9 ある日森の中、スライムに出逢った
翌朝、朝食を頂きながら師範の元に向かう道を教えて貰った私は、道具袋に保存食、水の入った竹筒のような水筒まで用意してもらい、ペリニヨンの屋敷を出た。
ペリニヨンは残念ながらこの地を離れる訳にはいかないようで、また割ける人員もいないという事から師範の元には私ひとりで行く事になった。
お世話になったペリニヨンや執事さんにお礼を言い、屋敷の門を潜る。
さあ、私の冒険はこれからだ!!
…
……
いやいや、終わらないから(^_^;)
とりあえず洞窟を出て、教えて貰った道をてくてく歩く。
ペリニヨン曰く、森の小道をゆっくり歩いても夕方には師範の所に着くらしい。
後、基本的に小道の近くには魔物が少ないんだって。
あまり遠くなくて良かったけど、一人ぼっちはちょっと不安だな。
近くにゴブリンとかいないよね?
周りに気を配りながら小道を歩いていると、木陰からピョンっ!と何かが飛び出した。
「ぼくは悪いスライムじゃないよ!」
おまえは目薬だろがーー!!
いや違う。
ていうか、何でそのネタ知ってるの!?
そこにいたのは目薬とは似ても似つかない、幅20cm程度の楕円形をした水色のスライム。
だいたいスライムは私の処女を奪う敵だ。
悪かろうが悪くなかろうが速やかに排除する!!
私はペリニヨンから貰った包丁でスライムを突き刺した。
サクー!
殺ったかな?
もっかいスライムを見る。
と、奴はもぞもぞ動いたかと思ったらこう呟いた。
「何度倒されても僕は負けない」
サクー!
「スライムが現れた!また仲間にして欲しそうにこっちを見ている!どうする!?」
どうもしねえよ!
だから何でそのネタ知ってるし!?
ていうか、ほんまもんのスライムがそれ言うな。
のんちゃんだから可愛いんだからね、ソレ!
サクサクッ!!
トドメの一撃とばかりに包丁を振るい、私はその場を後にする。
すると後ろから
「待ってよ!仲間にしてよ!
僕、強くなるから仲間にしてよ!」
と叫ぶ声。
しつこい…
まだ生きてたのか。
しぶといなー
振り向く私を正面から見据えるスライム。
おのれスライム、ヤられてたまるか。
殺気を込めてスライムを睨む。
「何でそんなに仲間になりたいの?
だいたいあなた私に近付いて触手で私の処女奪うつもりでしょう!」
「しないしない、したこともない!」
どうだか…
ていうか、どこのルパンだ!?
そこで私は改めて異常に気付いた。
奴はあまりにも向こうのネタを知りすぎている。
いくらなんでもこんなことはあり得ない。
私はゆっくりとスライムに話しかけた。
「あなたいったい誰?
ただのスライムじゃないわよね?」