10 仲間ができました。
「あなたいったい誰?
ただのスライムじゃないわよね?」
そう聞いた私にスライムが叫ぶ。
「違~う!!
『あなたいったい誰?』
ときたら
『貴方車売る?私高く買うわ』
だろ!?」
間違いない。奴は転生者だ。
転生したらスライムだった奴だ。
だから私は今度は日本語で話しかける。
「あなた、転生者、それも前世は日本人よね?」
それを聞いたスライムは大きく目を見開き暫くぶるぶる震え、そして大きく飛び跳ねながら叫んだ。
「おまえ日本人かっ!?
米持ってるかっ!?ポテチはっ!?マヨネーズはっ!?」
「あ~、私は確かに元日本人だけど、米もポテチもマヨネーズも持って無いわ」
器用に鼻と思しき場所にシワを寄せ舌打ちしながら
「チッ!使えねぇ…」
そう呟くスライムにイラッときた私は思い切り蹴りをぶちこんだ。
タイガーショットぉ~!
うん、やっぱり今の私の脚力半端ないわ♪
物凄いスピードであっという間に空の彼方へ消えていくスライム。
バイバイキ~ン キラリン♪
ふっ♪スッキリした♪
立てた人差し指に軽く息を吹き掛けてみる。
けどゴブリンだしサマになってないよね、きっと。
さ、気を取り直して師範のもとに行こう!
振り返り、一歩を踏み出した私の後ろから声がして私は飛び上がる事になった。
「そりゃ使えねぇって言ったのは悪かったけどさぁ。
ものも言わずにいきなり蹴飛ばすなんて非道過ぎん?
あんまりだー!待遇の改善を要求する!
しかも仲間にしてって言ってるのに無視して行くか?
鬼!悪魔!ゴブリン!!」
「うん、ゴブリンだけど何か?
ていうか、どっから湧いたし?どうやって戻ってきたし?」
「そこはソレ、俺、特別なスライムだし。
そう、俺ってば特別なスライムなんだよぉ。なぁ頼むよぉ。
連れてってくれよぉ。仲間にしてしてくれよぉ。仲間にしてくれなきゃ一生付きまとってやっからなぁ。だから頼むよぉ。うんって言ってくれよぉ」
うざっ!!
「やだよ、あなたみたいなめんどくさい奴。
だいたい何でそんなに私の仲間になりたいのよ。
あなたスライムなんだからスライムの友達探したらいいじゃない。」
そう言う私にスライムは声を落とし、寂しそうに話し始めた。
「俺だって好きでスライムになったんじゃねえんだよ。
前世で死んだらしい事は分かってるけど、気が付いたらこの森の中にいて、しかもスライムってなんなんだよ。訳わかんねえよ。
それでも何とかしようと思ってあちこち動き回って、何匹か見つけたスライムには言葉は通じねえし、なんかわかんねえうちに追いかけ回されるし。
倒そうとしてぶん殴ってもあいつら全然平気だし、逆に吸収されそうになるし…。
何とかあいつら撒いて小道に出た所でおまえを見つけて、声掛けたら返事するし、やっと話しができるやつと会えたじゃねえかって。
だから頼む、俺を連れてってくれよ」
そっか。こいつも昨日の私と一緒なんだな。
ペリニヨンと会えなかったら私もたぶん一人ぼっちで途方に暮れてた。
訳も分からないうちに他のゴブリンにヤられてたかもしれない。
だから…
「分かったわ。一緒に行きましょう」
こうして私は彼を連れて行く事にした。
「ありがとう!ホントありがとう!!
俺、絶対役に立つから!」
喜ぶ彼に一言釘を刺す。
「言っとくけど、私に悪戯したら承知しないんだからね!」
「イエス、マム!!」
調子良く返事する彼に苦笑いしながら、ふと気になった事を尋ねてみる。
「そういやあなた、前世は何で亡くなったの?私は病死だったんだけど」
「あ~、俺さ、結構やんちゃだったんだよね。
危ないって言われるような事をやるのが嬉しかったりさ。
で、あの日は仲間と立ち入り禁止の防波堤の先から飛び込みしてて…
バック宙で飛び込もうとして波消しブロックで頭打って…」
仲間になったスライムはとんでもなくアホだった。