報告が上がって来ている。
初めの一週間こそ毎日張らせていたが修行も順調の様子であり、あまり急激な変化も無いようだったので、使用人にはその後は週一の観察と報告任務で良いとした。
また、リリィはどうやら気配察知に優れた能力を持っている様で、気配遮断の出来る使用人を使わざるを得なかったのも観察を週一回に減らした理由だった。
気配遮断が使える者をリリィだけにずっと張り付かせる訳にはいかなかったのだ。
これまでの報告で驚くべき事が幾つかあった。
リリィがここから湖畔に向かう間にスライムをいきなりテイムしてしまった事、そしてそのスライムもまた特殊な個体らしいという事。
更にはリリィとスライムの能力上昇スピードが速く、既に森に住むかなり上位の獣を無傷で狩れる様になっている事だろうか。
これらの情況を見てもリリィの存在が「かの者」だろうとの推測は確信に近くなっている。
そして今日は三週間目の報告日という事で、併せてササカーマからの見解も聞いてくる事になっているのだった。
ふむ…、どうやらサバスチャンが来たな。
「ペリニヨン様、報告に上がりました」
そう言ってサバスチャンの後ろに控えていた女が私の前に出る。
相変わらず気配の掴めない奴だ。
尤もそうでなければリリィに付けたりしないが。
「で、どんな状況だ?」
「ハッ! パターン青、使徒です!」
「何だね?そのパターン青というのは?」
「…何なのでしょうか?」
コテンと首を傾げる使用人。
「では何故そう言った?」
「…何故でしょう?誰かにそう言えと言われたような気がしたのですが…」
何だそれは?
暗示でも掛けられたか、あるいはこの場に姿の見えない誰かが存在しているとでもいうのか…
「申し訳ございません。気のせいだったようです」
ふむ、少し休暇を取らせた方が良いのだろうか。
サバスチャンに目をやるが、どうやら彼奴にも心当たりは無いようで軽く左右に首を降る。
この件は後で相談の必要があるかもしれんが、一応本人にも確認しておくか。
「大丈夫か?」
「ダイジョばナイかも」
「……」
こいつは重症…なのか?
「え~、よろしいでしょうか?」
困ったように此方を仰ぐ使用人に、先程までの優秀という評価を残念な娘に改める必要があるのだろうか…と悩む。
だが今は報告を促すべきだな。
「む…、ああ、頼む」
「ハッ! まずリリィ様ですが、修行の方は順調の様で、現在のところ杭上での片足蹴りと舟上でのバランス銛突きに移っております」
「ほぉ、もうそこまで。ほぼ基礎は身に付け終えたという事か…
流石に早いな」
「ハッ! さらには配下に骸骨戦士らしき者を加えております。その者はスライム同様に特殊個体であります」
「何?特殊個体で間違いないのか?」
「ハッ!」
「あっのっ頃はっ」
「ハァ?」
「……」
「…」
「ゴホン、いや、なんでもない…」
どうやら事態は想定以上に早く進行しているようだな。
「それでササカーマ殿は何と?」
「ハッ!ササカーマ様の仰っしゃるには、リリィ様がゴブリンの壁を超えるのはもう間もなくだろうとの事です。さらにスライムも同じくと!」
「信じられん奴だな。もうゴブリンを超えるだと?
私の知る限りリリィはまだ成体になって三週間だぞ?
一般的なゴブリンなら本来であればまだレベル1~2という所だ。
まだ基礎の訓練と森での狩り、そして先程報告のあった銛突きしかしていないのであろう?」
「ハッ!ですがササカーマ様の見立てではいつ越えても不思議ではないとの事でございました」
やれやれ。レベリングを行う前からこれか。まったく普通では出来ない事を平然とやってのける。
次に会うときが楽しみでもあり、空恐ろしくもあるな。
「そうか。ではリリィがゴブリナに達する見通しは?」
「ハッ!いえ、ササカーマ様はそこまでは…」
そうか。そうだな。まだ三人だ。
すべての条件が揃うまでにはまだ時間はあるだろう。
しかし備えは始めなければならないだろうな。
いずれにせよリリィが使徒なのはもう間違いないのだから…
ブックマークありがとうございます♪
今回の閑話、犯人はヤス…かな?
次話から本編の予定です。




